[PE-5-2] 拡大・代替コミュニケーション支援における「支援者育成体制」の整備に向けたアンケート調査
【序論】当院は難病医療協力病院であり,神経難病者が年間入院患者の3割を占め,作業療法士(OT)が中核的支援者となり拡大・代替コミュニケーション(AAC)支援を行なっている.難病疾患における周囲との意思疎通の確保は患者・家族双方のQOLを高め(Londral A et al., 2015),AAC支援は重要な役割を果たす.一方,AAC支援は心理的配慮や症状の進行に応じた提供が求められ,スタッフの不安や負担度が高く,高い支援技術を持つ人材の不足も課題となっている.支援体制の構築には,機器の整備,支援者育成,地域連携の充実が重要とされる(国際医療福祉大学市川病院,2023).今回,「支援者育成」の体制構築における必要事項を抽出するため,現場のOTらが抱える不安の要因について調査した.
【方法】2023年2月時点で法人内に所属するOTおよび言語聴覚士(ST)計80名を対象とし,72名(OT77%,経験年数9年以下58%)より回答を得た(有効回答率90%).アンケートはGoogleフォームを用いて無記名とし,回答を持って同意を得るとともに,所属機関の倫理員会にて承認を得た(承認番号24-004).設問は,AAC支援に関連する卒前教育の有無,研修会参加,支援の経験,対象疾患,支援内容,関連知識,支援における不安な点の7項目とした.
【結果】卒前教育で講義を受けたことがある58.3%,受けたが内容を覚えていない51.5%,臨床実習中におけるAAC支援の見学経験23.6%であった.卒後の研修会参加93.2%,対象の80.8%は支援が必要な患者の担当経験があった.対象疾患は筋萎縮性側索硬化症が76.4%と多く,次いで多系統萎縮症44.4%,脊髄小脳変性症36.1%であった.実際にAAC支援の経験があったのは63.9%であり,支援内容は非エイド87.2%,ローテクエイド93.1%,意思伝達装置72.2%となった.関連知識では,意思伝達装置の申請に伴う費用や制度52.8%,意思伝達装置の導入47.2%が全面的なサポートを必要と回答した.AAC支援における意思伝達装置導入への不安は91.6%にのぼり,その半数はとても不安と回答した.不安の上位5項目は,進行に応じた対応79.2%,環境の評価77.8%,予後予測に基づいた提案72.2%,装置や制度の説明70.8%,身体認知機能の評価62.5%であった.また,半数以上が担当として責任の重圧がある,進め方がイメージできない,継続的な支援の難しさ,業者や在宅機関との連携の難しさも挙げた.
【考察】今回,AAC支援の経験や経験年数に関わらず,支援に関する不安が非常に高かった.不安の要因として,疾患特性の理解と進行に合わせた対応,機器関連の知識,多職種との連携まで幅広い知識が求められるなど,対応力が必要であることが挙げられた.中核的支援者としての重圧も見られ,多職種との役割分担の不十分さも浮き彫りとなった.一方,卒前に難病疾患に出会う機会は限られ,卒後も他疾患でのAAC支援の機会が少なく技術や知識が高まりにくいことで,自信を持てない側面につながっていると考えられた.リハスタッフのスキルアップには知識伝達形式の研修だけでなく,実習形式の研修会,事例検討,情報提供,マニュアル提示が求められる(難病在宅医療支援マニュアル,2018).さらに,地域で生活する難病者を支援する病院や在宅機関と連携し,相談し合える関係作りも重要と考えられた.
【結語】難病疾患の担当経験があるスタッフでもAAC支援の不安は高く,卒後研修に加え実践能力を養う支援体制の構築が必要である.難病医療協力病院として,院内に限らず地域スタッフのAAC支援への不安を軽減し,高い支援技術を持って対応できる支援者育成に向けて,難病相談・支援センターなど地域支援機関との連携も必要不可欠である.
【方法】2023年2月時点で法人内に所属するOTおよび言語聴覚士(ST)計80名を対象とし,72名(OT77%,経験年数9年以下58%)より回答を得た(有効回答率90%).アンケートはGoogleフォームを用いて無記名とし,回答を持って同意を得るとともに,所属機関の倫理員会にて承認を得た(承認番号24-004).設問は,AAC支援に関連する卒前教育の有無,研修会参加,支援の経験,対象疾患,支援内容,関連知識,支援における不安な点の7項目とした.
【結果】卒前教育で講義を受けたことがある58.3%,受けたが内容を覚えていない51.5%,臨床実習中におけるAAC支援の見学経験23.6%であった.卒後の研修会参加93.2%,対象の80.8%は支援が必要な患者の担当経験があった.対象疾患は筋萎縮性側索硬化症が76.4%と多く,次いで多系統萎縮症44.4%,脊髄小脳変性症36.1%であった.実際にAAC支援の経験があったのは63.9%であり,支援内容は非エイド87.2%,ローテクエイド93.1%,意思伝達装置72.2%となった.関連知識では,意思伝達装置の申請に伴う費用や制度52.8%,意思伝達装置の導入47.2%が全面的なサポートを必要と回答した.AAC支援における意思伝達装置導入への不安は91.6%にのぼり,その半数はとても不安と回答した.不安の上位5項目は,進行に応じた対応79.2%,環境の評価77.8%,予後予測に基づいた提案72.2%,装置や制度の説明70.8%,身体認知機能の評価62.5%であった.また,半数以上が担当として責任の重圧がある,進め方がイメージできない,継続的な支援の難しさ,業者や在宅機関との連携の難しさも挙げた.
【考察】今回,AAC支援の経験や経験年数に関わらず,支援に関する不安が非常に高かった.不安の要因として,疾患特性の理解と進行に合わせた対応,機器関連の知識,多職種との連携まで幅広い知識が求められるなど,対応力が必要であることが挙げられた.中核的支援者としての重圧も見られ,多職種との役割分担の不十分さも浮き彫りとなった.一方,卒前に難病疾患に出会う機会は限られ,卒後も他疾患でのAAC支援の機会が少なく技術や知識が高まりにくいことで,自信を持てない側面につながっていると考えられた.リハスタッフのスキルアップには知識伝達形式の研修だけでなく,実習形式の研修会,事例検討,情報提供,マニュアル提示が求められる(難病在宅医療支援マニュアル,2018).さらに,地域で生活する難病者を支援する病院や在宅機関と連携し,相談し合える関係作りも重要と考えられた.
【結語】難病疾患の担当経験があるスタッフでもAAC支援の不安は高く,卒後研修に加え実践能力を養う支援体制の構築が必要である.難病医療協力病院として,院内に限らず地域スタッフのAAC支援への不安を軽減し,高い支援技術を持って対応できる支援者育成に向けて,難病相談・支援センターなど地域支援機関との連携も必要不可欠である.