第58回日本作業療法学会

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ポスター

神経難病

[PE-5] ポスター:神経難病 5

Sun. Nov 10, 2024 9:30 AM - 10:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PE-5-1] ALSに対する操作系支援ピクトグラム・チェックリストの開発

久山 圭子, 米崎 二朗, 池田 真紀 (大阪市援助技術研究室)

当研究室では,相談事業を通じて多くの神経難病による重度障がいのある人からの福祉用具に関する相談に対応してきている.相談経路は,利用者・家族からの直接的なもの以外に,難病医療情報センター,医療機関,在宅支援機関などからの間接的なものも多い.相談内容は,補装具費支給制度種目である重度障害者用意思伝達装置,車椅子,座位保持装置,上肢装具・把持装具用部品,あるいは介護保険における福祉用具貸与・購入費用の給付制度対象種目である介護ベッド及び付属品,床ずれ防止用具,車椅子,体位変換器,腰掛便座(ポータブルトイレ),移動用リフトなどである.当研究室では,更に日常生活動作全般に対し,総合的な福祉用具支援サービスを提供している.その適用事例から,前記のような社会保障制度の対象種目に含まれていない福祉用具類,特に,上肢機能障がいによる操作系の障がいに適用できる福祉用具類(自助具も含む)については,殆どの支援機関では対応されておらず,本人・家族や介護者の間で検討されている状況が確認された.また,当研究室では,支援者への指導・助言,技術的後方支援を行うアドバイザリー・サービスも提供しており,その中で,支援者側の現況として,評価に要する時間を十分に設けることが難しいこと,日常生活動作の一部と生活導線を確認せず,一部の動作のみをとらえていること,生活導線を支援プログラムの内容が支援者自身の興味や関心に影響を受けていることなどを確認している.今回,ALS患者が抱える日常生活上の諸問題を明確化し,利用者と支援者が協働しながら問題点と課題を抽出できるようにするピクトグラム・チェックリストを開発した.本システムは,ピクトグラムで表示された日常生活動作を生活導線を含めて評価できるようになっている.選択方法は,紙面上以外に,パソコン画面や透明文字盤などを介し,視線・手動でもポインティングできるようにした.これは,ALS患者の身体状況にも応じたコミュニケーションツールとしての活用も可能にしている.【目的】ALS患者が日常生活上で抱える問題点を評価し,支援機関より総合的な福祉用具支援サービスが提供されることを確立すること.【方法】相談事業の適用事例(128例)に対し,モニタリング評価を行い,担当支援機関と当研究室が提供した福祉用具支援サービスの比較を行った.比較内容は,支援対象とした障がい内容,問題解決方法(適用された福祉用具とその適合支援内容),利用効果である.これらの結果を基に,操作系の支援として必要な項目を抽出し,ピクトグラム・チェックリストの最終仕様を決定した.更に,本システムを5例のALS患者に対し使用評価を行い,利用者と支援者間のピクトグラムに対する認識度の相違点の有無,利用効果,使用感などについての評価を行った.【結果】本システムを用いることで,日常生活における操作系の障がい状況を総合的に確認することができ,支援プログラムをすすめる上での一助となることが確認された.特に,支援者側の評価の視点と生活導線も含めた総合的な福祉用具支援サービスの提供の重要性を再認識する機会ともなった.【まとめ】ALSに対する操作系支援のために開発したピクトグラム・チェックリストの有効性を確認した.今後の課題として,評価に要する時間の短縮,利用者側の本システムへのアクセシビリティを向上させ,利用者と支援者間で協働できるシステムとして機能向上を図ることとする.現在は,紙面,パソコン画面,透明文字盤等のみの選択方法となっているが,オンライン形式での相談体制の整備とともに,アプリケーションの開発等も検討することとしている.