[PF-2-2] 血液腫瘍疾患患者に対する365日リハビリテーションの介入の効果
日常生活動作,活動性,身体機能に着目して
【はじめに】
血液腫瘍疾患患者は,長期間の化学療法により骨髄抑制,嘔吐・吐気,倦怠感など様々な有害事象が出現しやすく,身体活動性低下,身体機能の低下が生じやすい.また倦怠感は身体活動を制限し二次的な身体機能低下,体力低下を引き起こす.これらのことからADL低下や社会生活が制限され,QOLを低下させる.そのため,これらの症状に対して運動療法が有効であることが示されており,早期から機能障害やADL低下を予防することが重要であるとされている.また急性期病院入院での365日リハビリテーション(以下リハビリ)について様々報告されている.当院においては2021年3月より導入された.今回,当院にて化学療法を行う血液腫瘍疾患患者に対して365日リハビリを行った効果について,日常生活動作,活動性,身体機能に着目して検討し,以下に報告する.
【方法】
対象は,2021年4月から2023年3月に血液腫瘍疾患に対する化学療法治療を行い,365日リハビリを提供しデータ収集可能であった121名(男性76名,女性45名)である.対象者の診断名は,悪性リンパ腫81名,白血病23名,骨髄異形成症候群9名,多発性骨髄腫8名であった.年齢は,72.7±13.4歳(平均±標準偏差)であった.効果指標として,Cancer Functional Assessment Set(以下cFAS)と,Functional Independence Measure(以下FIM))を用い,カルテ上でリハビリ評価記録を後方視的に調査した.分析は,wilcoxon符号付順位和検定を用いて初回評価(リハビリ開始時)と最終評価(退院時)を比較した.統計処理は,EZRを用い,有意水準は5%未満とした.倫理的配慮として,当院倫理委員会での承認を得た.
【結果】
cFAS初回評価平均80.2±18.0点,最終評価平均81.4±18.3点,FIM初回評価平均104±23.7点,最終評価平均109.6±23.2点であった.リハビリ介入期間の中央値は17日であった.訓練内容は,ストレッチ,低~中等度の筋力トレーニング,基本動作練習,日常生活動作練習,歩行やエルゴメーターによる有酸素運動を毎日個別に実施した.化学療法による副作用や病状により積極的な介入を行えない場合もあり,個々人の状態に合わせて実施した.分析の結果,初回評価と最終評価のcFAS(p=0.004),FIM(p<0.001)ともに有意な差を認めた.cFASを機能別に項目をみると,基本動作能力(p=0.002),下肢筋力(p=0.013),活動性(p=0.001)について有意な差を認めた.上肢筋力(p=0.505),バランス機能(p=0.43),体幹筋力(p=0.213),関節可動域(p=0.508),感覚(p=0.125)においては有意な差は認めなかった.
【考察】
血液腫瘍疾患対象者に対する365日のリハビリ介入は,活動性,運動機能,筋力,ADLの改善に寄与する可能性が示唆された.がんのリハビリテーションガイドラインでは,化学療法中もしくは治療後の患者に対して行う運動療法は,運動耐容能や筋力などの身体機能の改善,倦怠感の改善などみられるため強く勧められている.本研究においても,個々人の状態に合わせた個別リハビリを毎日実施した介入は,先行研究同様に身体機能の改善をさせる結果となった.また,毎日行うリハビリは,対象者にとって運動を意識して行うことになり,運動習慣形成の一助となった可能性が示唆された.そのことが身体機能改善に加えて,活動性の増加やADLの改善につながった可能性があると考える.
血液腫瘍疾患患者は,長期間の化学療法により骨髄抑制,嘔吐・吐気,倦怠感など様々な有害事象が出現しやすく,身体活動性低下,身体機能の低下が生じやすい.また倦怠感は身体活動を制限し二次的な身体機能低下,体力低下を引き起こす.これらのことからADL低下や社会生活が制限され,QOLを低下させる.そのため,これらの症状に対して運動療法が有効であることが示されており,早期から機能障害やADL低下を予防することが重要であるとされている.また急性期病院入院での365日リハビリテーション(以下リハビリ)について様々報告されている.当院においては2021年3月より導入された.今回,当院にて化学療法を行う血液腫瘍疾患患者に対して365日リハビリを行った効果について,日常生活動作,活動性,身体機能に着目して検討し,以下に報告する.
【方法】
対象は,2021年4月から2023年3月に血液腫瘍疾患に対する化学療法治療を行い,365日リハビリを提供しデータ収集可能であった121名(男性76名,女性45名)である.対象者の診断名は,悪性リンパ腫81名,白血病23名,骨髄異形成症候群9名,多発性骨髄腫8名であった.年齢は,72.7±13.4歳(平均±標準偏差)であった.効果指標として,Cancer Functional Assessment Set(以下cFAS)と,Functional Independence Measure(以下FIM))を用い,カルテ上でリハビリ評価記録を後方視的に調査した.分析は,wilcoxon符号付順位和検定を用いて初回評価(リハビリ開始時)と最終評価(退院時)を比較した.統計処理は,EZRを用い,有意水準は5%未満とした.倫理的配慮として,当院倫理委員会での承認を得た.
【結果】
cFAS初回評価平均80.2±18.0点,最終評価平均81.4±18.3点,FIM初回評価平均104±23.7点,最終評価平均109.6±23.2点であった.リハビリ介入期間の中央値は17日であった.訓練内容は,ストレッチ,低~中等度の筋力トレーニング,基本動作練習,日常生活動作練習,歩行やエルゴメーターによる有酸素運動を毎日個別に実施した.化学療法による副作用や病状により積極的な介入を行えない場合もあり,個々人の状態に合わせて実施した.分析の結果,初回評価と最終評価のcFAS(p=0.004),FIM(p<0.001)ともに有意な差を認めた.cFASを機能別に項目をみると,基本動作能力(p=0.002),下肢筋力(p=0.013),活動性(p=0.001)について有意な差を認めた.上肢筋力(p=0.505),バランス機能(p=0.43),体幹筋力(p=0.213),関節可動域(p=0.508),感覚(p=0.125)においては有意な差は認めなかった.
【考察】
血液腫瘍疾患対象者に対する365日のリハビリ介入は,活動性,運動機能,筋力,ADLの改善に寄与する可能性が示唆された.がんのリハビリテーションガイドラインでは,化学療法中もしくは治療後の患者に対して行う運動療法は,運動耐容能や筋力などの身体機能の改善,倦怠感の改善などみられるため強く勧められている.本研究においても,個々人の状態に合わせた個別リハビリを毎日実施した介入は,先行研究同様に身体機能の改善をさせる結果となった.また,毎日行うリハビリは,対象者にとって運動を意識して行うことになり,運動習慣形成の一助となった可能性が示唆された.そのことが身体機能改善に加えて,活動性の増加やADLの改善につながった可能性があると考える.