[PF-6-3] 外来でのがん関連浮腫治療の継続可否を予測する因子
決定木分析を用いた検討
【はじめに】
2次性リンパ浮腫を含めたがん関連浮腫は,発症すると完治させることは困難とされている.そのため,患肢にあった適切な保存的治療を行い,継続的かつ専門的な治療介入を通して症状を安定させることが求められる.しかし,実際の臨床においては,様々な理由から外来での浮腫治療継続が難しい症例をよく経験する.そこで本研究では,がん関連浮腫治療を行う上での目標設定や症例に適したアプローチ方法の選択指標の設定を目的に,外来での浮腫治療開始後6ヵ月における治療継続可否に関連する因子について決定木分析を用いて検討した.
【対象・方法】
対象は,2022年6月から2023年5月までに当院リンパ浮腫外来を受診した,がん関連の2次性リンパ浮腫患者のうち実際に浮腫治療を開始した101例[年齢 62(51-73),性別 男性16/女性85]である.外来での浮腫治療を開始し,6ヵ月時点での治療継続可否で2群に分け,後方視的に解析を行った.なお,診療報酬においてリンパ浮腫の弾性着衣の更新が6ヵ月に1回と規定されているため,初回の更新時期である6ヵ月を本研究の可否基準の時期として設定した.調査項目は,初診時の基本属性(年齢,性別,BMI),がん関連浮腫要因(発症部位:上肢・下肢,発症側:片側・両側,国際リンパ学会分類),がん病期(遠隔転移の有無),リンパ浮腫疾患特異的QOL尺度(LYMQOL)の総合スコアについて収集した.統計学的分析は,継続可否の2群間で各評価項目における比較検討を行った.また,従属変数を浮腫治療外来6ヵ月時点の継続可否とし,独立変数を基本属性,がん関連浮腫要因,がん病期,LYMQOLの各項目をとした決定木分析(CART法)を実施した.決定木の停止基準として,階層は3層までとし分析前の群(親ノード)の最小事例数を10,分析後の群(子ノード)の最小事例数を5と定めた.なお,統計解析にはR-4.3.0を使用し,有意水準は5%未満とした.
【結果】
全対象者101例のうち,継続可能群は65例,継続不可群は36例であった.継続可否での2群間の比較において,遠隔転移の有無の項目に有意差を認めた.CART分析では,継続可否に影響する因子として,浮腫の発症側,BMI,遠隔転移の有無が選択され,階層は2層となった.本モデルでは,第1層で浮腫の発症側が第1選択肢となり,浮腫が片側の群では,第2層でBMI 23kg/m2を境に2群に分かれた.一方,浮腫が両側群では,第2層で遠隔転移の有無で2群に分かれた.
【考察】
外来でのがん関連浮腫治療を継続できる確率が高い組み合わせは,浮腫が片側に発症でBMIが23以上の場合であった.これらは,乳がん術後症例などが該当すると推測され,長期的な治療継続を想定した治療戦略でのアプローチが可能であると考えられた.一方,浮腫が両側に発症し,遠隔転移がある場合には治療継続が75.0%で難しい結果となった.両側発症例は,下肢浮腫や薬剤性浮腫,終末期浮腫である場合が多く,遠隔転移は生命予後の規定因子となる場合が多いため,それらが組み合わされると長期的な治療継続が難しいことを前提とした治療計画を立案する必要があると考えられた.外来でのがん関連浮腫治療においては,浮腫の発症側やBMI,遠隔転移の有無によって治療継続の可否を判断できる可能性が示唆された.
2次性リンパ浮腫を含めたがん関連浮腫は,発症すると完治させることは困難とされている.そのため,患肢にあった適切な保存的治療を行い,継続的かつ専門的な治療介入を通して症状を安定させることが求められる.しかし,実際の臨床においては,様々な理由から外来での浮腫治療継続が難しい症例をよく経験する.そこで本研究では,がん関連浮腫治療を行う上での目標設定や症例に適したアプローチ方法の選択指標の設定を目的に,外来での浮腫治療開始後6ヵ月における治療継続可否に関連する因子について決定木分析を用いて検討した.
【対象・方法】
対象は,2022年6月から2023年5月までに当院リンパ浮腫外来を受診した,がん関連の2次性リンパ浮腫患者のうち実際に浮腫治療を開始した101例[年齢 62(51-73),性別 男性16/女性85]である.外来での浮腫治療を開始し,6ヵ月時点での治療継続可否で2群に分け,後方視的に解析を行った.なお,診療報酬においてリンパ浮腫の弾性着衣の更新が6ヵ月に1回と規定されているため,初回の更新時期である6ヵ月を本研究の可否基準の時期として設定した.調査項目は,初診時の基本属性(年齢,性別,BMI),がん関連浮腫要因(発症部位:上肢・下肢,発症側:片側・両側,国際リンパ学会分類),がん病期(遠隔転移の有無),リンパ浮腫疾患特異的QOL尺度(LYMQOL)の総合スコアについて収集した.統計学的分析は,継続可否の2群間で各評価項目における比較検討を行った.また,従属変数を浮腫治療外来6ヵ月時点の継続可否とし,独立変数を基本属性,がん関連浮腫要因,がん病期,LYMQOLの各項目をとした決定木分析(CART法)を実施した.決定木の停止基準として,階層は3層までとし分析前の群(親ノード)の最小事例数を10,分析後の群(子ノード)の最小事例数を5と定めた.なお,統計解析にはR-4.3.0を使用し,有意水準は5%未満とした.
【結果】
全対象者101例のうち,継続可能群は65例,継続不可群は36例であった.継続可否での2群間の比較において,遠隔転移の有無の項目に有意差を認めた.CART分析では,継続可否に影響する因子として,浮腫の発症側,BMI,遠隔転移の有無が選択され,階層は2層となった.本モデルでは,第1層で浮腫の発症側が第1選択肢となり,浮腫が片側の群では,第2層でBMI 23kg/m2を境に2群に分かれた.一方,浮腫が両側群では,第2層で遠隔転移の有無で2群に分かれた.
【考察】
外来でのがん関連浮腫治療を継続できる確率が高い組み合わせは,浮腫が片側に発症でBMIが23以上の場合であった.これらは,乳がん術後症例などが該当すると推測され,長期的な治療継続を想定した治療戦略でのアプローチが可能であると考えられた.一方,浮腫が両側に発症し,遠隔転移がある場合には治療継続が75.0%で難しい結果となった.両側発症例は,下肢浮腫や薬剤性浮腫,終末期浮腫である場合が多く,遠隔転移は生命予後の規定因子となる場合が多いため,それらが組み合わされると長期的な治療継続が難しいことを前提とした治療計画を立案する必要があると考えられた.外来でのがん関連浮腫治療においては,浮腫の発症側やBMI,遠隔転移の有無によって治療継続の可否を判断できる可能性が示唆された.