[PF-4-1] CAR-T細胞療法を受ける患者の特徴的な経過と作業療法
【はじめに】CAR-T細胞療法は,本邦で2019年に保険承認された血液がんに対する遺伝子治療である.当院では2022年から治療認定され,リハビリテーション介入も行われている.現状では,CAR-T細胞療法とリハビリテーション関連の文献は乏しいため,今回筆者が経験した作業療法(以下,OT)介入に関して報告をする.なお,本人より同意を得た.
【症例紹介】高悪性度B細胞リンパ腫,多発性転移(Th8-11椎体,右11肋骨等)の診断で,対麻痺を呈した60代男性.X年Y月Z日胸椎外腫瘍を認めた.Z+16日下肢筋力低下・しびれ・歩行困難を認め,悪性リンパ腫疑いでA病院へ緊急入院,放射線療法を開始.その後,数回の化学療法を実施するも病態進行があり,Z+161日CAR-T細胞療法目的に当院へ転院.Z+164日PT・OT開始.前医では,pick walker使用し短距離歩行が見守りで可能だったが,左肩関節痛が出現後は歩行練習は未実施.最終的には自宅退院を目指していた.
【OT初期評価(Z+164日)】主訴は左肩の疼痛緩和,移動手段の獲得,トイレでの排泄.認知機能・コミュニケーションは良好.安静時NRS6・動作時NRS10の左肩関節痛,左肩挙上制限あり.両下肢に痙性麻痺,Th10以下に中等度~重度の感覚鈍麻,腸腰筋(4/4)と左肩を除きMMT5/5.起居動作は寝返りが自立,起き上がりが軽介助,端坐位が見守り,車椅子移乗は未実施.ADLはBI 25点(食事・歯磨きはセッティングで一部可能で左手使用は困難,排尿・排便コントロールは不十分でオムツ使用,その他全介助).
【方針】介入当初は対麻痺と左肩関節痛,易疲労性により臥床状態だった.そのため,CAR-T細胞療法前後の体力維持,左上肢の自己管理獲得,起居動作・ADLの介助量軽減をOT目標とし,離床や左上肢の自己管理指導・ADL指導を中心に進める方針とした.不良肢位による疼痛増悪やCAR-T細胞療法後の副作用・骨髄抑制に留意し介入する.
【経過・結果】転院当初より左肩関節痛が持続しており,CTにて左上腕骨近位端骨折の診断となり保存加療となった.離床時には三角巾を使用,臥床時には上腕骨求心位となるようポジショニングし対応した.また,疼痛が生じにくい着替えや起き上がりの手順を本人や病棟と共有し対応した.Z+167日CAR-T細胞療法施行.その後約2週間はCRS(38-40°の熱発・血圧低下・酸素化低下)を呈し,積極的な介入は難しく拘縮予防が中心となった.また血小板低下や血尿があり,輸血を数回実施.貧血や易出血,疲労性に留意し介入を行った.解熱に伴い,起居動作練習を再開したが,容易に息切れし,起き上がり時の介助量増加がみられた.その後は骨髄抑制が改善し全身状態が安定したため,Z+198日にA病院へ再転院となった.その際には,身体機能・ADLは初期評価時と著変なく,起き上がりや端坐位は見守りで可能となった.
【考察】CAR-T細胞療法は再発性・難治性の血液がん患者が適応となるため,治療期間が長期に及び,治療後早期に高い割合でCRSやICANSなどの合併症を発症することが特徴として挙げられる.よって,予備力が低下し,廃用症候群やADL低下を容易に引き起こすことが予測される.本症例も治療後にCRSを呈し,一時的に体力低下や起居動作の介助量増加が生じた.ADL低下を長期化させないため,治療前から介入し予備力を向上させることや,特徴的な経過や副作用を理解した上で,時期に応じた運動負荷・ADLの調整を行うことが重要と思われる.加えて,本人のニーズと予後を踏まえた目標設定を行うことで介入がよりスムーズになる.今後は症例数を蓄積していき,CAR-T細胞療法患者の身体機能やADL変化の特徴,OT介入による効果を検証していくことが必要になる.
