[PE-4-4] 上肢のすくみに対し運動観察療法を用いた作業療法実践報告
進行性核上性麻痺2事例における主観的評価への効果
【はじめに】Parkinson's syndorome(PS)でのすくみ現象は,近年下肢のみでなく上肢のすくみ(FOUL)の報告も散見する.「作業療法疾患別ガイドライン-パーキンソン病-」(ガイドライン)で作業療法(OT)での包括的な介入は推奨グレードAとされているが,上肢のOTに関しては推奨レベルが不十分であったり下肢への介入と比較し報告数が少ない現状がある.
今回,進行性核上性麻痺(PSP)でFOULを訴える2事例に対し,PSの歩行障害や運動緩慢を改善すると報告もある,目的動作の観察後に動作練習をする運動観察療法(AOT)を用いOT実施した.その結果カナダ作業遂行測定(COPM)の遂行度と満足度やFOULの出現頻度や持続時間の認識といった主観的な評価の改善を認めた為,以下に報告する.なお本報告に関し症例に書面で同意を得た.開示すべきCOIはなし.
【方法】ガイドラインに則った一般的なOT介入に加えAOTを実施した.期間は,2週間,1日2単位10日間,計20単位実施し,AOT課題はCOPMで聴取したFOULを感じる動作(目的動作)とした.また,AOTのプロトコールとFOULの定義は各研究で異なる.本報告では,プロトコールを「療法士が動作を3度提示後に動作を1試行実施し1日10分間繰り返す」とし,FOULの定義はNew Freezing of Gaint Questionnaireを参考に「上肢作業の開始時や持ち替え時など上肢活動前や活動中,急に手指や腕が止まったり,対象物にくっつく感覚」とし頻度と持続時間の認識を患者より回答を得た.
【事例紹介】
事例1:70代女性.X-1年に調理や書字で緩慢さを感じ,X年精査,リハビリテーション目的で入院.主訴は「おにぎりを作る時お米に手がくっつき止まる」COPMでおにぎり作り遂行度4満足度1,PSP⁻Rating Scale(PSPR-J)16点.右利きで可動域制限なく上肢MMT両側4,握力両側22kg.簡易上肢機能評価(STEF)右97点左96点.左優位に筋強剛あり,Scale for the Assessment and Rating of Ataxi(SARA)7点(上肢項目は手の回内外で失点),目的動作でFOULを常に感じ3~4秒持続認識あり.
事例2:60代女性,X-2年,書字で緩慢さを感る,X-1年,診断に至りX年リハビリテーション目的で入院.主訴は「洗濯物畳みで腕が強張って離れない」COPMで洗濯物畳み遂行度4満足度3,PSPR-J9点.右利きで可動域制限なく,上肢MMT両側5,握力両側26kg.STEF右99点左100点.右優位に筋強剛あり.SARA3点(指追い試験,鼻-指試験,手の回内外運動で失点).目的動作でFOULを常に感じ1~2秒持続認識あり.
【結果】
事例1:PSPR-J11点.STEF右98点左100点.SARA6.5点(手の回内外運動改善).FOULは常に感じ1~2秒持続認識あり.COPM遂行度7満足度6で「頭の中で真似すると手が離れ易くなった」と発言あり.
事例2:PSPR-J9点STEF右99点左100点.SARA3点.FOULは3回に1回程度で1~2秒持続認識あり.COPM遂行度7満足度7で「真似すると腕の強張りや止まりは減った.止まると動き出しにくい」と発言聞あり.
【考察】Ohnoら(2021)はCOPMの臨床的に意味のある最小重要差を遂行度2.20満足度2.06と示しており,今回は両事例でCOPMで明らかな改善とFOULの持続時間や頻度の認識で改善が得られた.また,Consonら(2009)はAOTは運動イメージを促進する効果があり,運動障害に対するアプローチとの組み合わせが有効であると報告している.両事例で「真似する事で」と発言があり,AOTを実施する事で運動イメージを促進する効果が得られたと考えられ,PSP患者のFOULに対しAOTと包括的な介入であるOTを組み合わせ介入する事で主観的な評価へ効果が得られると示唆された.今後症例を増やしFOULに対するAOTの効果を検討していきたい.
