[PD-9-2] 橈骨遠位端骨折後,骨粗鬆症と診断された患者背景と転倒リスクについて
【はじめに】橈骨遠位端骨折は,閉経後の女性に多く,骨脆弱性骨折のうち最も若年層で生じやすい.お気付かせ骨折,お知らせ骨折,センチネル骨折などと称され,2次骨折予防の対象となる重要な骨折であり,転倒リスク要因を受傷後早期に知ること,早めに対策を講じることが重要である.今回,骨粗鬆症と診断された橈骨遠位端骨折例の患者背景と転倒リスクについて調査したので報告する.
【対象と方法】対象は2019年~2024年に作業療法が処方された橈骨遠位端骨折例のうち,DXA法にて骨密度が測定され,骨粗鬆症と診断された女性32例である.調査項目は受傷時年齢, BMI, FRAX,過去1年の転倒既往,開眼片脚立位,Time Up and Go Test(以下TUG), Fall Risk Index‐21(以下FRI-21),とし,各評価結果を74歳以下の群(以下Y群15例),75歳以上の群(以下O群17例)に分けて比較検討した.統計学的評価はWelchのt検定を用い,P値<0.05を有意差ありとした.なお,症例には研究の趣旨と個人情報の守秘を書面にて説明し同意を得ている.
【結果】平均年齢(歳)は, Y群67.8,O群80.7. BMI(kg/m2)はY群21.8,O群23.0, FRAX(%)はY群16.0,O群28.0でそれぞれ有意差は認められなかった.過去1年の転倒既往例は, Y群4例(26.7%),O群8例(47.1%)で有意差はなかった.開眼片脚立位平均(秒)は,受傷側; Y群21.2,O群12.8,非受傷側; Y群27.4,O群7.3. O群は,受傷側にかかわらず,全例転倒リスクのあるCutoff値の15秒未満であった.しかも,O群の非受傷側は,有意に短かった.Cutoff値未満の症例は, Y群,受傷側;6例(40%),非受傷側;6例(40%),O群,受傷側;1例(5.9%),非受傷側;1例(5.9%),両側;15例(88.2%)であった.TUG(秒)は, Y群8.1,O群11.7で,O群は転倒リスクのあるCutoff値11秒以上で,有意に低下していた.Cutoff値以上の症例は,Y群1例(6.7%),O群8例(47.1%)であった.FRI- 21 (点)は,Y群6.2,O群9.7で,両群ともにCutoff値6点以上で,O群の得点が有意に高かった.また,下位項目では,身体機能に関する項目,膝痛以外の疾患もしくは老年症候群に関する項目,環境要因に関する全ての項目で,O群の該当率が高くなっていた.転倒リスクのあるCutoff値以上の症例は,Y群9例(60%),O群16例(94.1%)であった.O群はY群に比し,開眼片脚立位,TUG,FRI- 21が有意に劣り,転倒リスクが高かった.
【考察】年齢群が上がることで,各調査項目のCutoff値を超える転倒リスク症例が増加し,FRI-21 の下位項目の該当率も増加していた.Haginoは,骨折は骨の脆弱化の進行と転倒リスクの上昇の両方が関与すると述べ,鈴木は,転倒は多数の内的要因,外的要因による多危険因子の重層的な症候群の一つであると述べている.また,O群非受傷側の片脚立位は,有意に短かった.Makiらは,高齢者は,重心を支持基底面内に保持するため,上肢運動が重要と述べている.受傷側はシーネなどの固定を強いられ,上肢のバランス反応の低下に関与した可能性が考えられた.一方,Y群でも,転倒リスクのある症例が存在した.骨折連鎖予防の観点から,若年患者に対しても同様に転倒リスク因子の把握が必要で,初期評価時には,開眼片脚立位,TUG,またFRI-21 の下位項目にも注目した評価・分析を行う事は必須であると思われた.さらに,宮腰らは,高齢者の場合には,住環境の整備や介助を充実させることも必要と述べており,骨折のリハビリと同時に,筋力増強やバランス改善などの身体機能向上が図れるプログラムと,環境要因に関する整備を充実させることも積極的に取り入れる事が重要であると考えられた.
【対象と方法】対象は2019年~2024年に作業療法が処方された橈骨遠位端骨折例のうち,DXA法にて骨密度が測定され,骨粗鬆症と診断された女性32例である.調査項目は受傷時年齢, BMI, FRAX,過去1年の転倒既往,開眼片脚立位,Time Up and Go Test(以下TUG), Fall Risk Index‐21(以下FRI-21),とし,各評価結果を74歳以下の群(以下Y群15例),75歳以上の群(以下O群17例)に分けて比較検討した.統計学的評価はWelchのt検定を用い,P値<0.05を有意差ありとした.なお,症例には研究の趣旨と個人情報の守秘を書面にて説明し同意を得ている.
【結果】平均年齢(歳)は, Y群67.8,O群80.7. BMI(kg/m2)はY群21.8,O群23.0, FRAX(%)はY群16.0,O群28.0でそれぞれ有意差は認められなかった.過去1年の転倒既往例は, Y群4例(26.7%),O群8例(47.1%)で有意差はなかった.開眼片脚立位平均(秒)は,受傷側; Y群21.2,O群12.8,非受傷側; Y群27.4,O群7.3. O群は,受傷側にかかわらず,全例転倒リスクのあるCutoff値の15秒未満であった.しかも,O群の非受傷側は,有意に短かった.Cutoff値未満の症例は, Y群,受傷側;6例(40%),非受傷側;6例(40%),O群,受傷側;1例(5.9%),非受傷側;1例(5.9%),両側;15例(88.2%)であった.TUG(秒)は, Y群8.1,O群11.7で,O群は転倒リスクのあるCutoff値11秒以上で,有意に低下していた.Cutoff値以上の症例は,Y群1例(6.7%),O群8例(47.1%)であった.FRI- 21 (点)は,Y群6.2,O群9.7で,両群ともにCutoff値6点以上で,O群の得点が有意に高かった.また,下位項目では,身体機能に関する項目,膝痛以外の疾患もしくは老年症候群に関する項目,環境要因に関する全ての項目で,O群の該当率が高くなっていた.転倒リスクのあるCutoff値以上の症例は,Y群9例(60%),O群16例(94.1%)であった.O群はY群に比し,開眼片脚立位,TUG,FRI- 21が有意に劣り,転倒リスクが高かった.
【考察】年齢群が上がることで,各調査項目のCutoff値を超える転倒リスク症例が増加し,FRI-21 の下位項目の該当率も増加していた.Haginoは,骨折は骨の脆弱化の進行と転倒リスクの上昇の両方が関与すると述べ,鈴木は,転倒は多数の内的要因,外的要因による多危険因子の重層的な症候群の一つであると述べている.また,O群非受傷側の片脚立位は,有意に短かった.Makiらは,高齢者は,重心を支持基底面内に保持するため,上肢運動が重要と述べている.受傷側はシーネなどの固定を強いられ,上肢のバランス反応の低下に関与した可能性が考えられた.一方,Y群でも,転倒リスクのある症例が存在した.骨折連鎖予防の観点から,若年患者に対しても同様に転倒リスク因子の把握が必要で,初期評価時には,開眼片脚立位,TUG,またFRI-21 の下位項目にも注目した評価・分析を行う事は必須であると思われた.さらに,宮腰らは,高齢者の場合には,住環境の整備や介助を充実させることも必要と述べており,骨折のリハビリと同時に,筋力増強やバランス改善などの身体機能向上が図れるプログラムと,環境要因に関する整備を充実させることも積極的に取り入れる事が重要であると考えられた.