【症例紹介】高悪性度B細胞リンパ腫,多発性転移(Th8-11椎体,右11肋骨等)の診断で,対麻痺を呈した60代男性.X年Y月Z日胸椎外腫瘍を認めた.Z+16日下肢筋力低下・しびれ・歩行困難を認め,悪性リンパ腫疑いでA病院へ緊急入院,放射線療法を開始.その後,数回の化学療法を実施するも病態進行があり,Z+161日CAR-T細胞療法目的に当院へ転院.Z+164日PT・OT開始.前医では,pick walker使用し短距離歩行が見守りで可能だったが,左肩関節痛が出現後は歩行練習は未実施.最終的には自宅退院を目指していた.
【OT初期評価(Z+164日)】主訴は左肩の疼痛緩和,移動手段の獲得,トイレでの排泄.認知機能・コミュニケーションは良好.安静時NRS6・動作時NRS10の左肩関節痛,左肩挙上制限あり.両下肢に痙性麻痺,Th10以下に中等度~重度の感覚鈍麻,腸腰筋(4/4)と左肩を除きMMT5/5.起居動作は寝返りが自立,起き上がりが軽介助,端坐位が見守り,車椅子移乗は未実施.ADLはBI 25点(食事・歯磨きはセッティングで一部可能で左手使用は困難,排尿・排便コントロールは不十分でオムツ使用,その他全介助).
【方針】介入当初は対麻痺と左肩関節痛,易疲労性により臥床状態だった.そのため,CAR-T細胞療法前後の体力維持,左上肢の自己管理獲得,起居動作・ADLの介助量軽減をOT目標とし,離床や左上肢の自己管理指導・ADL指導を中心に進める方針とした.不良肢位による疼痛増悪やCAR-T細胞療法後の副作用・骨髄抑制に留意し介入する.
【経過・結果】転院当初より左肩関節痛が持続しており,CTにて左上腕骨近位端骨折の診断となり保存加療となった.離床時には三角巾を使用,臥床時には上腕骨求心位となるようポジショニングし対応した.また,疼痛が生じにくい着替えや起き上がりの手順を本人や病棟と共有し対応した.Z+167日CAR-T細胞療法施行.その後約2週間はCRS(38-40°の熱発・血圧低下・酸素化低下)を呈し,積極的な介入は難しく拘縮予防が中心となった.また血小板低下や血尿があり,輸血を数回実施.貧血や易出血,疲労性に留意し介入を行った.解熱に伴い,起居動作練習を再開したが,容易に息切れし,起き上がり時の介助量増加がみられた.その後は骨髄抑制が改善し全身状態が安定したため,Z+198日にA病院へ再転院となった.その際には,身体機能・ADLは初期評価時と著変なく,起き上がりや端坐位は見守りで可能となった.
【考察】CAR-T細胞療法は再発性・難治性の血液がん患者が適応となるため,治療期間が長期に及び,治療後早期に高い割合でCRSやICANSなどの合併症を発症することが特徴として挙げられる.よって,予備力が低下し,廃用症候群やADL低下を容易に引き起こすことが予測される.本症例も治療後にCRSを呈し,一時的に体力低下や起居動作の介助量増加が生じた.ADL低下を長期化させないため,治療前から介入し予備力を向上させることや,特徴的な経過や副作用を理解した上で,時期に応じた運動負荷・ADLの調整を行うことが重要と思われる.加えて,本人のニーズと予後を踏まえた目標設定を行うことで介入がよりスムーズになる.今後は症例数を蓄積していき,CAR-T細胞療法患者の身体機能やADL変化の特徴,OT介入による効果を検証していくことが必要になる.