第58回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

神経難病

[PE-1] ポスター:神経難病 1

Sat. Nov 9, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PE-1-4] ALS患者における新たな評価指標としての活動量の検討

光永 済1, 伊達 朱里1, 山園 大輝1, 高橋 弘樹1, 高畠 英昭2 (1.長崎大学病院 リハビリテーション部, 2.長崎大学病院 リハビリテーション科)

【はじめに】
 筋委縮性側索硬化症(以下,ALS)は進行性であり,人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い疾患である.治療としてはエダラボン点滴治療があり,当院では1ヶ月ごとに入院してリハビリテーション(以下,リハビリ)を併用し病状の進行に応じた支援を行ってきた.しかし最近ではエダラボンの経口投与が可能となり,自宅にて生活する患者が増えている現状がある.当院においても経口投与を選択した患者は自宅近医にてフォローとなるため,症状の進行や進行に応じた意思伝達支援装置の導入等について適切な時期に関わることが困難なケースを経験する.自宅生活においては詳細な評価が困難であるため,より簡便な指標があれば症状の進行を把握し,それに基づいた支援が可能となるのではないかと考えた.
 今回当院にて確定診断後4ヶ月後に胃瘻増設,ラジカット目的に再入院となった症例に対してリハビリや評価を行う機会を得た.その経過から,ALS患者の病状の進行を把握する指標として活動量計にて測定した活動量に着目したので,ここに報告する.
 なお,倫理的配慮として,発表にあたり本人には口頭・書面にて同意を得ている.
【事例紹介】
 70代女性,夫と息子夫婦と同居し,夫が寺の住職であるため手伝いを行っていたとのこと.X-1年娘から構音障害を指摘され,他院受診するも異常所見は認められず,経過観察となっていた.その後病状の進行を認めたため,X年Y月精査目的にて当院入院となりALSと診断される.Y +2ヶ月第1クールラジカット目的に当院入院,第2クール以降は内服治療となり自宅にて生活していたが,Y+4ヶ月胃瘻増設,ラジカット目的に当院入院となる.
【評価(X年Y+2ヶ月)】
 ラジカット点滴治療開始時の身体機能は,ALSFRS-R44/48点(言語-2,唾液-1,嚥下-1),Grip(R/L)18.1kg/16.3kg,Pinch(R/L)Ⅱ指3.0kgf/2.7kgf,Ⅲ指2.4kgf/1.7kgf,3指 3.2kgf/2.9kgf,STEF(R/L)100点/100点,膝伸展(R/L)16.8kgf/18.2kgf,10m歩行(快適/努力)8.13秒/7.29秒,6分間歩行460m,FIM121点(食事,表出)であり,腕時計型の活動量計(ActiGraph GT9X Link)にて測定した結果.活動量の平均は9529113.2であった.
【経過】
 第1クールラジカット点滴治療が終了後は経口投与を選択され自宅での生活となるため,入院生活における活動量を測定し,身体機能の維持を目的にセルフトレーニングや1日の活動量(歩数)を指導した.自宅生活においては,訪問看護,訪問リハビリを週1回利用予定であったため,現状の身体機能やセルフトレーニングについては情報提供を行なった.
【評価(X年Y+4ヶ月)】
 身体機能は,ALSFRS-R43/48点(言語-2,唾液-1,嚥下-2),Grip(R/L)16.2kg/15.8kg,Pinch(R/L)Ⅱ指2.8kgf/2.4kgf,Ⅲ指2.4kgf/1.7kgf,3指 2.9kgf/3.2kgf,STEF(R/L)100点/100点,膝伸展(R/L)13.0kgf/11.1kgf,10m歩行(快適/努力)9.96秒/7.17秒,6分間歩行448m,FIM120点(食事,表出),入院中の活動量の平均は5935461.6であり,徐々に身体機能は活動量とともに低下を認めた.
【考察】
 病状の進行に伴い,筋力や歩行能力などの身体機能が徐々に低下しており,活動量も減少していることが認められた.身体機能の低下と活動量の関係については明確ではないが,病状の進行を把握するためには活動量の評価が一つの有益な指標となり得ることが示唆された.