[PF-1-2] 脊椎転移のある高齢がん患者はリハ介入によってADLが改善するか?
【はじめに】
がんの脊椎への骨転移では,椎体不安定性により病的骨折や脊髄圧迫のリスクがあり,身体活動の制限からADL低下がおこりやすい.また,高齢がん患者はフレイル状態に陥りやすいと報告されており,脊椎転移のある高齢がん患者はADLが低下しやすいと考えられる.当院では骨転移ボードで多職種によるリスク管理を行いながら,リハビリテーション(以下,リハ)介入を検討している.しかしながら,脊椎転移のある高齢がんの患者のADLがリハ介入でどう変化するかは明確になっておらず,特に脊椎不安定性のある場合は患者やリハスタッフが病的骨折を恐れて積極的な介入を行えない場合がある.そこで,本研究は脊椎転移のある高齢がん患者へのリハ介入効果を,介入前後のADL変化から明らかにすることを目的とした.
【対象・方法】
研究デザインは介入内容を規定しない前後比較研究で,2020年4月~2022年3月までに骨転移ボードにて検討し,リハ介入した65歳以上の脊椎転移のがん患者50例を対象とした.ADLはBarthel Index(以下,BI)で評価し,リハ介入前後で比較した.BI変化の要因分析として,BIの改善群と維持・低下群に分けて,Numerical Rating Scale(以下,NRS)で評価した疼痛の悪化の有無,Frankel分類,がん薬物療法の有無,放射線療法の有無について検討した.加えて,脊椎不安定性をSpinal Instability Neoplastic Score(以下,SINS)で評価し,SINSの6点以下を安定群,7点以上を不安定群として,群別にリハ介入の前後のBIを比較した.リハの安全性の指標としてリハ介入期間中の骨折の有無を調査した.統計解析は前後比較にWilcoxonの符号付順位検定,名義尺度にはχ二乗検定で実施した.統計ソフトはEZRをもちいて,有意水準は5%とした.
【倫理的配慮】
本研究は信州大学医学部倫理員会の承認を得て行った.
【結果】
対象者の年齢74.1±5.4歳で,男性36例/女性14例であった.対象者全体では介入前後でBIは改善を認めた(p<0.01, 介入前53.2±31.6点 vs介入後 73.6±32.2点).リハ介入中に骨折した対象者いなかった.BI変化の要因分析では,NRSの悪化,Frankel分類,がん薬物療法の有無,放射線療法の有無に有意差は認められなかった.SINSの群別の解析では,安定群(p<0.01, 介入前61.6±36.8点 vs介入後 84.7±27.0),不安定群(p<0.01, 介入前49.3±28.6点 vs介入後 68.4±33.4点)ともに改善を認めた .
【考察】
本研究の結果より,脊椎転移のある高齢のがん患者であっても,適切なリスク管理のもとであればリハ介入によりADLの改善が図れる可能性が示された.また,リハ介入中は骨折がなく,先行研究と同様に安全性が確認された.本研究の限界として,比較対象がなく,因果関係までは言及できないことなどがあげられる.今後は,脊椎転移のある高齢がん患者に対して介入内容や重症度別に検証をおこない,リハ介入の効果とその中で作業療法の役割について検討する必要があると考える.
がんの脊椎への骨転移では,椎体不安定性により病的骨折や脊髄圧迫のリスクがあり,身体活動の制限からADL低下がおこりやすい.また,高齢がん患者はフレイル状態に陥りやすいと報告されており,脊椎転移のある高齢がん患者はADLが低下しやすいと考えられる.当院では骨転移ボードで多職種によるリスク管理を行いながら,リハビリテーション(以下,リハ)介入を検討している.しかしながら,脊椎転移のある高齢がんの患者のADLがリハ介入でどう変化するかは明確になっておらず,特に脊椎不安定性のある場合は患者やリハスタッフが病的骨折を恐れて積極的な介入を行えない場合がある.そこで,本研究は脊椎転移のある高齢がん患者へのリハ介入効果を,介入前後のADL変化から明らかにすることを目的とした.
【対象・方法】
研究デザインは介入内容を規定しない前後比較研究で,2020年4月~2022年3月までに骨転移ボードにて検討し,リハ介入した65歳以上の脊椎転移のがん患者50例を対象とした.ADLはBarthel Index(以下,BI)で評価し,リハ介入前後で比較した.BI変化の要因分析として,BIの改善群と維持・低下群に分けて,Numerical Rating Scale(以下,NRS)で評価した疼痛の悪化の有無,Frankel分類,がん薬物療法の有無,放射線療法の有無について検討した.加えて,脊椎不安定性をSpinal Instability Neoplastic Score(以下,SINS)で評価し,SINSの6点以下を安定群,7点以上を不安定群として,群別にリハ介入の前後のBIを比較した.リハの安全性の指標としてリハ介入期間中の骨折の有無を調査した.統計解析は前後比較にWilcoxonの符号付順位検定,名義尺度にはχ二乗検定で実施した.統計ソフトはEZRをもちいて,有意水準は5%とした.
【倫理的配慮】
本研究は信州大学医学部倫理員会の承認を得て行った.
【結果】
対象者の年齢74.1±5.4歳で,男性36例/女性14例であった.対象者全体では介入前後でBIは改善を認めた(p<0.01, 介入前53.2±31.6点 vs介入後 73.6±32.2点).リハ介入中に骨折した対象者いなかった.BI変化の要因分析では,NRSの悪化,Frankel分類,がん薬物療法の有無,放射線療法の有無に有意差は認められなかった.SINSの群別の解析では,安定群(p<0.01, 介入前61.6±36.8点 vs介入後 84.7±27.0),不安定群(p<0.01, 介入前49.3±28.6点 vs介入後 68.4±33.4点)ともに改善を認めた .
【考察】
本研究の結果より,脊椎転移のある高齢のがん患者であっても,適切なリスク管理のもとであればリハ介入によりADLの改善が図れる可能性が示された.また,リハ介入中は骨折がなく,先行研究と同様に安全性が確認された.本研究の限界として,比較対象がなく,因果関係までは言及できないことなどがあげられる.今後は,脊椎転移のある高齢がん患者に対して介入内容や重症度別に検証をおこない,リハ介入の効果とその中で作業療法の役割について検討する必要があると考える.