[PE-5-4] 神経難病患者への重度障害者用意思伝達装置導入に関する実態調査
チームでの支援体制の構築に向けて
【序論】当院では神経難病者が年間入院患者の3割を占め,必要に応じて重度障害者用意思伝達装置(意思伝達装置)の導入を支援している.導入支援では,医学的・身体機能評価に基づいた入力装置の適合・選定が重要とされる(意思伝達装置導入ガイドライン,2018).導入支援の実質的介入は作業療法士(OT)らが担っているが,症状の進行に応じた支援の展開は負担が高い傾向にある.今回,意思伝達装置導入に関わるOTらを対象に,導入支援における負担度や現状の支援体制の課題を算出し,チームでの支援体制の構築を目的として実態調査を行った.
【方法】対象は2023年2月時点で法人内に所属し,意思伝達装置の支援経験があるOTおよび言語聴覚士(ST)46名(OT76%,経験年数9年目以下52%)とした.Googleフォームを用いたアンケート調査を無記名にて実施し,回答を持って同意を得るとともに,所属機関の倫理委員会の承認(承認番号24-004)を得た.設問は,意思伝達装置導入の負担度,実際に行った支援内容,現状の支援体制の満足度,今後の支援体制への要望,連携先,患者の対応および機器の導入で苦慮した点の7項目とした.
【結果】意思伝達装置の導入支援は97.8%が大変であると回答し,その内「とても大変」が71.7%を占めるなど負担度は非常に高かった.実際に行った支援内容は,機器の情報提供69.6%,本人家族のデマンド聴取67.4%,身体・認知機能評価65.2%の順に多かったが,医療機関との情報共有や多職種とのカンファレンスの実施率は約30.0%と低かった.現状の支援体制では,先輩・同僚のフォローの満足度が82.6%と高い一方,多職種を含めた対応34.8%,支援場面の動画視聴17.4%にて満足度が低かった.今後の支援体制への要望では,導入マニュアルの作成が78.3%,説明用紙の活用が71.7%,サブ担当の配置が65.2%と高かった.連携先では,ケアマネジャー,生活相談員が5割を超えたが,関連業者23.9%,保健所4.3%と低かった.患者の対応では,ハイテク機器への抵抗感,予後説明の不足がともに60.9%であり,使用期間の予測54.3%,ハイテク機器の経験なし52.2%となった.機器の導入で苦慮した点は,制度の把握80.4%,導入の説明67.4%,機器の使用期間65.2%,支援者側の重圧65.2%,多職種との連携63%など多く挙がった.
【考察】今回の調査より,意思伝達装置の導入支援の負担度が高く,多職種との役割分担が不十分であるとの課題が示されるとともに,知識や技術の補完,負担度の軽減,多職種との連携の要望が高いことがわかった.
現状では,OTらが中核的支援者として責務を担い過ぎてしまい,重圧や負担度の高さにつながっていると考えられた.井村保(2017)は,複数の支援者が個々の役割を認識することで,互いの得意分野を補完し特定の支援者への負担集中を軽減すると述べており,支援者側の負担軽減およびチームでの支援体制の構築および多職種との連携強化が必要であると考えられた.多職種とともに円滑な導入支援を行っていくためには,進行状況に応じたカンファレンスの実施と,情報共有につながる多職種とのクリニカルパス(CP)の作成が必要なことが示された.加えて,入力装置の適合・選定にはOTらの専門性は欠かせず,導入マニュアルや説明用紙を整備し,経験値によらない支援体制の充足が求められる.
【結語】当院は難病医療協力病院であり,意思伝達装置の導入支援においてOTらに中核的支援者としての役割が期待されている.チームでの支援体制の構築のためには,OTらの不安感の軽減に向けた導入マニュアルの作成に加え,特定の支援者への負担度の軽減と役割分担に向けた多職種によるCPの作成が必要である.
【方法】対象は2023年2月時点で法人内に所属し,意思伝達装置の支援経験があるOTおよび言語聴覚士(ST)46名(OT76%,経験年数9年目以下52%)とした.Googleフォームを用いたアンケート調査を無記名にて実施し,回答を持って同意を得るとともに,所属機関の倫理委員会の承認(承認番号24-004)を得た.設問は,意思伝達装置導入の負担度,実際に行った支援内容,現状の支援体制の満足度,今後の支援体制への要望,連携先,患者の対応および機器の導入で苦慮した点の7項目とした.
【結果】意思伝達装置の導入支援は97.8%が大変であると回答し,その内「とても大変」が71.7%を占めるなど負担度は非常に高かった.実際に行った支援内容は,機器の情報提供69.6%,本人家族のデマンド聴取67.4%,身体・認知機能評価65.2%の順に多かったが,医療機関との情報共有や多職種とのカンファレンスの実施率は約30.0%と低かった.現状の支援体制では,先輩・同僚のフォローの満足度が82.6%と高い一方,多職種を含めた対応34.8%,支援場面の動画視聴17.4%にて満足度が低かった.今後の支援体制への要望では,導入マニュアルの作成が78.3%,説明用紙の活用が71.7%,サブ担当の配置が65.2%と高かった.連携先では,ケアマネジャー,生活相談員が5割を超えたが,関連業者23.9%,保健所4.3%と低かった.患者の対応では,ハイテク機器への抵抗感,予後説明の不足がともに60.9%であり,使用期間の予測54.3%,ハイテク機器の経験なし52.2%となった.機器の導入で苦慮した点は,制度の把握80.4%,導入の説明67.4%,機器の使用期間65.2%,支援者側の重圧65.2%,多職種との連携63%など多く挙がった.
【考察】今回の調査より,意思伝達装置の導入支援の負担度が高く,多職種との役割分担が不十分であるとの課題が示されるとともに,知識や技術の補完,負担度の軽減,多職種との連携の要望が高いことがわかった.
現状では,OTらが中核的支援者として責務を担い過ぎてしまい,重圧や負担度の高さにつながっていると考えられた.井村保(2017)は,複数の支援者が個々の役割を認識することで,互いの得意分野を補完し特定の支援者への負担集中を軽減すると述べており,支援者側の負担軽減およびチームでの支援体制の構築および多職種との連携強化が必要であると考えられた.多職種とともに円滑な導入支援を行っていくためには,進行状況に応じたカンファレンスの実施と,情報共有につながる多職種とのクリニカルパス(CP)の作成が必要なことが示された.加えて,入力装置の適合・選定にはOTらの専門性は欠かせず,導入マニュアルや説明用紙を整備し,経験値によらない支援体制の充足が求められる.
【結語】当院は難病医療協力病院であり,意思伝達装置の導入支援においてOTらに中核的支援者としての役割が期待されている.チームでの支援体制の構築のためには,OTらの不安感の軽減に向けた導入マニュアルの作成に加え,特定の支援者への負担度の軽減と役割分担に向けた多職種によるCPの作成が必要である.