[PE-1-3] 自助具を用いて更衣動作を再獲得した外国籍のALSの一例
【はじめに】筋萎縮性側索硬化症(ALS)は, 発症部位やその進行が異なるため, 事例に応じた個別支援が必要である. 今回, 上衣の更衣に介助が必要であった外国籍の事例に対し, 自助具を用いた疲労の少ない方法を提案し練習した結果, 修正自立し疲労度も改善した. 本報告では, 日本語の理解が不十分な事例への介入と効果判定の工夫について報告する. 発表に際し事例から書面で同意を得た.
【事例紹介】現病歴:事例は右利きの60歳代のベトナム人女性. 現病歴は, X年右上肢が挙上困難となり, X+2年ベトナムの病院でALSと診断. 左上肢や両下肢の脱力感なども出現し, X+3年当センターに入院した. 初期評価(OT介入1〜6回目):ALS重症度分類は3, The revised ALS Functional Rating Scaleは35点. 身体機能は, MMTが肩関節2/3, 肘関節1/4, 手関節3/4, 下肢3/4であった. 基本動作は自立で独歩可能. ADLは, 食事が修正自立, トイレや入浴は介助を要していた. 日本語の書字や読字は困難だが, 簡単な日常会話はできた. 上衣の更衣評価:入院前は全介助であった. 初期評価時では, 左上肢で右上肢に袖を通すことはできたが, 肩までの引き上げや襟を把持して背面から服を回すことが難しく, 両肩に服を掛けることができなかった. 手順の掲示・模倣で可能な時もあるが再現性が低く, 疲労感は高かった. 脱衣は靴べらを用いて自立した. 目標設定・介入方針の決定:事例は家族に迷惑をかけたくないからとの理由で, 肩が上がるリハビリを希望された. 具体的に聴取するために, カナダ作業遂行測定を行ったが, 十分な言語理解が得られず評価できなかった. しかし, 「上着を脱ぎ着したい」との希望は評価でき, 上衣の更衣動作獲得に向けて介入することにした. 効果判定で用いた指標:観察評価指標としてFunctional Dressing Assessment(FDA : 武田ら, 2019), 主観的指標としてFace Rating Scale(FRS)で着衣前後の疲労度, 客観的指標として着衣時間を毎回評価した.
【介入方法および経過】第1期(A期)の介入内容(OT介入7〜9回目):上衣を背面から回す時に, 左上肢の挙上や保持が不十分であったため, 座位で椅子の背もたれに左肘を置くことを提案した. 更衣直後には, 難渋したポイントに対し改善方法を検討し, 次の更衣前に振り返りを行った. 練習は1回/日実施し期間中に計3回行った. 第2期(B期)の介入内容(OT介入10〜19回目):A期で上衣を背面から回した後, 左裾を前に引き出すことに逡巡したため, 着衣前に左裾に紐付きの洗濯挟みを付けた. なお, 上衣を背面から回す時に洗濯挟みが絡まったため, 左裾を外側に2回折ってから取り付け, 期間中に計10回行った. 着衣のポイントは, “右肩まで引き上げること”, “左裾を体の前まで引き出すこと”の2つを指導し, 修正自立した. 効果判定での分析方法:A期とB期で着衣前後の疲労度(FRS)の変化量をPercentage of Nonoverlap Date(PND)で分析した. FDAと着衣時間は, A期で着衣が修正自立したことや評価時点が不足したため分析できなかった.
【結果】A期3回, B期10回の各評価結果の中央値を次に示す(A期/B期). 着衣のFDA(16.0点/16.0点), 着衣の所要時間(155.5秒/131.0秒), 着衣前後の疲労度(FRS)の変化量(3.0/2.0), PNDは70%(effective)であった(Scruggs et al., 1998). 事例から「家でも一人で着れる」と発言を得た.
【考察】今回, 疲労度が少ない中で更衣が修正自立したのは, エラー内容に応じた自助具の導入と毎回のフィードバックと振り返りが功奏したと考えられた. 言語理解が不十分な事例に対する評価の工夫として, 時間やFRSなどの客観と主観の双方の評価が有効かもしれない.
【事例紹介】現病歴:事例は右利きの60歳代のベトナム人女性. 現病歴は, X年右上肢が挙上困難となり, X+2年ベトナムの病院でALSと診断. 左上肢や両下肢の脱力感なども出現し, X+3年当センターに入院した. 初期評価(OT介入1〜6回目):ALS重症度分類は3, The revised ALS Functional Rating Scaleは35点. 身体機能は, MMTが肩関節2/3, 肘関節1/4, 手関節3/4, 下肢3/4であった. 基本動作は自立で独歩可能. ADLは, 食事が修正自立, トイレや入浴は介助を要していた. 日本語の書字や読字は困難だが, 簡単な日常会話はできた. 上衣の更衣評価:入院前は全介助であった. 初期評価時では, 左上肢で右上肢に袖を通すことはできたが, 肩までの引き上げや襟を把持して背面から服を回すことが難しく, 両肩に服を掛けることができなかった. 手順の掲示・模倣で可能な時もあるが再現性が低く, 疲労感は高かった. 脱衣は靴べらを用いて自立した. 目標設定・介入方針の決定:事例は家族に迷惑をかけたくないからとの理由で, 肩が上がるリハビリを希望された. 具体的に聴取するために, カナダ作業遂行測定を行ったが, 十分な言語理解が得られず評価できなかった. しかし, 「上着を脱ぎ着したい」との希望は評価でき, 上衣の更衣動作獲得に向けて介入することにした. 効果判定で用いた指標:観察評価指標としてFunctional Dressing Assessment(FDA : 武田ら, 2019), 主観的指標としてFace Rating Scale(FRS)で着衣前後の疲労度, 客観的指標として着衣時間を毎回評価した.
【介入方法および経過】第1期(A期)の介入内容(OT介入7〜9回目):上衣を背面から回す時に, 左上肢の挙上や保持が不十分であったため, 座位で椅子の背もたれに左肘を置くことを提案した. 更衣直後には, 難渋したポイントに対し改善方法を検討し, 次の更衣前に振り返りを行った. 練習は1回/日実施し期間中に計3回行った. 第2期(B期)の介入内容(OT介入10〜19回目):A期で上衣を背面から回した後, 左裾を前に引き出すことに逡巡したため, 着衣前に左裾に紐付きの洗濯挟みを付けた. なお, 上衣を背面から回す時に洗濯挟みが絡まったため, 左裾を外側に2回折ってから取り付け, 期間中に計10回行った. 着衣のポイントは, “右肩まで引き上げること”, “左裾を体の前まで引き出すこと”の2つを指導し, 修正自立した. 効果判定での分析方法:A期とB期で着衣前後の疲労度(FRS)の変化量をPercentage of Nonoverlap Date(PND)で分析した. FDAと着衣時間は, A期で着衣が修正自立したことや評価時点が不足したため分析できなかった.
【結果】A期3回, B期10回の各評価結果の中央値を次に示す(A期/B期). 着衣のFDA(16.0点/16.0点), 着衣の所要時間(155.5秒/131.0秒), 着衣前後の疲労度(FRS)の変化量(3.0/2.0), PNDは70%(effective)であった(Scruggs et al., 1998). 事例から「家でも一人で着れる」と発言を得た.
【考察】今回, 疲労度が少ない中で更衣が修正自立したのは, エラー内容に応じた自助具の導入と毎回のフィードバックと振り返りが功奏したと考えられた. 言語理解が不十分な事例に対する評価の工夫として, 時間やFRSなどの客観と主観の双方の評価が有効かもしれない.