[PF-4-2] 腫瘍広範切除術および腫瘍用人工肘関節置換術を施行された右肘関節悪性軟部腫瘍症例への作業療法プロセスモデルを用いた介入経験
【はじめに】悪性軟部腫瘍の治療においては再発防止のため腫瘍とともに周囲の正常組織を切除する腫瘍広範切除術を実施する場合が多い.そのため,高頻度に術後機能障害を呈する.術後の作業療法では,機能予後を念頭に置いたADL・IADLの獲得を目指す必要がある.今回,腫瘍広範切除術および腫瘍用人工肘関節置換術を施行された右肘関節悪性軟部腫瘍症例への作業療法プロセスモデルを用いた介入を経験したので報告する.
なお,本報告において,症例には書面および口頭にて十分に説明,了承を得た.
【作業療法経過】症例は右利きの70歳代の女性である.術前評価では握力 18.2kg,Box&Block Test(BBT) 59個,DASH 42.9点であり,明らかな機能障害を認めなかった.独居でADL・IADLは自立していた.COPMでは,「調理」が重要度・遂行度・満足度何れも10であった.診断名は右肘関節悪性軟部腫瘍であり,腫瘍広範切除術(尺骨神経と前骨間神経,上腕筋三頭筋,上腕筋,尺骨手根屈筋から円回内筋までの手関節屈曲筋群を合併切除),腫瘍用人工肘関節置換術,左前外側大腿皮弁再建術が施行された.
術後指示は,術後1週目は肘部シーネ・三角巾固定での患部外練習,2週目から右肘関節屈曲60°まで,3週目から90°までの関節可動域練習,4週目から荷重を除く活動を許可された.創部の疼痛が強く,患部外練習では拘縮予防での手指自動・他動関節可動域練習にとどまった.患部の機能練習に併せて術後の機能障害を考慮し,早期に片手でのセルフケアを習得するための作業技能練習,片手操作を補助する自助具の選定(調理板等)を行った(代償モデル).術後,約1ヶ月で自宅退院となり,一部の洗体や家事に介助を要したが,セルフケアは概ね自立した.退院時のCOPMでは「調理」は遂行度 ・満足度ともに1であった.
退院後は,外来作業療法(週1回)を続けていたが,術後2カ月で断端陽性が明らかとなり,放射線療法目的に約2カ月間入院となった.作業療法では,症例の患肢機能改善の強い思いもあり,右上肢機能向上を目的に介入した(回復モデル).肘関節は自動介助運動,机上でのリーチ,物品操作練習と段階付けて実施した.上肢の空間保持が可能となるよう肩関節の関節可動域練習や課題志向型練習を合わせて実施した.また調理の両手動作など補助手として模擬的な環境での動作練習により右上肢の使用を促した(習得モデル).
【結果】最終評価(術後6ヶ月)では,肘関節屈曲110°,伸展-5°であり,MMTは各関節とも2,尺側2指の感覚鈍麻,握力 3.5kg,BBT 49個,Musculoskeletal Tumor Society Score(MSTS) 60.0%,DASH 73.3点であった.また,COPMでの「調理」は遂行度・満足度ともに7であり,両手動作の際に補助手として右上肢を使用できている. ADL・IADLは介護保険サービスを利用しながら独居生活およびがん治療の継続が行えている.
【考察】今回,利き手側の肘関節悪性軟部腫瘍症例への作業療法介入プロセスモデルを用いたアプローチを実践し,患部の機能向上とともにADL・IADLにおける代償手段,作業技能の選択を行い,作業遂行の向上を図ることができた.本症例は,術後の大幅な機能低下が想定されため,早期に代償手段での動作練習を行うことでセルフケアが自立となり,退院に繋がった.さらに,がん治療に伴い再度集中的な介入が可能となったため,残存機能への機能練習を実施することでADL・IADLでの補助手として機能再獲得が可能となった.がんリハビリテーションでは治療方針に応じた介入が必要であり,本症例でも治療経過に応じた目標設定を行うことで,症例の重要とする作業獲得へと繋げることができたと考えられる.
なお,本報告において,症例には書面および口頭にて十分に説明,了承を得た.
【作業療法経過】症例は右利きの70歳代の女性である.術前評価では握力 18.2kg,Box&Block Test(BBT) 59個,DASH 42.9点であり,明らかな機能障害を認めなかった.独居でADL・IADLは自立していた.COPMでは,「調理」が重要度・遂行度・満足度何れも10であった.診断名は右肘関節悪性軟部腫瘍であり,腫瘍広範切除術(尺骨神経と前骨間神経,上腕筋三頭筋,上腕筋,尺骨手根屈筋から円回内筋までの手関節屈曲筋群を合併切除),腫瘍用人工肘関節置換術,左前外側大腿皮弁再建術が施行された.
術後指示は,術後1週目は肘部シーネ・三角巾固定での患部外練習,2週目から右肘関節屈曲60°まで,3週目から90°までの関節可動域練習,4週目から荷重を除く活動を許可された.創部の疼痛が強く,患部外練習では拘縮予防での手指自動・他動関節可動域練習にとどまった.患部の機能練習に併せて術後の機能障害を考慮し,早期に片手でのセルフケアを習得するための作業技能練習,片手操作を補助する自助具の選定(調理板等)を行った(代償モデル).術後,約1ヶ月で自宅退院となり,一部の洗体や家事に介助を要したが,セルフケアは概ね自立した.退院時のCOPMでは「調理」は遂行度 ・満足度ともに1であった.
退院後は,外来作業療法(週1回)を続けていたが,術後2カ月で断端陽性が明らかとなり,放射線療法目的に約2カ月間入院となった.作業療法では,症例の患肢機能改善の強い思いもあり,右上肢機能向上を目的に介入した(回復モデル).肘関節は自動介助運動,机上でのリーチ,物品操作練習と段階付けて実施した.上肢の空間保持が可能となるよう肩関節の関節可動域練習や課題志向型練習を合わせて実施した.また調理の両手動作など補助手として模擬的な環境での動作練習により右上肢の使用を促した(習得モデル).
【結果】最終評価(術後6ヶ月)では,肘関節屈曲110°,伸展-5°であり,MMTは各関節とも2,尺側2指の感覚鈍麻,握力 3.5kg,BBT 49個,Musculoskeletal Tumor Society Score(MSTS) 60.0%,DASH 73.3点であった.また,COPMでの「調理」は遂行度・満足度ともに7であり,両手動作の際に補助手として右上肢を使用できている. ADL・IADLは介護保険サービスを利用しながら独居生活およびがん治療の継続が行えている.
【考察】今回,利き手側の肘関節悪性軟部腫瘍症例への作業療法介入プロセスモデルを用いたアプローチを実践し,患部の機能向上とともにADL・IADLにおける代償手段,作業技能の選択を行い,作業遂行の向上を図ることができた.本症例は,術後の大幅な機能低下が想定されため,早期に代償手段での動作練習を行うことでセルフケアが自立となり,退院に繋がった.さらに,がん治療に伴い再度集中的な介入が可能となったため,残存機能への機能練習を実施することでADL・IADLでの補助手として機能再獲得が可能となった.がんリハビリテーションでは治療方針に応じた介入が必要であり,本症例でも治療経過に応じた目標設定を行うことで,症例の重要とする作業獲得へと繋げることができたと考えられる.