第58回日本作業療法学会

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ポスター

がん

[PF-6] ポスター:がん 6 

Sat. Nov 9, 2024 4:30 PM - 5:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PF-6-4] 終末期がん患者のその人らしさを活かし生きがいの再獲得ができた園芸活動

小間坂 友祐, 中本 光, 森口 奈穂子 (社会医療法人 生長会 ベルピアノ病院 リハビリテーション室)

<目的>入院を機に倦怠感や意欲低下を起こし不活動となった終末期がん患者に対して,その人らしさに配慮し園芸活動の関わりを実施した.それにより園芸活動を生きがいとして亡くなる直前まで継続出来たため報告する.なお御本人には発表に際して了承を得た
Keyword:緩和ケア 園芸療法 意味のある作業
<症例紹介>80代女性 独居 X-2年マントル細胞リンパ腫と診断され治療が開始となった.その後も再発と治療を繰り返し,X年Y-1月主治医より胃への転移・頻脈・貧血と診断された.娘様からの当院への相談によって看取り目的での入院となった.
<作業療法評価>
ADL面ではFIM85点.歩行:自室内伝い歩き見守りレベルで可能であったが個室から出る様子はなかった.排泄動作においても見守りで実施可能であった.しかし倦怠感やめまいなどの症状から意欲的な発言・行動は見られなかった.認知機能面はMMSE22点FAB15点と言葉の流暢性や語想起・見当識の低下がみられた.淡路式園芸療法評価表(以下AHTAS)は21点Vitality Indexは7点であった.病前人助けや作品・作物などをプレゼントすることで承認欲求を満たしていた.また家族・友人とのコミュニケーションを取ることで所属・愛情欲求を満たしていたが入院を機に満たされずストレスを感じている様子がうかがえた.
<介入経過と結果>
入院当初は貧血や倦怠感めまい等ありADL見守りで個室内の生活を送っていたが他者との関わりも無くベッド上で外を眺めたりするのみであった.
興味関心チェックリストを用い,園芸に興味関心を強く持っていたため院内庭園に誘導した.その際に身体的な活動量を増加させ意欲の改善を図る目的で花や野菜の活動に参加を提案し了承された.花の作業や手入れに興味がわき耐久性は徐々に増加.トマトの収穫にも積極的に参加し,お世話になったスタッフなどに配り承認欲求を満たしていた.院内でのコミュニケーションの場の構築として顔なじみの患者を食事などの際にセッティングし園芸活動にも一緒に参加して頂くよう調整した.それにより病棟でもスタッフや他患者とのコミュニケーションがみられるようになった.家族には面会時に園芸の経過などを話すことが多く聞かれた.本人より外出の希望があり事前に家族とADLの介助量増減を共有したことで亡くなる直前約2週間前までの当院入院後55日間で合計3回の外出泊を実施出来た.その後緩やかに状態悪化し家族の見守る中当院で看取りとなった.
ADL面での一時的な改善FIM90点は見られたが腫瘍マーカー高値により倦怠感は増加していった.
認知機能面はMMSE21点FAB12点と言葉の流暢性や語想起見当識の低下などがみられたが淡路式園芸療法評価表(以下AHTAS)は22点Vitality Indexは9点と満足感・意欲の向上を認めた.
<考察>藪脇らはその人らしさと役割の関係から役割につながる作業がその人らしい大切な作業であることを認識し包括的に支援することが目標としている.斎藤らは人が主観的に重要であると認識できる役割を持ちその役割遂行において更なる内発的な動機付けがなされ未来に肯定的で発展的な具体的展望を持つことができるならばそれは生きがいと考えていいとしている 本症例は園芸活動で収穫した野菜などを他者に対して見せ与える事でコミュニーションをとりながら喜びを共有した.それにより役割としての内発的な動機付けを獲得し,生きがいとして定着化に至ったのではないかと考える.その人らしさを生かした作業を包括的に支援できたため園芸活動や外泊などを含む活動的な生活を亡くなる直前まで継続出来たのではないかと考える.