[PE-3-1] パーキンソン病患者のブラッシュアップ入院時のCOPMを用いた評価の検討
【はじめに】パーキンソン病(以下,PD)は進行性の疾患で,患者自身のADLやIADL,QOLに大きな影響を与える.パーキンソン病診療ガイドライン2018では,リハビリテーションは有効性があるとされ,内科的・外科的治療に加えて行うことで症状の改善やQOLの改善が期待されている.作業療法(以下,OT)を実施したことで,Canadian Occupational Performance Measure(以下,COPM)スコアが改善したという報告もある(Ingrid H W M Sturkenboom et al,2014).当院では2021年4月からPD患者のブラッシュアップ入院を開始した.ブラッシュアップ入院では,服薬調整やリハビリテーションを3週間の期間を設けて実施している.OTは1日60分×週5回の介入を基本とし,関節可動域訓練,上肢機能訓練,ADL訓練,生活指導や自主練指導を行なった.
【目的】当院で過去に実施されたブラッシュアップ入院患者に対するOT評価について再考する.COPM,Parkinson’ Disease Questionnaire-39(以下,PDQ-39),FABの結果から,PD患者のQOLの変化を調査する.PD患者に対するCOPMの実施が有用であったか検討し,今後の介入の一助とする.
【方法】2021年4月から2022年3月に当院にブラッシュアップ入院したPD患者で,OTの処方があった8症例の中から,OT開始時と終了時にCOPM,PDQ-39,統一パーキンソン病評価スケール(以下,MDS-UPDRS),MMSE-J,FAB,を実施した3症例の評価結果を後方視的に調査した.本調査に関して,対象者には口頭での同意を得ている.
【結果】全症例で認知機能の低下は認められなかった.COPMにおける作業遂行の問題について優先度の高い順に,症例1では「入浴」「食事」「買い物」「更衣」「歩行」,症例2では「更衣」「歩行」「移動」「仕事」「階段」,症例3では「歩行」「仕事」「入浴」「更衣」「家事」であり,対象者の生活様式によって多様な内容が挙げられた.3症例の遂行スコアは0.2〜1.6点の改善,満足スコアは1.2〜3.8点の点数の向上が認められた.MDS-UPDRS Part2・3で,3症例ともに点数の減少が認められ身体機能の改善が示された.PDQ-39においても3症例で4〜27点の改善があり,QOLの改善が認められた.FABは,症例1は3点の改善,症例3は1点低下し,それぞれの開始時・終了時の結果は13点以下だった.
【考察】COPMを活用したことで,対象者が生活の中で問題視している事について共通認識を得ることができた.必要としている事柄についての重点的な介入や,個別性の高い関わりをすることができたことに加え,MDS-UPDRSの結果から身体機能の改善が認められたことがCOPMスコアの改善に関連があったと予測される.また,患者自身が問題視していた項目についての遂行度・満足度スコアが向上したことは,PDQ-39の結果にもあるようにQOLの向上に関連があったと考える.先行研究では,UPDRS・MMSE・FAB・PDQ-39要約指数はCOPMスコアと相関関係を示し,COPMがPD患者のADLやIADLの評価に適している可能性があると報告されており(Nakamura et al,2019 ),今回の結果からADLやIADLの改善に影響を与えたことも考えられる.FABについての先行研究(勝山ら,2023)では,FABの総点数が13点以下のPD患者で転倒の危険性が高まるとされている.症例1・3では開始時・終了時共に13点以下であり,今後転倒によるADLやIADL,QOLの低下が起こるリスクは高いため,転倒予防に対する指導も必要である.今回の調査では,3症例という少ない症例数での調査となったが,COPMを活用した評価や介入が有用であったと考えられた.今後も症例数を重ね,有用性や効果について検討をしていきたい.
【目的】当院で過去に実施されたブラッシュアップ入院患者に対するOT評価について再考する.COPM,Parkinson’ Disease Questionnaire-39(以下,PDQ-39),FABの結果から,PD患者のQOLの変化を調査する.PD患者に対するCOPMの実施が有用であったか検討し,今後の介入の一助とする.
【方法】2021年4月から2022年3月に当院にブラッシュアップ入院したPD患者で,OTの処方があった8症例の中から,OT開始時と終了時にCOPM,PDQ-39,統一パーキンソン病評価スケール(以下,MDS-UPDRS),MMSE-J,FAB,を実施した3症例の評価結果を後方視的に調査した.本調査に関して,対象者には口頭での同意を得ている.
【結果】全症例で認知機能の低下は認められなかった.COPMにおける作業遂行の問題について優先度の高い順に,症例1では「入浴」「食事」「買い物」「更衣」「歩行」,症例2では「更衣」「歩行」「移動」「仕事」「階段」,症例3では「歩行」「仕事」「入浴」「更衣」「家事」であり,対象者の生活様式によって多様な内容が挙げられた.3症例の遂行スコアは0.2〜1.6点の改善,満足スコアは1.2〜3.8点の点数の向上が認められた.MDS-UPDRS Part2・3で,3症例ともに点数の減少が認められ身体機能の改善が示された.PDQ-39においても3症例で4〜27点の改善があり,QOLの改善が認められた.FABは,症例1は3点の改善,症例3は1点低下し,それぞれの開始時・終了時の結果は13点以下だった.
【考察】COPMを活用したことで,対象者が生活の中で問題視している事について共通認識を得ることができた.必要としている事柄についての重点的な介入や,個別性の高い関わりをすることができたことに加え,MDS-UPDRSの結果から身体機能の改善が認められたことがCOPMスコアの改善に関連があったと予測される.また,患者自身が問題視していた項目についての遂行度・満足度スコアが向上したことは,PDQ-39の結果にもあるようにQOLの向上に関連があったと考える.先行研究では,UPDRS・MMSE・FAB・PDQ-39要約指数はCOPMスコアと相関関係を示し,COPMがPD患者のADLやIADLの評価に適している可能性があると報告されており(Nakamura et al,2019 ),今回の結果からADLやIADLの改善に影響を与えたことも考えられる.FABについての先行研究(勝山ら,2023)では,FABの総点数が13点以下のPD患者で転倒の危険性が高まるとされている.症例1・3では開始時・終了時共に13点以下であり,今後転倒によるADLやIADL,QOLの低下が起こるリスクは高いため,転倒予防に対する指導も必要である.今回の調査では,3症例という少ない症例数での調査となったが,COPMを活用した評価や介入が有用であったと考えられた.今後も症例数を重ね,有用性や効果について検討をしていきたい.