[PF-5-1] 終末期がん患者における生命予後と作業療法評価の関連
【序論】
終末期がん患者が尊厳を持って最期まで生きるために,終末期リハビリテーションが重要である(天野ら 2021)とされている.終末期作業療法は,生活の質Quality of Life (以下,QOL)維持・向上を目標としており,患者の希望に添って介入することが求められる.臨床現場において終末期がん患者へ作業療法介入を行うことで,患者の自発的な言動や活動性の向上が見られており,作業療法介入の必要性は高いと考えられる.Palliative Prognostic Index(以下,PPI)は,値が大きいほど全身状態が悪化していることを示しており,終末期がん患者の短期的な生命予後の評価である.先行研究においては,在宅復帰支援や介入内容を検討する有益な情報となる(藤井ら 2023)と報告されている.しかし,PPIと作業療法評価の関係性は明らかになっていない.そこで本研究は,入院中の終末期がん患者のPPIと,作業療法評価の関連を調査した.
【方法】
対象は,2023年10月16日から2024年1月25日までに当院急性期病棟と医療療養病棟,障害者病棟に入院し,リハビリテーションが処方された終末期がん患者20名(年齢81.3±7.6歳,男性12名,女性8名)とした.終末期がん患者の定義は,医学的な治療効果が期待できず,積極的治療がむしろ不適切になった状態で,生命予後が6ヶ月以内と考えられる段階のがん患者(池知ら 2023)とした.作業療法評価項目は,年齢,性別,診断名,チャールソン併存疾患指数(Charlson Comorbidity Index;以下,CCI ),体格指数(Body Mass Index;以下,BMI ),下腿周径,体重,障害高齢者の日常生活自立度, Ability for Basic Movement scaleⅡ(以下,ABMS-2), Palliative Performance Scale(以下,PPS),Performance Status(以下,PS), PPI,N式老年者用精神状態尺度(New Clinical Scale for Rating of Mental States of Elderly;以下,NM scale),症状・日常生活統合スコア(Integrated Distress Activity Score;以下,IDAS),Vitality Index (以下,VI),機能的自立度評価表(Functional Independence Measure;以下,FIM),Model of Human Occupation Screening Tool (以下,MOHOST)とした.これらの項目を,がんリハビリテーション研修を修了した作業療法士3名が評価を行った.統計解析は,各評価項目の基本統計量を算出した.次に,各項目とPPIの相関をSpearmanの順位相関係数にて解析した.統計解析はフリー統計ソフトEZR ver1.55を用い,有意水準は5%ととした.参加者には口頭と書面にて同意を得た.
【結果】
基本統計量はCCI合計が6.0[5.5-7.0],BMIが19.0[17.6-20.1],右下腿周径が26.0[24.5-28.5]cm,左下腿周径が26.0[24.1-27.8]cm,ABMS-2が17.0[11.0-28.0],NM scaleが33.0[22.2-37.7],IDASが2.5[0-5.7],VIが7.0[5.0-8.2],FIMが55.0[43.0-69.0],MOHOSTが55.0[42.0-68.5]であった.PPIとの有意な相関がみられた項目は,ABMS-2合計(r:-0.44 p=0.04), NM scale(r:-0.64 p=0.01),IDAS(r:-0.78 p=0.01),VI(r:-0.64 p=0.01),MOHOST(r:-0.65 p=0.01)であった.
【考察】
PPIと基本動作能力,認知機能,QOL,意欲,作業従事には関係があることが示唆された.がん関連症状が多くみられる終末期がん患者では,全身状態に応じて,基本動作,認知機能,QOL,意欲,作業従事が低下することから,全身状態を目安とした退院支援を行なっていくことが重要であると示唆された.
終末期がん患者が尊厳を持って最期まで生きるために,終末期リハビリテーションが重要である(天野ら 2021)とされている.終末期作業療法は,生活の質Quality of Life (以下,QOL)維持・向上を目標としており,患者の希望に添って介入することが求められる.臨床現場において終末期がん患者へ作業療法介入を行うことで,患者の自発的な言動や活動性の向上が見られており,作業療法介入の必要性は高いと考えられる.Palliative Prognostic Index(以下,PPI)は,値が大きいほど全身状態が悪化していることを示しており,終末期がん患者の短期的な生命予後の評価である.先行研究においては,在宅復帰支援や介入内容を検討する有益な情報となる(藤井ら 2023)と報告されている.しかし,PPIと作業療法評価の関係性は明らかになっていない.そこで本研究は,入院中の終末期がん患者のPPIと,作業療法評価の関連を調査した.
【方法】
対象は,2023年10月16日から2024年1月25日までに当院急性期病棟と医療療養病棟,障害者病棟に入院し,リハビリテーションが処方された終末期がん患者20名(年齢81.3±7.6歳,男性12名,女性8名)とした.終末期がん患者の定義は,医学的な治療効果が期待できず,積極的治療がむしろ不適切になった状態で,生命予後が6ヶ月以内と考えられる段階のがん患者(池知ら 2023)とした.作業療法評価項目は,年齢,性別,診断名,チャールソン併存疾患指数(Charlson Comorbidity Index;以下,CCI ),体格指数(Body Mass Index;以下,BMI ),下腿周径,体重,障害高齢者の日常生活自立度, Ability for Basic Movement scaleⅡ(以下,ABMS-2), Palliative Performance Scale(以下,PPS),Performance Status(以下,PS), PPI,N式老年者用精神状態尺度(New Clinical Scale for Rating of Mental States of Elderly;以下,NM scale),症状・日常生活統合スコア(Integrated Distress Activity Score;以下,IDAS),Vitality Index (以下,VI),機能的自立度評価表(Functional Independence Measure;以下,FIM),Model of Human Occupation Screening Tool (以下,MOHOST)とした.これらの項目を,がんリハビリテーション研修を修了した作業療法士3名が評価を行った.統計解析は,各評価項目の基本統計量を算出した.次に,各項目とPPIの相関をSpearmanの順位相関係数にて解析した.統計解析はフリー統計ソフトEZR ver1.55を用い,有意水準は5%ととした.参加者には口頭と書面にて同意を得た.
【結果】
基本統計量はCCI合計が6.0[5.5-7.0],BMIが19.0[17.6-20.1],右下腿周径が26.0[24.5-28.5]cm,左下腿周径が26.0[24.1-27.8]cm,ABMS-2が17.0[11.0-28.0],NM scaleが33.0[22.2-37.7],IDASが2.5[0-5.7],VIが7.0[5.0-8.2],FIMが55.0[43.0-69.0],MOHOSTが55.0[42.0-68.5]であった.PPIとの有意な相関がみられた項目は,ABMS-2合計(r:-0.44 p=0.04), NM scale(r:-0.64 p=0.01),IDAS(r:-0.78 p=0.01),VI(r:-0.64 p=0.01),MOHOST(r:-0.65 p=0.01)であった.
【考察】
PPIと基本動作能力,認知機能,QOL,意欲,作業従事には関係があることが示唆された.がん関連症状が多くみられる終末期がん患者では,全身状態に応じて,基本動作,認知機能,QOL,意欲,作業従事が低下することから,全身状態を目安とした退院支援を行なっていくことが重要であると示唆された.