[PD-9-4] 頚髄損傷患者2症例の上肢痙縮に対する拡散型圧力波治療器の効果の検討と今後の展望
【背景】頚髄損傷患者の多くは上肢の痙縮による関節可動域(ROM)制限,疼痛に悩まされADL・IADL動作が困難になる事が多く,リハビリや退院後の生活に対するモチベーション低下に繋がってしまうことも少なくない.今回,拡散型圧力波治療を実施したことにより,ROMの拡大と疼痛の軽減が得られ,ADL動作の幅が広がりモチベーションの向上へとつながった頚髄損傷患者を経験したため,その実践内容と効果について報告する.
【症例】症例1:70代男性 頚髄損傷(C4) ASIA Impairment Scale(AIS):D 痙縮に伴う手指伸展時の疼痛によりリハビリに対するモチベーションが低く,ADL場面での左上肢の使用頻度は乏しい状態であった.症例2:60代男性 頚髄損傷(C4) AIS:D 痙縮による手指伸展ROM制限があり,物品操作への支障(リリース困難)がみられていた.症例1・2いずれも受傷から1年以上経過していた.
【方法】症例1は左手指の疼痛緩和と爪切りなどの整容動作の獲得を目的に左手掌腱膜をターゲットにした.症例2は左手指の痙縮軽減,伸展ROMの拡大を目的に左手指屈筋群と左手掌腱膜をターゲットにした.両症例とも週1回のペースで3~4クール実施した.症例2は手掌腱膜と前腕の手指屈筋群を打ち分け効果を比較した.使用部位,目的によってアプリケーターを使い分け症例1の手掌腱膜へはビームアプリケーターを使用した.症例2の前腕手指屈筋群へはD-Actor,手掌腱膜へはビームアプリケーターを使用した.実施の前後で手指のROM(自動・他動)を測定した.さらにはADL場面における変化を確認した.ROMは初回と最終介入時のみ実施前後に測定した.なお,本報告は千葉県千葉リハビリテーションセンターの倫理委員会の承認を得ている.
【結果】症例1:ADL動作の阻害因子となっていた手指伸展時の疼痛が軽減され,ADL動作に対するモチベーション向上,ADL動作の拡大が認められた.全介助で実施していた爪切りが電動やすりを使用し自力で可能となった.さらには目標としていた課題以外でも,トイレ動作時に左手での手すりの把持も可能となった.また,手指伸展が得やすくなったことにより,以前は右手のみで実施していた下衣更衣が両手で可能となった.症例2:手掌腱膜よりも前腕手指屈筋群への刺激の方がより手指伸展ROMの改善が得られたため,途中から前腕手指屈筋群への刺激のみに変更した.その結果,手指伸展ROMの拡大により,患者自身が効果を実感し「開くようになった分維持したい」と手指機能訓練に対して意欲的に取り組む様子が認められた.
【考察】圧力波の効果で,疼痛緩和やROM拡大が得られたことにより,ADLおよびQOLの拡大,向上が認められたと考える.症例1・2ともに手指伸展動作の改善を目的に拡散型圧力波治療器を使用したが,症例1では手掌腱膜に対して効果がみられ,症例2では前腕手指屈筋群への刺激でより手指伸展ROMの改善が得られた.疼痛の軽減や,手指伸展のROM拡大などの効果が確認されたが,実施する部位別で効果の差があったことは今後の検討課題となっている.症例1・2いずれも受傷から1年以上と経過の長い患者であったが,拡散型圧力波治療実施後,比較的早く効果を実感できることでリハビリやADL獲得へのモチベーション向上につながった可能性がある.ターゲットの関節ROM測定,ADL場面での変化の確認を行っていたが実施前後の評価内容や,ターゲットの選定方法に関しては今後症例を増やしていき検討していく必要がある.
【症例】症例1:70代男性 頚髄損傷(C4) ASIA Impairment Scale(AIS):D 痙縮に伴う手指伸展時の疼痛によりリハビリに対するモチベーションが低く,ADL場面での左上肢の使用頻度は乏しい状態であった.症例2:60代男性 頚髄損傷(C4) AIS:D 痙縮による手指伸展ROM制限があり,物品操作への支障(リリース困難)がみられていた.症例1・2いずれも受傷から1年以上経過していた.
【方法】症例1は左手指の疼痛緩和と爪切りなどの整容動作の獲得を目的に左手掌腱膜をターゲットにした.症例2は左手指の痙縮軽減,伸展ROMの拡大を目的に左手指屈筋群と左手掌腱膜をターゲットにした.両症例とも週1回のペースで3~4クール実施した.症例2は手掌腱膜と前腕の手指屈筋群を打ち分け効果を比較した.使用部位,目的によってアプリケーターを使い分け症例1の手掌腱膜へはビームアプリケーターを使用した.症例2の前腕手指屈筋群へはD-Actor,手掌腱膜へはビームアプリケーターを使用した.実施の前後で手指のROM(自動・他動)を測定した.さらにはADL場面における変化を確認した.ROMは初回と最終介入時のみ実施前後に測定した.なお,本報告は千葉県千葉リハビリテーションセンターの倫理委員会の承認を得ている.
【結果】症例1:ADL動作の阻害因子となっていた手指伸展時の疼痛が軽減され,ADL動作に対するモチベーション向上,ADL動作の拡大が認められた.全介助で実施していた爪切りが電動やすりを使用し自力で可能となった.さらには目標としていた課題以外でも,トイレ動作時に左手での手すりの把持も可能となった.また,手指伸展が得やすくなったことにより,以前は右手のみで実施していた下衣更衣が両手で可能となった.症例2:手掌腱膜よりも前腕手指屈筋群への刺激の方がより手指伸展ROMの改善が得られたため,途中から前腕手指屈筋群への刺激のみに変更した.その結果,手指伸展ROMの拡大により,患者自身が効果を実感し「開くようになった分維持したい」と手指機能訓練に対して意欲的に取り組む様子が認められた.
【考察】圧力波の効果で,疼痛緩和やROM拡大が得られたことにより,ADLおよびQOLの拡大,向上が認められたと考える.症例1・2ともに手指伸展動作の改善を目的に拡散型圧力波治療器を使用したが,症例1では手掌腱膜に対して効果がみられ,症例2では前腕手指屈筋群への刺激でより手指伸展ROMの改善が得られた.疼痛の軽減や,手指伸展のROM拡大などの効果が確認されたが,実施する部位別で効果の差があったことは今後の検討課題となっている.症例1・2いずれも受傷から1年以上と経過の長い患者であったが,拡散型圧力波治療実施後,比較的早く効果を実感できることでリハビリやADL獲得へのモチベーション向上につながった可能性がある.ターゲットの関節ROM測定,ADL場面での変化の確認を行っていたが実施前後の評価内容や,ターゲットの選定方法に関しては今後症例を増やしていき検討していく必要がある.