[PF-5-2] 多職種共同で退院支援が繋がった頭頸部癌術後の一症例
【序論】頭頸部癌により喉頭摘出術や頸部郭清術等を施行すると,発声や嚥下,上肢機能障害を生じADLやQOL低下を来す.また高侵襲手術は蛋白異化亢進され骨格筋萎縮が生じ,機能予後や生命予後を悪化させると報告がある.既往に後縦靱帯骨化症術後と慢性硬膜下血腫術後で元々機能障害を有し,今回の頭頸部癌術後でさらに機能とADL低下を認めたが,家族を含め多職種と連携することで自宅退院できた症例を経験した.以下報告する.研究の趣旨を説明し,症例と家族に同意は得た.
【症例紹介】80歳代前半の男性.入院1ヶ月前より嗄声や食物で喉に詰まる感じがあり他院受診し,右梨状窩に腫瘍性病変を認めた.同日,精査加療目的で当院耳鼻科に紹介受診する.下咽頭癌(SCC,T4bN2bM0)の診断で,下咽頭部分切除,喉頭全摘出,甲状腺右葉切除,両頸部郭清術を施行し,永久気管孔を造設した.術後3日目より作業療法(以下,OT)開始.入院前生活は妻と娘の3人暮らし,ADLは入浴動作以外自立,介護保険は要介護1でデイサービスと置き手すりレンタルを利用していた.自宅退院には食事動作と排泄動作の自立,永久気管孔で失声を生じるため入院中にコミュニケーション手段の検討を症例と家族が希望した.
【作業療法初回評価】安静度は背上げ45度,上肢挙上は肩屈曲90度までの指示であった.OT評価では,意識レベルはJCS2.ROMは肩屈曲80/90,肘伸展-20/-15.GMTは肩関節2/3,肘関節2/3,股関節3/4,膝関節3/4.既往の後遺症で特に右上下肢の運動麻痺と右手指屈曲拘縮を認めた.Barthel Index(以下,BI)0点.コミュニケーション方法は,背上げ45度の姿勢で書字は困難で,読唇やジェスチャー,腹部上で指筆談をベースに実施し,それでも疎通が難しい場合は透明文字盤を使用する形で病棟と情報共有した.
【経過及び結果】術後7日目より離床指示あったが,端座位は最大介助で耐久性低下を認めた.そこで症例の訴えやバイタルに合わせて,ティルト・リクライニング車椅子座位で姿勢管理して離床を進めた.車椅子座位時は机上で上肢の使用も促した.術後14日目に立位開始,術後32日目に歩行器歩行開始した.術後45日目に流動食から食事開始し,環境調整と動作方法はOTが介入,食形態は言語聴覚士が調整した.音声合成アプリに術前の症例の声を家族が録音していたので症例がアプリを使用できるように,術後55日目にタブレット操作を追加した.術後84日目に多職種と症例,家族でカンファレンスを実施し,現在のADLと自宅で予測される介助動作の情報共有を行い自宅退院に向けて,看護師は吸引の家族指導を行い,OTは術後92日目に家屋訪問を実施した.家屋環境と介護サービスの調整が整い,術後108日目に自宅退院した.退院時に安静制限はなく,肩屈曲90/120,肘伸展-20/-15,GMTは肩関節3−/4,肘関節3−/4,股関節3+/4,膝関節3+/4, BI65点.コミュニケーション方法は,ホワイトボードやタブレットでの筆談や音声合成アプリの使用,また電気式人工喉頭で発声できるが導入については退院後の検討となった.
【考察】症例は術前の機能障害に加え,術後さらに身体機能とADLの低下を認めた.人,環境,作業の多面的な作業療法支援に合わせて,病棟生活で統一した介入ができたことも機能と活動の回復に繋がったと考える.自宅退院が困難と予測されたが,術後早期から多職種や家族と情報共有を進めたことで,症例と家族の希望に対して検討ができ,各職種の専門性や役割を活かして退院支援することができた.課題として主治医からのリハビリオーダーが術後であり,周術期での作業療法の必要性を今後提示し,当院で術前からOT介入を確立したい.
【症例紹介】80歳代前半の男性.入院1ヶ月前より嗄声や食物で喉に詰まる感じがあり他院受診し,右梨状窩に腫瘍性病変を認めた.同日,精査加療目的で当院耳鼻科に紹介受診する.下咽頭癌(SCC,T4bN2bM0)の診断で,下咽頭部分切除,喉頭全摘出,甲状腺右葉切除,両頸部郭清術を施行し,永久気管孔を造設した.術後3日目より作業療法(以下,OT)開始.入院前生活は妻と娘の3人暮らし,ADLは入浴動作以外自立,介護保険は要介護1でデイサービスと置き手すりレンタルを利用していた.自宅退院には食事動作と排泄動作の自立,永久気管孔で失声を生じるため入院中にコミュニケーション手段の検討を症例と家族が希望した.
【作業療法初回評価】安静度は背上げ45度,上肢挙上は肩屈曲90度までの指示であった.OT評価では,意識レベルはJCS2.ROMは肩屈曲80/90,肘伸展-20/-15.GMTは肩関節2/3,肘関節2/3,股関節3/4,膝関節3/4.既往の後遺症で特に右上下肢の運動麻痺と右手指屈曲拘縮を認めた.Barthel Index(以下,BI)0点.コミュニケーション方法は,背上げ45度の姿勢で書字は困難で,読唇やジェスチャー,腹部上で指筆談をベースに実施し,それでも疎通が難しい場合は透明文字盤を使用する形で病棟と情報共有した.
【経過及び結果】術後7日目より離床指示あったが,端座位は最大介助で耐久性低下を認めた.そこで症例の訴えやバイタルに合わせて,ティルト・リクライニング車椅子座位で姿勢管理して離床を進めた.車椅子座位時は机上で上肢の使用も促した.術後14日目に立位開始,術後32日目に歩行器歩行開始した.術後45日目に流動食から食事開始し,環境調整と動作方法はOTが介入,食形態は言語聴覚士が調整した.音声合成アプリに術前の症例の声を家族が録音していたので症例がアプリを使用できるように,術後55日目にタブレット操作を追加した.術後84日目に多職種と症例,家族でカンファレンスを実施し,現在のADLと自宅で予測される介助動作の情報共有を行い自宅退院に向けて,看護師は吸引の家族指導を行い,OTは術後92日目に家屋訪問を実施した.家屋環境と介護サービスの調整が整い,術後108日目に自宅退院した.退院時に安静制限はなく,肩屈曲90/120,肘伸展-20/-15,GMTは肩関節3−/4,肘関節3−/4,股関節3+/4,膝関節3+/4, BI65点.コミュニケーション方法は,ホワイトボードやタブレットでの筆談や音声合成アプリの使用,また電気式人工喉頭で発声できるが導入については退院後の検討となった.
【考察】症例は術前の機能障害に加え,術後さらに身体機能とADLの低下を認めた.人,環境,作業の多面的な作業療法支援に合わせて,病棟生活で統一した介入ができたことも機能と活動の回復に繋がったと考える.自宅退院が困難と予測されたが,術後早期から多職種や家族と情報共有を進めたことで,症例と家族の希望に対して検討ができ,各職種の専門性や役割を活かして退院支援することができた.課題として主治医からのリハビリオーダーが術後であり,周術期での作業療法の必要性を今後提示し,当院で術前からOT介入を確立したい.