[PF-7-3] アポクリン腺癌術後,関節可動域制限を認めた症例
【はじめに】アポクリン腺癌はアポクリン腺への分化を示す悪性腫瘍であり,希少がんとされている.好発部位は腋窩である.腋窩発生例は所属リンパ節が原発巣と近接しているため,リンパ節転移をきたしやすいと報告されており,早期のリンパ節郭清が有効であるとされている.今回,左腋窩のアポクリン腺癌の診断,治療のため2度にわたる手術が施行され,1度目の切除術の瘢痕がリンパ節郭清術に影響,肩関節の関節可動域(以下ROM)制限を引き起こした症例を担当する機会を得たため報告する.本報告に際して,本症例には説明し同意を得ている.
【事例紹介】60歳代女性.主婦.仕事は園芸関係,パートタイマーとして勤務.治療後は仕事の再開を希望.X−20年前より左腋窩部に瘢痕様病変あり,徐々に増大していた.切除を目的に形成外科を受診.Y−3月局所麻酔下で切除,生検が行われ,左腋窩アポクリン腺癌の診断となり乳腺外科に転科となった.左腋窩リンパ節に転移しており,X年Y月Z日全身麻酔にて左腋窩リンパ節郭清術が施行された.手術では左腋窩の手術瘢痕(約8cm)も含め広範囲な部分を紡錘状に切除された.Z+5日より肩関節拘縮予防,改善を目的に作業療法(以下OT)の開始となった.
【作業療法評価と経過】初回介入時,左腋窩にはドレーンが挿入されており,ROMは左肩関節屈曲110°,外転110°,最終域には創部の伸長痛(NRS7)が認められたほか,左肋間上腕神経領域である腋窩内側部に痺れを認めた.OTでは,左肩関節のROMの改善,拘縮予防を目的に机上ワイピング,棒体操等,自動でのROM運動,自主トレーニングの指導を実施した.恐怖心,防御性収縮を予防するため負荷量に留意して行い,自主トレーニングについても段階的に提示した.Z+8日にドレーンが抜去され,翌日には退院の運びとなったためOTの介入は4回で終了となった.退院時のROMは左肩関節屈曲120°外転110°となっていた.疼痛は著変ないものの,病棟内での日常生活動作(以下ADL)は自立していた.退院時は,自主トレーニング,手段的日常生活動作(以下IADL)の確認,リンパ浮腫予防のための指導を実施した.
【結果】自宅退院後の自主トレーニングの継続によりY+1カ月の時点で,ROMは左肩関節屈曲120°,外転115°と退院時と著変がなかったものの,自宅でのADL,IADL動作は自立となった.しかし,リーチ範囲の狭小化から背部の洗体の困難さを認めた.伸長痛についてはNRS2と改善を認め,リンパ浮腫等の予兆は認めていなかった.
【考察】アポクリン腺癌は乳がんに準じた治療が行われることが多いが,本症例の腋窩リンパ節郭清術は形成外科による手術瘢痕の切除も同時に行ったため,創部が大きく,皮膚切開の方向も異なっていた.そのため,疼痛が強くROMの改善に難渋した.退院時には疼痛が持続していたため2次的な障害のリスクも高い状態であった.しかし,自動運動を中心としたROM運動を行い,自主トレーニングの習慣化に繋げる介入を行った.また本人の状態に合わせたIADL動作の確認を行ったことで,疼痛に対し恐怖心を生むことなく,自宅での生活が再開できたと考えられる.がんのリハビリテーションは入院中のみの算定となり,今回の症例のように入院期間が短く十分なOTの介入が出来ず,退院後のリハビリや生活に不安を抱えたまま退院となる方も多い.そのため退院後に気軽に相談が出来るシステム作りを検討していきたい.がん患者リハビリテーション料が外来での算定も可能となることを期待する.
【事例紹介】60歳代女性.主婦.仕事は園芸関係,パートタイマーとして勤務.治療後は仕事の再開を希望.X−20年前より左腋窩部に瘢痕様病変あり,徐々に増大していた.切除を目的に形成外科を受診.Y−3月局所麻酔下で切除,生検が行われ,左腋窩アポクリン腺癌の診断となり乳腺外科に転科となった.左腋窩リンパ節に転移しており,X年Y月Z日全身麻酔にて左腋窩リンパ節郭清術が施行された.手術では左腋窩の手術瘢痕(約8cm)も含め広範囲な部分を紡錘状に切除された.Z+5日より肩関節拘縮予防,改善を目的に作業療法(以下OT)の開始となった.
【作業療法評価と経過】初回介入時,左腋窩にはドレーンが挿入されており,ROMは左肩関節屈曲110°,外転110°,最終域には創部の伸長痛(NRS7)が認められたほか,左肋間上腕神経領域である腋窩内側部に痺れを認めた.OTでは,左肩関節のROMの改善,拘縮予防を目的に机上ワイピング,棒体操等,自動でのROM運動,自主トレーニングの指導を実施した.恐怖心,防御性収縮を予防するため負荷量に留意して行い,自主トレーニングについても段階的に提示した.Z+8日にドレーンが抜去され,翌日には退院の運びとなったためOTの介入は4回で終了となった.退院時のROMは左肩関節屈曲120°外転110°となっていた.疼痛は著変ないものの,病棟内での日常生活動作(以下ADL)は自立していた.退院時は,自主トレーニング,手段的日常生活動作(以下IADL)の確認,リンパ浮腫予防のための指導を実施した.
【結果】自宅退院後の自主トレーニングの継続によりY+1カ月の時点で,ROMは左肩関節屈曲120°,外転115°と退院時と著変がなかったものの,自宅でのADL,IADL動作は自立となった.しかし,リーチ範囲の狭小化から背部の洗体の困難さを認めた.伸長痛についてはNRS2と改善を認め,リンパ浮腫等の予兆は認めていなかった.
【考察】アポクリン腺癌は乳がんに準じた治療が行われることが多いが,本症例の腋窩リンパ節郭清術は形成外科による手術瘢痕の切除も同時に行ったため,創部が大きく,皮膚切開の方向も異なっていた.そのため,疼痛が強くROMの改善に難渋した.退院時には疼痛が持続していたため2次的な障害のリスクも高い状態であった.しかし,自動運動を中心としたROM運動を行い,自主トレーニングの習慣化に繋げる介入を行った.また本人の状態に合わせたIADL動作の確認を行ったことで,疼痛に対し恐怖心を生むことなく,自宅での生活が再開できたと考えられる.がんのリハビリテーションは入院中のみの算定となり,今回の症例のように入院期間が短く十分なOTの介入が出来ず,退院後のリハビリや生活に不安を抱えたまま退院となる方も多い.そのため退院後に気軽に相談が出来るシステム作りを検討していきたい.がん患者リハビリテーション料が外来での算定も可能となることを期待する.