[PE-6-4] クロイツフェルト・ヤコブ病を呈した利用者の訪問リハビリ介入に難渋した症例
【はじめに】クロイツフェルト・ヤコブ病(以下CJD)の多くは急速に進行し,発病後数カ月以内に寝たきりとなり呼吸麻痺,肺炎等で死亡すると言われている.今回作業療法士(以下OT)が急激に症状の進行したCJDの方への社会資源の選定に難渋するも,看取りまで介入出来た一例を報告する.【症例紹介】70歳代女性 診断名:CJD
主訴:聴取困難 生活歴:夫と2人暮らし.病前ADL全自立.
現病歴:X年11月CJDと診断.X+1年1月運動障害の進行が著明となり,X+1年2月訪問リハ開始.【初期評価】MMT:右上肢2,左上肢,両下肢3 基本動作:寝返り可,立位保持は一部介助.歩行困難.ADL:食事,排泄一部介助.その他全介助.言語:YES,NOでの表出多く,会話の推測必要.その他:発症6カ月程度で寝たきりになると告知済み.
【経過】介入前は歩行が可能であったが,利用3日前に急激に体動困難となり,在宅サービスへ変更.初回訪問時,環境調整や介助方法の指導を実施.本人の状態については,伝えたい事が思う様に家族へ伝わらない苛立ちや急激な状態悪化に混乱する様子が度々あった為,家族了承後に市の福祉センターOTへ同行訪問を依頼.
初日+7日目,市のOTと自宅訪問.センサーや環境制御装置の適応を検討.環境制御装置は入力が困難の為導入できず.タッチセンサーSであれば触れると音が鳴り,家族に知らせる事が出来る為デモで借りる方向となった.しかし,日に日に状態は悪化し,使用困難となった為購入は行わず.
初日+10日目,長女家族より最後に本人の生まれ故郷へ一緒に帰省し,親族に会う事を希望される.主治医の許可もあり急遽家族旅行する方向となった.多職種で旅行中の対応を協議し,「連絡票」を共同で作成.緊急連絡先一覧や食事中の注意点,皮膚状態の観察方法等を記載し家族へ配布.旅行中はトラブルなく過ごせた様子.
初日+21日目,JCS:Ⅱ-30.cheyne-stokes呼吸出現.離床は困難な為,ベッド上で介入.
初日+28日目:JCS:Ⅲ-200,四肢の筋委縮が著明に増悪.急変時の対応を考慮し介入.
3月上旬永眠.
【考察】CJDの方と関わる事が今回初めてであった為,介入当初から試行錯誤とともに不安を抱えた状態での介入であった.中山らは「神経難病患者における療養支援の難しさは,症状が多彩で,複雑,個別性が高く1人として同じ人はいない事,そして様々な社会資源を活用できるかどうかでその人のQOLが規定されるといっても過言ではなく,社会資源や支援体制整備を熟知し,実践する力が求められる」と報告している.今回,医学的な所見から予後予測を半年前後と推測し作業療法を介入した.しかし,実際は,急激に症状が進行した為,その時に必要な環境調整の対応が遅く,コミュニケーションツールの導入が上手く出来ず,家族での会話を円滑に支援出来なかった事が課題として挙げられた.何か支援出来ないかとセンサーを試したが結果導入も出来ず,本人・家族の為でなくOTの自己満足で終わってしまったのではと日々葛藤した.もっと本人や家族の意向を組んでQOL向上に関われたのではないかという思いが残る事例であった.困った時や悩んだ際に,市の窓口以外にも相談できる場所や人との繋がりを持ち,より早くきめ細やかな支援が出来る様になる事が今後必要と思われた.
家族旅行に関しては,OT一人では実現しなかった事も,医師を始め多職種で情報共有・連携する事で本人・家族が満足する支援に繋がったと思われた.今回の事例を通して,運動機能面・身体機能面だけでなく,多職種で連携し社会資源を有効活用しながら,本人・家族が求めるニードに合わせた支援を迅速に行っていく必要性を感じた.
主訴:聴取困難 生活歴:夫と2人暮らし.病前ADL全自立.
現病歴:X年11月CJDと診断.X+1年1月運動障害の進行が著明となり,X+1年2月訪問リハ開始.【初期評価】MMT:右上肢2,左上肢,両下肢3 基本動作:寝返り可,立位保持は一部介助.歩行困難.ADL:食事,排泄一部介助.その他全介助.言語:YES,NOでの表出多く,会話の推測必要.その他:発症6カ月程度で寝たきりになると告知済み.
【経過】介入前は歩行が可能であったが,利用3日前に急激に体動困難となり,在宅サービスへ変更.初回訪問時,環境調整や介助方法の指導を実施.本人の状態については,伝えたい事が思う様に家族へ伝わらない苛立ちや急激な状態悪化に混乱する様子が度々あった為,家族了承後に市の福祉センターOTへ同行訪問を依頼.
初日+7日目,市のOTと自宅訪問.センサーや環境制御装置の適応を検討.環境制御装置は入力が困難の為導入できず.タッチセンサーSであれば触れると音が鳴り,家族に知らせる事が出来る為デモで借りる方向となった.しかし,日に日に状態は悪化し,使用困難となった為購入は行わず.
初日+10日目,長女家族より最後に本人の生まれ故郷へ一緒に帰省し,親族に会う事を希望される.主治医の許可もあり急遽家族旅行する方向となった.多職種で旅行中の対応を協議し,「連絡票」を共同で作成.緊急連絡先一覧や食事中の注意点,皮膚状態の観察方法等を記載し家族へ配布.旅行中はトラブルなく過ごせた様子.
初日+21日目,JCS:Ⅱ-30.cheyne-stokes呼吸出現.離床は困難な為,ベッド上で介入.
初日+28日目:JCS:Ⅲ-200,四肢の筋委縮が著明に増悪.急変時の対応を考慮し介入.
3月上旬永眠.
【考察】CJDの方と関わる事が今回初めてであった為,介入当初から試行錯誤とともに不安を抱えた状態での介入であった.中山らは「神経難病患者における療養支援の難しさは,症状が多彩で,複雑,個別性が高く1人として同じ人はいない事,そして様々な社会資源を活用できるかどうかでその人のQOLが規定されるといっても過言ではなく,社会資源や支援体制整備を熟知し,実践する力が求められる」と報告している.今回,医学的な所見から予後予測を半年前後と推測し作業療法を介入した.しかし,実際は,急激に症状が進行した為,その時に必要な環境調整の対応が遅く,コミュニケーションツールの導入が上手く出来ず,家族での会話を円滑に支援出来なかった事が課題として挙げられた.何か支援出来ないかとセンサーを試したが結果導入も出来ず,本人・家族の為でなくOTの自己満足で終わってしまったのではと日々葛藤した.もっと本人や家族の意向を組んでQOL向上に関われたのではないかという思いが残る事例であった.困った時や悩んだ際に,市の窓口以外にも相談できる場所や人との繋がりを持ち,より早くきめ細やかな支援が出来る様になる事が今後必要と思われた.
家族旅行に関しては,OT一人では実現しなかった事も,医師を始め多職種で情報共有・連携する事で本人・家族が満足する支援に繋がったと思われた.今回の事例を通して,運動機能面・身体機能面だけでなく,多職種で連携し社会資源を有効活用しながら,本人・家族が求めるニードに合わせた支援を迅速に行っていく必要性を感じた.