第58回日本作業療法学会

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ポスター

神経難病

[PE-3] ポスター:神経難病 3 

Sat. Nov 9, 2024 2:30 PM - 3:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PE-3-3] パーキンソン病患者の上肢機能に対するキネシオロジーテープの効果

高見 純司, 木村 一喜, 山口 良樹, 北野 晃祐 (医療法人財団華林会 村上華林堂病院 リハビリテーション科)

【はじめに】
 浅層の皮膚や筋膜に対してアプローチをするキネシオロジーテープ(KT)は, 過剰に伸張・収縮した筋緊張の正常化,皮膚に点在する感覚受容器の働きを変調させることで筋機能の改善や痛みを鎮静させる効果がある.パーキンソン病(PD)患者の上肢機能に対するリハビリテーション(RH)は,聴覚・視覚・体性感覚による外的刺激を用いたRHが推奨されており,振動や電気を用いた体性感覚刺激の介入報告があるが,触覚といった表在感覚によるCue効果を考慮したRHが散見されない.そこで本研究は,PD患者の筋固縮,無動,すくみによる上肢機能低下に対するKTの効果を検証する.
【目的】
 KTの体性・視覚感覚の外的CueがPD患者の上肢機能に与える効果を検証する.
【方法】
 対象は,脳神経内科医によりPDと診断を受けたHoehn&Yahr分類Ⅰ~Ⅲ度の患者26名(Ⅰ度2名,Ⅱ度14名,Ⅲ度10名)を,単純ランダム化でID順に2群に振り分け,KT群13名(男女比6/7名,平均年齢75.2±6.2歳,罹病期間6.6±3.4年),コントロール群13名(4/9,70.6±10.6歳,6.8±4.2年)とした.KTは,ニトムズ社のニトリートスタンダードタイプ幅2.5cmを用いて,痒みなど有害事象の発生を抑える目的で可能な限り最小量に調整して使用した.貼付部位は,手指の操作に影響を与えられる長母指伸筋で手内の範囲とし,両側の長母指伸筋に沿ってIP・MP関節を跨ぎ手関節までの長さで,母指の可動を制限しない様にIP・MP関節屈曲位で貼付した.貼付期間は,1週間とし,1日1回自身でKTの貼り替えを依頼した.また, KTの伸長率は,1週間の日常生活に支障をきたさない様に0~10%程度に抑え,貼り替え時の伸長の程度を対象者に指導した.評価は,初期が介入開始時,即時が5分後,最終が1週間後とし,Box&Block test(BBT)を実施した.また,KT群のみUPDRS partⅡを初期と最終で実施した.統計学的処理は,両群の初期,即時,最終のBBTの結果を反復測定分散分析後に多重比較法,KT群の初期,最終のUPDRS partⅡで上肢機能に関連する下位項目「摂食動作・着衣・清潔・書字・振戦」の合計点数と各下位項目の点数をWilcoxon符号付き順位検定にて比較し,有意水準を5%未満とした.
【倫理的配慮】
 本研究は,当院の倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
 KT群のBBTは,初期,即時,最終の順に右が42.3±5.1個→48.2±6.1個→49.3±6.1個,左が42.1±6.3個→47.0±6.3個→47.7±6.7個で,右左ともに初期と即時,初期と最終で有意差を認め(p<0.01),即時と最終で有意差を認めなかった.コントロール群のBBTは,同順に右が42.6±7.7個→41.9±7.3個→41.4±7.2個,左が40.3±6.9個→40.6±7.7個→40.3±6.8個で,いずれの期間においても有意差を認めず,また,群間差を認めなかった.KT群のUPDRS partⅡは,初期,最終の順に下位項目の合計点数が6.6±2.1点→5.3±2.0点(p>0.01),下位項目「振戦」の点数が1.2±0.7点→0.8±0.5点(p<0.05)へ有意に向上した.
【考察】
PD患者の上肢機能は,継続的なKTにより即時・短期的に向上した.本介入では,KTの伸長率を0~10%程度で抑え,浅層の筋に対して体性・視覚感覚による外的Cueを日常的に長時間入力した.これにより,グリップやピンチの手指操作で関与が大きい母指への意識付けが可能になり,日常生活動作へ影響を与えたと考える.PD患者の上肢機能に対するKTは,従来の効果のみならず,体性・視覚感覚刺激としてPD患者の筋賦活に有効である可能性が示唆された.