第58回日本作業療法学会

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ポスター

がん

[PF-8] ポスター:がん 8

2024年11月10日(日) 09:30 〜 10:30 ポスター会場 (大ホール)

[PF-8-4] 乳がん患者の術式と心理的要因との関連

心理的スクリーニング検査HADSを用いて

下門 範子, 瀧上 舞夏, 高橋 幸華子, 佐々木 里奈, 牛尾 篤史 (社会医療法人 北九州病院 北九州総合病院 リハビリテーション科)

【はじめに】日本人女性は乳がんの罹患率は高いが,進行程度が低い場合比較的予後は良好な癌である.しかし,術後に不安や抑うつ状態が認められ,入院直後においても34%が軽度以上の不安を,27%が軽度以上の抑うつ症状を呈していることが明らかとなり(竹内 賢/科学研究費助成事業データベース/2001),早期より作業療法の介入意義があると考える.今回,術前に術式によって精神状態に差があるかをhospital anxiety and depression scale(以下HADS)尺度を用いて検討を行った.
【方法】2022年6月から2023年11月に術前から介入可能であった67例(全例女性)平均年齢:58.65(±12.64).術式は乳房切除術群(以下切除群)39例 平均年齢:60.97±12.79,部分切除(以下部分群)28例 平均年齢55.43±12.21,腋窩郭清群(以下郭清群)27例 平均年齢56.58±12.37,センチネルリンパ節生検群(以下センチネル群)40例 平均年齢:59.8±13.03であった.入院期間平均9.85日であった.術前にHADSを検査し,乳房切除群と部分切除群,郭清群とセンチネル群の各2群間で,各術式で不安状態と抑うつ状態の比較検討を行った.統計学的検討は,Mann-Whitney U検定を用い,有意水準は 5% とした.HADSは不安や抑うつを評価する患者立脚型評価であり,奇数番号の合計点が8点以上は不安状態,偶数番号の合計点が11点以上は抑うつ状態となる.本研究に対し,対象者には同意を得て実施した.
【結果】HADS評価結果(不安状態8点以上/抑うつ状態11点以上)乳房切除群9例/3例,部分群10例/3例,郭清群8例/3例,センチネル群10例/6例に認められた.術式による検討では,乳房切除群(HADS不安/抑うつ)平均:5.77/5.26,部分切除群平均:5.93/6.39であり,両検査とも部分切除群の平均が高いが有意差は認められなかった.郭清群平均:5.70/4.19,センチネル群平均:5.93/6.78であり,両検査ともセンチネル群の平均が高く,抑うつ状態のみ有意差が認められた.
【考察】部分切除とセンチネルリンパ節生検症例は入院期間も術前後を含め4日間程度となりリハが介入しないこともある.そのため,術後の自主訓練方法や術前後の不安などを話す機会がないまま退院するケースも多い.今回有意差は認められなかったが,部分切除やセンチネル群の平均値が高く,不安や抑うつ状態も多く認められた.このことから喪失感や術中の追加手術,術後さらなる化学療法治療や放射線療法の追加など将来に対する不安が強いのではないかと考えた.
今回乳癌術前にHADSを用いて検討した結果,センチネル群で抑うつ傾向が高いことが明らかとなり,短い入院期間ではあるが,術前より精神的ケアを含めた介入の必要性が示唆された.