[PE-2-4] ギラン・バレー症候群患者に対するFEEを用いた電気刺激療法と課題指向型訓練の併用:症例報告
【はじめに】
ギラン・バレー症候群(以下,GBS)患者に対する電気刺激療法は,筋委縮を軽減し,課題指向型訓練を併用することで微細運動能力を向上させる効果が報告されている(Harbo,2019;Bersch,2021).しかし,手指装着型電極(以下,FEE)を用いた電気刺激療法と課題指向型訓練の併用に関する報告は少ない.今回,回復期病棟に転院時より5m以上独歩が可能であったが,四肢遠位筋の末梢神経障害を呈した20代男性を担当した.Aid for Decision-making in Occupation Choice(以下,ADOC) を用いて目標設定し,FEEを用いた電気刺激療法と課題指向型訓練を併用した.結果,事例の望んだ活動の質向上に至ったため,以下に報告する.なお,本報告に際し事例には書面にて説明を行い同意を得た.
【症例紹介】
20代男性,四肢遠位優位の脱力を自覚し,徐々に増悪しGBS疑いで3日後に他院へ入院した.急性運動軸索神経炎と診断を受け,経静脈的免疫グロブリン療法を施行.四肢遠位の筋出力低下が残存し,第9病日に当院へリハビリテーション目的で転院となった.
【作業療法評価】
MMTでは,上肢左右ともに近位部4,遠位部2,下肢近位部4,遠位部2.握力は右9㎏,左10㎏,可動域制限や感覚障害は認めない.STEFは右92点左90点,検査10の課題で減点と代償動作を認めた.FIM90点(運動55点,認知35点).ADOCを用いた項目は「水を掬う」「食器の把持」「眼脂除去」それぞれ満足度・遂行度ともに1であった.
【経過及び結果】
前期(第9~22病日)は,FEEを用いた電気刺激療法と,物品を用いて難易度調整をした微細運動課題を実施した.徒手的に内在筋への刺激,母指外転筋や虫様筋に電気刺激を与え,対立動作を反復した.他職種から情報収集し,疲労度に合わせて,段階的に負荷量を増加した.自主訓練は,回復過程に合わせて目標とした作業課題と新聞紙やペグを用いた機能訓練を提供した.
後期(第23~35病日)は,徐々に筋出力が発揮できるようになり,ADOCで挙げられた項目は生活場面で質の向上を認めた.MMTは,上肢左右ともに近位部5,遠位部3,下肢近位部5,遠位部2となった.握力は右15㎏,左17㎏,STEFは左右100点となった.FIMは126点となった.ADOCを用いた項目は全て満足度・遂行度ともに5と改善した.その後,第35病日に自宅へ退院となった.
【考察】
本事例は,若年で発症から早期に独歩を獲得し,比較的良好な予後を期待された.しかし,遠位筋優位に筋出力低下を認め,上肢活動を中心としたセルフケアに困難さを認めていた.自然経過による回復に加え,FEEを用いた電気刺激療法が筋萎縮を予防し,課題指向型訓練との併用が有用であった可能性が示唆された.
ギラン・バレー症候群(以下,GBS)患者に対する電気刺激療法は,筋委縮を軽減し,課題指向型訓練を併用することで微細運動能力を向上させる効果が報告されている(Harbo,2019;Bersch,2021).しかし,手指装着型電極(以下,FEE)を用いた電気刺激療法と課題指向型訓練の併用に関する報告は少ない.今回,回復期病棟に転院時より5m以上独歩が可能であったが,四肢遠位筋の末梢神経障害を呈した20代男性を担当した.Aid for Decision-making in Occupation Choice(以下,ADOC) を用いて目標設定し,FEEを用いた電気刺激療法と課題指向型訓練を併用した.結果,事例の望んだ活動の質向上に至ったため,以下に報告する.なお,本報告に際し事例には書面にて説明を行い同意を得た.
【症例紹介】
20代男性,四肢遠位優位の脱力を自覚し,徐々に増悪しGBS疑いで3日後に他院へ入院した.急性運動軸索神経炎と診断を受け,経静脈的免疫グロブリン療法を施行.四肢遠位の筋出力低下が残存し,第9病日に当院へリハビリテーション目的で転院となった.
【作業療法評価】
MMTでは,上肢左右ともに近位部4,遠位部2,下肢近位部4,遠位部2.握力は右9㎏,左10㎏,可動域制限や感覚障害は認めない.STEFは右92点左90点,検査10の課題で減点と代償動作を認めた.FIM90点(運動55点,認知35点).ADOCを用いた項目は「水を掬う」「食器の把持」「眼脂除去」それぞれ満足度・遂行度ともに1であった.
【経過及び結果】
前期(第9~22病日)は,FEEを用いた電気刺激療法と,物品を用いて難易度調整をした微細運動課題を実施した.徒手的に内在筋への刺激,母指外転筋や虫様筋に電気刺激を与え,対立動作を反復した.他職種から情報収集し,疲労度に合わせて,段階的に負荷量を増加した.自主訓練は,回復過程に合わせて目標とした作業課題と新聞紙やペグを用いた機能訓練を提供した.
後期(第23~35病日)は,徐々に筋出力が発揮できるようになり,ADOCで挙げられた項目は生活場面で質の向上を認めた.MMTは,上肢左右ともに近位部5,遠位部3,下肢近位部5,遠位部2となった.握力は右15㎏,左17㎏,STEFは左右100点となった.FIMは126点となった.ADOCを用いた項目は全て満足度・遂行度ともに5と改善した.その後,第35病日に自宅へ退院となった.
【考察】
本事例は,若年で発症から早期に独歩を獲得し,比較的良好な予後を期待された.しかし,遠位筋優位に筋出力低下を認め,上肢活動を中心としたセルフケアに困難さを認めていた.自然経過による回復に加え,FEEを用いた電気刺激療法が筋萎縮を予防し,課題指向型訓練との併用が有用であった可能性が示唆された.