[PF-3-1] 肩甲骨皮弁再建後の肩関節屈曲運動では両側僧帽筋の活動が高まる
【背景】頭頚部腫瘍における肩甲骨皮弁再建術は1980年代から施行され(Teot, 1981),その有効性について示されてきた(去川, 2016).システマティックレビューにおいては,皮弁術後20ヶ月後の主観的な上肢機能障害は軽微で(Ranganath, 2023),長期的予後は良好であると報告された.一方で,術後の長期経過では,関節可動域制限が残存した報告(Kansy, 2019)があり,加えて術後早期の上肢機能障害の程度や原因について客観的な報告はない.肩甲骨皮弁再建術後早期における上肢機能障害の経過と,上肢運動時の肩甲帯筋活動を検証することは,リハビリテーション計画の一助となるかもしれない.そこで本研究の目的は,肩甲骨皮弁再建術後の肩関節屈曲角に応じた運動時の僧帽筋筋活動を,筋電図解析を用いて検証することとした.尚,発表に際し症例には同意を得ている.開示すべきCOIなし.
【対象および方法】対象は,頬骨骨肉腫の診断で右肩甲骨皮弁再建術(利き手側)を施行された20代男性.手術前日から作業療法を開始した.筋電測定は術前,術後1ヶ月,術後5ヶ月に実施.筋電図は,Delsys Trigno Wireless EMG systemを使用して,術側と非術側の僧帽筋上部・中部・下部線維に電極を配置した.電極貼付後,正規化のために徒手筋力検査方法に従って各筋の最大随意収縮(Maximal voluntary contraction: MVC)を8秒間測定し,開始から3秒を除外した中間3秒を採用した.上肢運動の測定条件は自重等尺性運動で,肩関節屈曲30度,60度,90度肢位において各8秒間のデータを取得した.得られたデータは開始3秒を除外した5秒間を対象に二乗平均平方根(Root Mean Square)で処理し,MVCを基準に正規化し%MVCを算出した.
【結果】術前は肩の運動障害なし.術後1ヶ月で肩関節屈曲90°以上の自動運動が可能,術後5ヶ月では屈曲180°の自動運動が可能となった.%MVCを屈曲角度30°,60°,90°条件の順で術側/非術側の形で以下に示す(%).術前において,僧帽筋上部7/7,8/8,10/11,僧帽筋中部5/5,8/6,5/6,僧帽筋下部2/2,3/3,10/5であった.術後1ヶ月において,僧帽筋上部18/24,21/28,40/40,僧帽筋中部15/18,20/16,29/17,僧帽筋下部2/2,3/3,10/5であった.術後5ヶ月において僧帽筋上部7/10,12/12,36/24,僧帽筋中部7/4,12/5,20/6,僧帽筋下部1/1,1/4,8/5であった.術前から筋電図の日間変動である平均25%(akataki, 1999)を超える変化を示した値を抽出した結果,術後1ヶ月の屈曲90度時における術側および非術側の僧帽筋上部,術後5ヶ月の術側の屈曲90度時における僧帽筋上部であった.術後1ヶ月では術側のみではなく,非術側においても僧帽筋上部の%MVCは上昇しており,5ヶ月時点で日間変動内に低下した.
【考察】本研究は,肩甲骨皮弁再建後の肩関節屈曲の経過評価と,運動時の僧帽筋出力を筋電図解析にて検証した.その結果,術後1ヶ月で屈曲90°以上,術後5ヶ月では屈曲180°の自動運動を獲得した.筋電図による解析は,術後1ヶ月において術側のみではなく非術側においても,屈曲90°の僧帽筋上部で%MVCは高く,術後5ヶ月では術側の僧帽筋上部で%MVCが高かった.この要因は下角を中心とした肩甲骨皮弁再建により,僧帽筋下部の筋発揮を僧帽筋上部で代償していると推察する.また,利き手側での肩甲骨皮弁再建患者は,10ヶ月後の肩関節ROMが変化した(Mobargha, 2020).術側が利き手・非利き手で経過が変わるのであれば,本結果のように手術側のみならず,非術側肩関節運動に影響を及ぼす可能性が示唆された.
【対象および方法】対象は,頬骨骨肉腫の診断で右肩甲骨皮弁再建術(利き手側)を施行された20代男性.手術前日から作業療法を開始した.筋電測定は術前,術後1ヶ月,術後5ヶ月に実施.筋電図は,Delsys Trigno Wireless EMG systemを使用して,術側と非術側の僧帽筋上部・中部・下部線維に電極を配置した.電極貼付後,正規化のために徒手筋力検査方法に従って各筋の最大随意収縮(Maximal voluntary contraction: MVC)を8秒間測定し,開始から3秒を除外した中間3秒を採用した.上肢運動の測定条件は自重等尺性運動で,肩関節屈曲30度,60度,90度肢位において各8秒間のデータを取得した.得られたデータは開始3秒を除外した5秒間を対象に二乗平均平方根(Root Mean Square)で処理し,MVCを基準に正規化し%MVCを算出した.
【結果】術前は肩の運動障害なし.術後1ヶ月で肩関節屈曲90°以上の自動運動が可能,術後5ヶ月では屈曲180°の自動運動が可能となった.%MVCを屈曲角度30°,60°,90°条件の順で術側/非術側の形で以下に示す(%).術前において,僧帽筋上部7/7,8/8,10/11,僧帽筋中部5/5,8/6,5/6,僧帽筋下部2/2,3/3,10/5であった.術後1ヶ月において,僧帽筋上部18/24,21/28,40/40,僧帽筋中部15/18,20/16,29/17,僧帽筋下部2/2,3/3,10/5であった.術後5ヶ月において僧帽筋上部7/10,12/12,36/24,僧帽筋中部7/4,12/5,20/6,僧帽筋下部1/1,1/4,8/5であった.術前から筋電図の日間変動である平均25%(akataki, 1999)を超える変化を示した値を抽出した結果,術後1ヶ月の屈曲90度時における術側および非術側の僧帽筋上部,術後5ヶ月の術側の屈曲90度時における僧帽筋上部であった.術後1ヶ月では術側のみではなく,非術側においても僧帽筋上部の%MVCは上昇しており,5ヶ月時点で日間変動内に低下した.
【考察】本研究は,肩甲骨皮弁再建後の肩関節屈曲の経過評価と,運動時の僧帽筋出力を筋電図解析にて検証した.その結果,術後1ヶ月で屈曲90°以上,術後5ヶ月では屈曲180°の自動運動を獲得した.筋電図による解析は,術後1ヶ月において術側のみではなく非術側においても,屈曲90°の僧帽筋上部で%MVCは高く,術後5ヶ月では術側の僧帽筋上部で%MVCが高かった.この要因は下角を中心とした肩甲骨皮弁再建により,僧帽筋下部の筋発揮を僧帽筋上部で代償していると推察する.また,利き手側での肩甲骨皮弁再建患者は,10ヶ月後の肩関節ROMが変化した(Mobargha, 2020).術側が利き手・非利き手で経過が変わるのであれば,本結果のように手術側のみならず,非術側肩関節運動に影響を及ぼす可能性が示唆された.