[PF-7-1] 乳がん患者における腋窩リンパ節郭清術後の1年間の経過報告
【はじめに】
腋窩リンパ節郭清術を伴う乳がんの術後で肩関節拘縮予防を目的としたリハビリテーション(以下,リハ)が行われるが,その長期経過についての報告は少ない.当院の乳がん術後リハは,退院後も外来にて一定期間継続することを特徴とする.今回,術前から術後1年間の経過を追跡したため報告する.
【対象】
2019年5月1日~2021年4月30日の期間で当院にて乳がん腋窩リンパ節郭清術前後を通してリハを実施した57名.
本研究は当院倫理員会の承認を得た上で,かつ本研究の趣旨を説明し同意・了承を得た者を対象とした.
【方法】
本研究では対象者において握力,HAND20,EQ-5D-5L,肩関節屈曲と外転の可動域を術前,退院時,術後2か月,術後3か月,術後1年で評価した.肩関節屈曲と外転可動域は端坐位での自動運動にて行った.
術後リハ内容は術翌日から肩関節を中心とした関節可動域訓練,自主練習指導,リンパ浮腫予防指導とした.退院後は乳腺甲状腺外科の診察日に合わせて月4-5/回,1-2単位/回,リハ内容は関節可動域訓練と自主練習指導とし,外来リハの終了基準は術前9割の関節可動域の獲得とした.
統計学処理はフリードマン検定を行い,ボーンフェローニ法を用いた.術前時点の状態を基準として,運動能力等の成績について各時点との比較を行った.有意水準は5%未満とした.
【結果】
握力とHAND20は術前と比し,退院時にのみ有意差がみられ, 握力の平均値は術前21.4㎏・退院時19.7㎏・術後1年21.3㎏,HAND20の平均点は術前9.09点・退院時15.44点・術後1年後9.15点であった.
肩関節屈曲可動域は術前と比較し,退院時,術後2か月,術後3か月で有意差がみられたが,術後1年には有意差はなく,屈曲可動域のそれぞれの時点での平均値は術前:159.6±16.93°,退院時:125.3±20.84°,術後2か月:147.7±16.34°,術後3か月:151.1±14.2°,術後1年:150.1±21.11°であった.一方で外転可動域は術前と比べるとすべての時期で有意に低下しており,外転可動域のそれぞれの時点で平均値は術前:170±16.56°,退院時:118.2±29.54°,術後2か月:152.0±22.58°,術後3か月:157.7±19.37°,術後1年後155.9±32.74°であった.
EQ-5D-5Lは術前と比べ,すべての時点で有意差は見られなかった.
【考察】
外来リハ終了後も自主練習の継続や日常生活で上肢の使用を促していたが,肩関節外転可動域は1年後でも回復の困難さを認めた.腋窩リンパ節郭清では,腋窩に皮切をし,リンパ節を周囲の脂肪組織と合わせて切除する.皮切による腋窩のひきつれ,軟部組織の損傷と瘢痕化により上肢の動きが制限される(村岡香織ら,2015)ため,より組織が伸長されやすい外転運動の角度の改善が乏しかったと考える.
当院では術後2~3か月程度で外来リハの終了基準としている術前9割の関節可動域の獲得となる対象者が多いが今回の結果から,より具体的な継続できる自主練習指導を行う必要があると考えられる.
腋窩リンパ節郭清術を伴う乳がんの術後で肩関節拘縮予防を目的としたリハビリテーション(以下,リハ)が行われるが,その長期経過についての報告は少ない.当院の乳がん術後リハは,退院後も外来にて一定期間継続することを特徴とする.今回,術前から術後1年間の経過を追跡したため報告する.
【対象】
2019年5月1日~2021年4月30日の期間で当院にて乳がん腋窩リンパ節郭清術前後を通してリハを実施した57名.
本研究は当院倫理員会の承認を得た上で,かつ本研究の趣旨を説明し同意・了承を得た者を対象とした.
【方法】
本研究では対象者において握力,HAND20,EQ-5D-5L,肩関節屈曲と外転の可動域を術前,退院時,術後2か月,術後3か月,術後1年で評価した.肩関節屈曲と外転可動域は端坐位での自動運動にて行った.
術後リハ内容は術翌日から肩関節を中心とした関節可動域訓練,自主練習指導,リンパ浮腫予防指導とした.退院後は乳腺甲状腺外科の診察日に合わせて月4-5/回,1-2単位/回,リハ内容は関節可動域訓練と自主練習指導とし,外来リハの終了基準は術前9割の関節可動域の獲得とした.
統計学処理はフリードマン検定を行い,ボーンフェローニ法を用いた.術前時点の状態を基準として,運動能力等の成績について各時点との比較を行った.有意水準は5%未満とした.
【結果】
握力とHAND20は術前と比し,退院時にのみ有意差がみられ, 握力の平均値は術前21.4㎏・退院時19.7㎏・術後1年21.3㎏,HAND20の平均点は術前9.09点・退院時15.44点・術後1年後9.15点であった.
肩関節屈曲可動域は術前と比較し,退院時,術後2か月,術後3か月で有意差がみられたが,術後1年には有意差はなく,屈曲可動域のそれぞれの時点での平均値は術前:159.6±16.93°,退院時:125.3±20.84°,術後2か月:147.7±16.34°,術後3か月:151.1±14.2°,術後1年:150.1±21.11°であった.一方で外転可動域は術前と比べるとすべての時期で有意に低下しており,外転可動域のそれぞれの時点で平均値は術前:170±16.56°,退院時:118.2±29.54°,術後2か月:152.0±22.58°,術後3か月:157.7±19.37°,術後1年後155.9±32.74°であった.
EQ-5D-5Lは術前と比べ,すべての時点で有意差は見られなかった.
【考察】
外来リハ終了後も自主練習の継続や日常生活で上肢の使用を促していたが,肩関節外転可動域は1年後でも回復の困難さを認めた.腋窩リンパ節郭清では,腋窩に皮切をし,リンパ節を周囲の脂肪組織と合わせて切除する.皮切による腋窩のひきつれ,軟部組織の損傷と瘢痕化により上肢の動きが制限される(村岡香織ら,2015)ため,より組織が伸長されやすい外転運動の角度の改善が乏しかったと考える.
当院では術後2~3か月程度で外来リハの終了基準としている術前9割の関節可動域の獲得となる対象者が多いが今回の結果から,より具体的な継続できる自主練習指導を行う必要があると考えられる.