第58回日本作業療法学会

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ポスター

がん

[PF-6] ポスター:がん 6 

Sat. Nov 9, 2024 4:30 PM - 5:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PF-6-2] 多発性骨髄腫の治療中に脳症と脱髄症候群を疑われた症例への作業療法の関わり

篠崎 美咲1, 岡田 侑香1, 山倉 敏之1, 金森 毅繁1, 伊佐地 隆2 (1.医療法人社団筑波記念会 筑波記念病院 リハビリテーション部, 2.医療法人社団筑波記念会 筑波記念病院 リハビリテーション科)

【はじめに】今回,多発性骨髄腫(MM)の治療中に意識障害や運動麻痺を認め,可逆性後頭葉白質脳症(PRES)と浸透圧性脱髄症候群(ODS)が鑑別診断に挙がった症例を経験した.ODSは後遺症を残さない良好な転帰は51.9%(松永恭輔ら,2022)と報告がある.PRESは悪性疾患を有するものなどは転帰不良因子となりえる(河北賢哉ら,2021)と報告がある.症例は合併症により全身状態不良となりMMの治療を中断したが,疾患の予後や臨床症状の変化を考慮して介入した結果,ADLが向上し治療再開に繋がったため報告する.尚,発表に際し本人の同意を得ている.【症例紹介】外来でMMの治療中の70代前半の男性.右利き.8人暮らしでADL,IADL自立.現病歴は自宅で意識障害などを認め当院入院.播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併し余命数日とされ,MMの治療は中断した.入院時から頭部MRIで病変は認めず,5病日目にDIC改善傾向となった.12病日目の頭部MRIで新規病変を認め,PRESかODSが疑われたが確定診断はつかなかった.【作業療法経過】11病日目にリハビリテーションの処方があり,12病日目に作業療法を開始.安静時より収縮期血圧160mmHg台と高値で,意識レベルはJCSII-10,表出は頷きのみ,運動麻痺は精査困難,基本動作とADLは全介助で,FIMは18/126点であった.先行文献からMMがあることで予後不良となる可能性があり,DICは改善傾向だが血圧高値で意識障害が遷延している点などから積極的に離床を進めて良いか迷う状況であった.そのため,刺激入力による意識障害やコミュニケーションの改善,実用手機能獲得を目標とした拘縮予防,血圧管理下での離床などの二次的合併症予防から開始した.15病日目,意識レベルはJCSI-3〜II-10,運動麻痺はBRS右上肢IV,手指IV-V,下肢IV,左上肢IV,手指IV-V,下肢IV,基本動作は中等度〜重度介助,整容動作で右上肢を補助手として使用可能になった.主治医が全身状態とADLを考慮するとMMの治療再開は難しいと判断したこと,PRESやODSは転帰良好な症例もあること,介入後数日で動作能力が改善した経過を踏まえ,MMの治療再開が可能な全身状態やADLの獲得を目標に,上肢機能練習やADL練習を進めた.意識障害の改善,座位での食事・整容動作能力の獲得を短期目標とし,19病日目に左上肢を補助手として,42病日目に両上肢を実用手として入浴以外のADLが見守りで可能となった.主治医がMMの治療再開が見込めると判断し,家族からも治療再開の希望があったため,1泊の自宅退院後に再入院してMMの治療を再開する方針となった.退院中は家族が見守り可能なため歩行,ADL見守りと目標を再設定し,ADL練習や環境調整,介助指導を行い,47病日目に1泊退院となった.【考察】MMは長期に渡り継続的な治療を求められるため合併症が生じた場合,常に治療再開を目標に関わることが必要である.今回MMの治療中に合併症を生じ介入方針に難渋したが,MMの治療が中断した背景やMMと合併症の予後,臨床症状などを考慮した介入により,再入院でのMMの治療再開に繋げることができた.このことから,早期から作業療法士が関わり,全身状態に応じた介入を継続していくことがMMの治療を継続するための一助になると考える.