[PE-1-2] 訪問リハビリにおいて異なるコミュニケーション機器を導入したALS患者2症例
【はじめに】
筋委縮性側索硬化症(以下ALS)は,病状の進行により重篤なコミュニケーション障害を生じることから意思伝達手段の検討が課題となってくる.今回異なるコミュニケーション機器を導入したALS患者2例の介入経過を報告する.尚,本報告については本人・家族・所属長より承認を得た.
【症例1】
50歳代,男性,妻と子供の4人暮らしで日中は独居であった.X‐1年に手指運動機能の低下を認め,X年にALSと診断された.X+3年より訪問看護・リハビリの介入が始まった.X+4年に発話明瞭度1(田口法),ALS Functional Rating Scale(以下 ALSFRS‐R):28点,手指巧緻動作の低下を認めた.そのため家族との連絡や動画視聴に用いていたタブレット端末 iPad®(アップルジャパン株式会社)の操作が困難となり,スペックスイッチ(パシフィックサプライ株式会社)を左母指に装着した操作を開始した.スイッチの導入から3ヶ月後,発話明瞭度の低下を認めたことから重度障害者用意思伝達装置 miyasuku® (株式会社ユニコーン)について紹介・試用したが,本人,家族ともに機器・環境設定の負担軽減,および簡潔化を希望したため,iPad® を継続して使用した.導入から1年後,公費にてスイッチ類を購入した.操作は問題なかったが,長文での喋りにくさを認め,文字走査入力方式のアプリケーションを導入した.また,同時期に月に1度レスパイト入院を利用するようになった.病院の作業療法士と連携し,コミュニケーション面における課題を共有し,入院中に他のコミュニケーション機器の情報提供,および練習を依頼した.導入から2年後,発話明瞭度4,ALSFRS‐R:13点,筋力低下の進行があり,機器の変更を再度検討したが,金銭面と介助者の負担から,iPad® の使用継続を希望した.テレビ画面への出力を行い,会話はiPad® 操作が主体となった.
【症例2】
50歳代,男性,妻と子供2人の4人暮らしで日中独居であった.Y年に嚥下機能低下,四肢筋力低下を認め,ALSと診断された.Y+1年より訪問看護・リハビリの介入が始まった.介入10ヶ月後,発話明瞭度2,ALSFRS‐R:24点,上肢MMT2~3,手指は分離運動困難,下肢MMT3~4であった.球麻痺と四肢筋力低下が急速に進行し,発話困難感も認めたため, コミュニケーション機器の導入を提案した.業者訪問にて実演しmiyasuku® 購入の希望があり,公費での申請を行ったものの現状の四肢機能では不採択との返答があった.2ヶ月後,発話明瞭度3,ALSFRS‐R:18点,四肢筋力の低下を認めたため再申請を行い,6ヶ月後,発話明瞭度4,ALSFRS‐R:13点の時点で機器導入となった.入力はPPSスイッチ(パシフィックサプライ株式会社)を足底にて操作可能であったが,miyasuku® での意思表示が主となる状態まで病状は進行していた.機器導入3か月後,唾液量と呼吸苦の増加がみられ入院加療となり,機器の使用は終了となった.
【考察】
ALS患者2例に対し,機器業者や医療機関と連携をとりながら本人や家族の希望を尊重したコミュニケーション機器の選択を行った.2例ともに,日中独居であり,家族や医療スタッフとの意思伝達手段が課題となることが予測されたため,早期から機器導入や操作練習を試みたが,機器購入時の金銭的な問題は大きく決断に難航した.申請してから導入に至るまでに数か月を要したことから,病状の進行が速い症例では対応が遅れる可能性がある.公費補助等の制度の充実化が求められるとともに,タブレット端末等の機器の選択肢を広げる提案も大切な視点であると考える.そのためには,早期から本人のニーズを評価し,進行を見据えた選定が重要であることが示唆された.
筋委縮性側索硬化症(以下ALS)は,病状の進行により重篤なコミュニケーション障害を生じることから意思伝達手段の検討が課題となってくる.今回異なるコミュニケーション機器を導入したALS患者2例の介入経過を報告する.尚,本報告については本人・家族・所属長より承認を得た.
【症例1】
50歳代,男性,妻と子供の4人暮らしで日中は独居であった.X‐1年に手指運動機能の低下を認め,X年にALSと診断された.X+3年より訪問看護・リハビリの介入が始まった.X+4年に発話明瞭度1(田口法),ALS Functional Rating Scale(以下 ALSFRS‐R):28点,手指巧緻動作の低下を認めた.そのため家族との連絡や動画視聴に用いていたタブレット端末 iPad®(アップルジャパン株式会社)の操作が困難となり,スペックスイッチ(パシフィックサプライ株式会社)を左母指に装着した操作を開始した.スイッチの導入から3ヶ月後,発話明瞭度の低下を認めたことから重度障害者用意思伝達装置 miyasuku® (株式会社ユニコーン)について紹介・試用したが,本人,家族ともに機器・環境設定の負担軽減,および簡潔化を希望したため,iPad® を継続して使用した.導入から1年後,公費にてスイッチ類を購入した.操作は問題なかったが,長文での喋りにくさを認め,文字走査入力方式のアプリケーションを導入した.また,同時期に月に1度レスパイト入院を利用するようになった.病院の作業療法士と連携し,コミュニケーション面における課題を共有し,入院中に他のコミュニケーション機器の情報提供,および練習を依頼した.導入から2年後,発話明瞭度4,ALSFRS‐R:13点,筋力低下の進行があり,機器の変更を再度検討したが,金銭面と介助者の負担から,iPad® の使用継続を希望した.テレビ画面への出力を行い,会話はiPad® 操作が主体となった.
【症例2】
50歳代,男性,妻と子供2人の4人暮らしで日中独居であった.Y年に嚥下機能低下,四肢筋力低下を認め,ALSと診断された.Y+1年より訪問看護・リハビリの介入が始まった.介入10ヶ月後,発話明瞭度2,ALSFRS‐R:24点,上肢MMT2~3,手指は分離運動困難,下肢MMT3~4であった.球麻痺と四肢筋力低下が急速に進行し,発話困難感も認めたため, コミュニケーション機器の導入を提案した.業者訪問にて実演しmiyasuku® 購入の希望があり,公費での申請を行ったものの現状の四肢機能では不採択との返答があった.2ヶ月後,発話明瞭度3,ALSFRS‐R:18点,四肢筋力の低下を認めたため再申請を行い,6ヶ月後,発話明瞭度4,ALSFRS‐R:13点の時点で機器導入となった.入力はPPSスイッチ(パシフィックサプライ株式会社)を足底にて操作可能であったが,miyasuku® での意思表示が主となる状態まで病状は進行していた.機器導入3か月後,唾液量と呼吸苦の増加がみられ入院加療となり,機器の使用は終了となった.
【考察】
ALS患者2例に対し,機器業者や医療機関と連携をとりながら本人や家族の希望を尊重したコミュニケーション機器の選択を行った.2例ともに,日中独居であり,家族や医療スタッフとの意思伝達手段が課題となることが予測されたため,早期から機器導入や操作練習を試みたが,機器購入時の金銭的な問題は大きく決断に難航した.申請してから導入に至るまでに数か月を要したことから,病状の進行が速い症例では対応が遅れる可能性がある.公費補助等の制度の充実化が求められるとともに,タブレット端末等の機器の選択肢を広げる提案も大切な視点であると考える.そのためには,早期から本人のニーズを評価し,進行を見据えた選定が重要であることが示唆された.