[PD-8-6] 橈骨遠位端骨折術後患者におけるロコモティブシンドロームの特徴
【はじめに】
橈骨遠位端骨折は骨脆弱性骨折の割合が高く,発生率は加齢とともに増加し70歳以上では若年に比べて男性で2倍,女性では17.7倍となっており,その後の再骨折リスクも高い.移動能力を評価する方法にはロコモ度がある.ロコモ度はロコモティブシンドロームの重症度を評価することが可能で,橈骨遠位端骨折術後の悪化因子とされている.しかし,橈骨遠位端骨折術後のロコモ度に影響する因子を調査した報告はない.橈骨遠位端骨折術後のロコモ度の特徴を調査することで再骨折予防に対するリハビリプログラムを再考するのに役立つと考える.
【目的】
橈骨遠位端骨折患者のロコモ度の特徴を明らかにする.
【方法】
2020年7月~2022年4月の間に当院に入院し,掌側ロッキングプレートを施行した橈骨遠位端骨折患者85例を対象とした.調査項目は年齢,性別,BMI,骨折型(関節内or関節外骨折)術後1週までのPatient-Rated Wrist Evaluation The Japanese Version(以下,PRWE-J)と術後12週(当院での平均的な外来リハ終了時期)のロコモ度,屋内受傷の有無,高エネルギー外傷の有無とした.ロコモ度は2ステップ値から算出し,ロコモ度0を非ロコモ群,ロコモ度1と2をロコモ群とした.統計解析は術後12週のロコモ群,非ロコモ群を従属変数,その他の調査項目を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.また,その結果から追加調査としてロコモ群,非ロコモ群に対する年齢のカットオフ値を調べるためROC曲線分析を実施した.統計学的有意水準は5%とした.また,本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】
平均年齢は65.7±14.9歳,女性81%であった.また,術後12週ではロコモ度0が45人(52%),ロコモ度1が23人(27%),ロコモ度2が17人(20%)であった.年齢がロコモ度に関連(オッズ比1.14,95%信頼区間1.08~1.20)していた.ロコモ度のカットオフ値は71/72歳(Area Under Curve面積0.86,感度70.0%,特異度91.1%)であった.
【考察】
先行研究ではロコモの有病率は70代以降に顕著に増加するとされている.本研究ではロコモ度のカットオフ値は72歳であった.特に70代以降の橈骨遠位端骨折患者にはロコモティブシンドロームを予防改善するような取り組みが重要と考えられた.今後は,ロコモティブシンドロームが予想される橈骨遠位端骨折患者には上肢機能へのアプローチだけでなく,バランス練習や全身調整運動など再骨折予防を図るような練習を取り入れていきたい.本研究の限界は12週時のロコモ度のみを調査したため,受傷前からのものなのか受傷後の低活動によるものかは判断できないことである.
橈骨遠位端骨折は骨脆弱性骨折の割合が高く,発生率は加齢とともに増加し70歳以上では若年に比べて男性で2倍,女性では17.7倍となっており,その後の再骨折リスクも高い.移動能力を評価する方法にはロコモ度がある.ロコモ度はロコモティブシンドロームの重症度を評価することが可能で,橈骨遠位端骨折術後の悪化因子とされている.しかし,橈骨遠位端骨折術後のロコモ度に影響する因子を調査した報告はない.橈骨遠位端骨折術後のロコモ度の特徴を調査することで再骨折予防に対するリハビリプログラムを再考するのに役立つと考える.
【目的】
橈骨遠位端骨折患者のロコモ度の特徴を明らかにする.
【方法】
2020年7月~2022年4月の間に当院に入院し,掌側ロッキングプレートを施行した橈骨遠位端骨折患者85例を対象とした.調査項目は年齢,性別,BMI,骨折型(関節内or関節外骨折)術後1週までのPatient-Rated Wrist Evaluation The Japanese Version(以下,PRWE-J)と術後12週(当院での平均的な外来リハ終了時期)のロコモ度,屋内受傷の有無,高エネルギー外傷の有無とした.ロコモ度は2ステップ値から算出し,ロコモ度0を非ロコモ群,ロコモ度1と2をロコモ群とした.統計解析は術後12週のロコモ群,非ロコモ群を従属変数,その他の調査項目を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.また,その結果から追加調査としてロコモ群,非ロコモ群に対する年齢のカットオフ値を調べるためROC曲線分析を実施した.統計学的有意水準は5%とした.また,本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】
平均年齢は65.7±14.9歳,女性81%であった.また,術後12週ではロコモ度0が45人(52%),ロコモ度1が23人(27%),ロコモ度2が17人(20%)であった.年齢がロコモ度に関連(オッズ比1.14,95%信頼区間1.08~1.20)していた.ロコモ度のカットオフ値は71/72歳(Area Under Curve面積0.86,感度70.0%,特異度91.1%)であった.
【考察】
先行研究ではロコモの有病率は70代以降に顕著に増加するとされている.本研究ではロコモ度のカットオフ値は72歳であった.特に70代以降の橈骨遠位端骨折患者にはロコモティブシンドロームを予防改善するような取り組みが重要と考えられた.今後は,ロコモティブシンドロームが予想される橈骨遠位端骨折患者には上肢機能へのアプローチだけでなく,バランス練習や全身調整運動など再骨折予防を図るような練習を取り入れていきたい.本研究の限界は12週時のロコモ度のみを調査したため,受傷前からのものなのか受傷後の低活動によるものかは判断できないことである.