今回,進行性核上性麻痺(PSP)でFOULを訴える2事例に対し,PSの歩行障害や運動緩慢を改善すると報告もある,目的動作の観察後に動作練習をする運動観察療法(AOT)を用いOT実施した.その結果カナダ作業遂行測定(COPM)の遂行度と満足度やFOULの出現頻度や持続時間の認識といった主観的な評価の改善を認めた為,以下に報告する.なお本報告に関し症例に書面で同意を得た.開示すべきCOIはなし.
【方法】ガイドラインに則った一般的なOT介入に加えAOTを実施した.期間は,2週間,1日2単位10日間,計20単位実施し,AOT課題はCOPMで聴取したFOULを感じる動作(目的動作)とした.また,AOTのプロトコールとFOULの定義は各研究で異なる.本報告では,プロトコールを「療法士が動作を3度提示後に動作を1試行実施し1日10分間繰り返す」とし,FOULの定義はNew Freezing of Gaint Questionnaireを参考に「上肢作業の開始時や持ち替え時など上肢活動前や活動中,急に手指や腕が止まったり,対象物にくっつく感覚」とし頻度と持続時間の認識を患者より回答を得た.
【事例紹介】
事例1:70代女性.X-1年に調理や書字で緩慢さを感じ,X年精査,リハビリテーション目的で入院.主訴は「おにぎりを作る時お米に手がくっつき止まる」COPMでおにぎり作り遂行度4満足度1,PSP⁻Rating Scale(PSPR-J)16点.右利きで可動域制限なく上肢MMT両側4,握力両側22kg.簡易上肢機能評価(STEF)右97点左96点.左優位に筋強剛あり,Scale for the Assessment and Rating of Ataxi(SARA)7点(上肢項目は手の回内外で失点),目的動作でFOULを常に感じ3~4秒持続認識あり.
事例2:60代女性,X-2年,書字で緩慢さを感る,X-1年,診断に至りX年リハビリテーション目的で入院.主訴は「洗濯物畳みで腕が強張って離れない」COPMで洗濯物畳み遂行度4満足度3,PSPR-J9点.右利きで可動域制限なく,上肢MMT両側5,握力両側26kg.STEF右99点左100点.右優位に筋強剛あり.SARA3点(指追い試験,鼻-指試験,手の回内外運動で失点).目的動作でFOULを常に感じ1~2秒持続認識あり.
【結果】
事例1:PSPR-J11点.STEF右98点左100点.SARA6.5点(手の回内外運動改善).FOULは常に感じ1~2秒持続認識あり.COPM遂行度7満足度6で「頭の中で真似すると手が離れ易くなった」と発言あり.
事例2:PSPR-J9点STEF右99点左100点.SARA3点.FOULは3回に1回程度で1~2秒持続認識あり.COPM遂行度7満足度7で「真似すると腕の強張りや止まりは減った.止まると動き出しにくい」と発言聞あり.
【考察】Ohnoら(2021)はCOPMの臨床的に意味のある最小重要差を遂行度2.20満足度2.06と示しており,今回は両事例でCOPMで明らかな改善とFOULの持続時間や頻度の認識で改善が得られた.また,Consonら(2009)はAOTは運動イメージを促進する効果があり,運動障害に対するアプローチとの組み合わせが有効であると報告している.両事例で「真似する事で」と発言があり,AOTを実施する事で運動イメージを促進する効果が得られたと考えられ,PSP患者のFOULに対しAOTと包括的な介入であるOTを組み合わせ介入する事で主観的な評価へ効果が得られると示唆された.今後症例を増やしFOULに対するAOTの効果を検討していきたい.