[PE-5-3] 神経難病者に対するハイテクエイド機器の導入を含めた補完的代替コミュニケーション支援に関する実態調査
【序論】当院では神経難病者が多く在院し,補完的代替コミュニケーション(AAC)支援を実施している.日本難病看護学会(2009)は,進行性疾患では一手段の恒久的使用は難しく,意思伝達手段の維持に関する具体的なAAC支援方法の提示や手段変更の支援が必要と述べている.我々も,病状進行に合わせて非エイド,ローテクエイド機器(ローテク),ハイテクエイド機器(ハイテク)などの手段を組み合わせて支援しているが,進行やニーズに応じて個別性が高く難渋することも多い.そこで今回,神経難病者の進行に応じたスムーズな支援体制の整備を目的に,当院におけるAAC支援の実態を探索的に調査した.
【方法】対象は,直近5年間に当院に入院した神経難病患者のうち,ハイテク支援まで実施した15名とした(調査時年齢68.2歳,呼吸器装着率66.6%,ALS86.7%,他13.4%).調査時の生存率は73.3%で,診断から調査までの期間は平均7.3年であった.当院での提供AAC手段を,非エイド5種,ローテク4種,ハイテク6種に分け,練習したAAC手段数,各練習開始時期,初期導入AAC手段と言語・呼吸機能の状態(ALSFRS-R,肺機能検査:%FVC),機器の練習率と導入率,介入期間を電子カルテより調査した.本報告に際し,所属機関の倫理委員会の承認を得た(承認番号24-002).
【結果】AACの練習数は平均6.8種であった.診断から非エイド導入までの時期は,中央値(MED)2.2年(0.1−23.1年)であり,80.0%に練習し73.3%に導入していた.ローテク導入までの時期は,MED1.9年(0.1−23.2年)であり,73.3%に練習かつ導入していた.ハイテク導入までの時期は,MED1.5年(0−23.6年)であり,各手段を並行して練習していた.初期導入AACは,非エイドが13.3%,非エイドとローテク併用が13.3%,ハイテクが73.4%であった.ハイテク初期導入時のALSFRS-Rは,言語機能MED2点(0-4点),呼吸困難MED2点(0-4点)であり,%FVCはMED47.5%(11-85%)であった.導入率が高いAACとして,非エイドではYes/Noが73.3%,ローテクではコミュニケーションボードが60.0%であった.ハイテクでは,視線検出入力装置が53.3%(練習率73.3%),走査入力方式・スキャン入力方式が46.7%(練習率80.0%)とほぼ同率であった.AAC支援の介入期間は,平均3.5年(1.1-9.4年)であり,ハイテクと併用してYes/No73.3%,コミュニケーションボード53.3%など手段を組み合わせていた.
【考察】本調査より,対象の状態に応じて様々なAAC手段を練習し,長期的な対応を求められている現状が窺えた.AAC支援では,機器が必要となる段階以前から情報提供など間接的な導入支援が必要とされる(ALS診療ガイドライン2023).しかし,初期導入支援の7割がハイテクであり,構音障害や呼吸状態により段階的な順序立てた支援が行えず,緊急度が高い介入となっていることが示された.神経難病者に対するAAC支援は,開始時期や練習機器のバリエーションが多く,使用する入力方式まで加えると選択肢の幅は膨大となる.AAC支援では,病状の進行に応じた手段の選択の幅や練習の種類が多いこと,短期間での支援選定が必要となる場合もあり,支援スタッフに多くの知識と迅速さが要求されることがわかった.今回,対象数は限定的だが実際の支援事例を通して,AAC支援の過程や手段変更の変遷を知ることができ,今後の支援の幅およびイメージ化につながると考えられた.
【結語】個々の進行に応じたスムーズなAAC支援体制を整えるためには,実際の事例を通して病状の進行時期に応じた支援過程の目安を知り,病態の進行や適合のイメージ促進,優先順位の立て方の理解促進につなげていくことが重要である.
【方法】対象は,直近5年間に当院に入院した神経難病患者のうち,ハイテク支援まで実施した15名とした(調査時年齢68.2歳,呼吸器装着率66.6%,ALS86.7%,他13.4%).調査時の生存率は73.3%で,診断から調査までの期間は平均7.3年であった.当院での提供AAC手段を,非エイド5種,ローテク4種,ハイテク6種に分け,練習したAAC手段数,各練習開始時期,初期導入AAC手段と言語・呼吸機能の状態(ALSFRS-R,肺機能検査:%FVC),機器の練習率と導入率,介入期間を電子カルテより調査した.本報告に際し,所属機関の倫理委員会の承認を得た(承認番号24-002).
【結果】AACの練習数は平均6.8種であった.診断から非エイド導入までの時期は,中央値(MED)2.2年(0.1−23.1年)であり,80.0%に練習し73.3%に導入していた.ローテク導入までの時期は,MED1.9年(0.1−23.2年)であり,73.3%に練習かつ導入していた.ハイテク導入までの時期は,MED1.5年(0−23.6年)であり,各手段を並行して練習していた.初期導入AACは,非エイドが13.3%,非エイドとローテク併用が13.3%,ハイテクが73.4%であった.ハイテク初期導入時のALSFRS-Rは,言語機能MED2点(0-4点),呼吸困難MED2点(0-4点)であり,%FVCはMED47.5%(11-85%)であった.導入率が高いAACとして,非エイドではYes/Noが73.3%,ローテクではコミュニケーションボードが60.0%であった.ハイテクでは,視線検出入力装置が53.3%(練習率73.3%),走査入力方式・スキャン入力方式が46.7%(練習率80.0%)とほぼ同率であった.AAC支援の介入期間は,平均3.5年(1.1-9.4年)であり,ハイテクと併用してYes/No73.3%,コミュニケーションボード53.3%など手段を組み合わせていた.
【考察】本調査より,対象の状態に応じて様々なAAC手段を練習し,長期的な対応を求められている現状が窺えた.AAC支援では,機器が必要となる段階以前から情報提供など間接的な導入支援が必要とされる(ALS診療ガイドライン2023).しかし,初期導入支援の7割がハイテクであり,構音障害や呼吸状態により段階的な順序立てた支援が行えず,緊急度が高い介入となっていることが示された.神経難病者に対するAAC支援は,開始時期や練習機器のバリエーションが多く,使用する入力方式まで加えると選択肢の幅は膨大となる.AAC支援では,病状の進行に応じた手段の選択の幅や練習の種類が多いこと,短期間での支援選定が必要となる場合もあり,支援スタッフに多くの知識と迅速さが要求されることがわかった.今回,対象数は限定的だが実際の支援事例を通して,AAC支援の過程や手段変更の変遷を知ることができ,今後の支援の幅およびイメージ化につながると考えられた.
【結語】個々の進行に応じたスムーズなAAC支援体制を整えるためには,実際の事例を通して病状の進行時期に応じた支援過程の目安を知り,病態の進行や適合のイメージ促進,優先順位の立て方の理解促進につなげていくことが重要である.