[PG-2-1] 免疫介在性壊死性ミオパチーを罹患した対象者への治療開始早期からの高負荷運動療法と動作指導を行った事例
【緒言】免疫介在性壊死性ミオパチーは筋病理学的に壊死・再生を主体とする特発性炎症性筋疾患である.従来,筋炎症状を有する事例の急性期では,積極的な運動療法は推奨されず,筋への負荷を考慮した動作指導がされてきた.しかし,近年,可及的早期に運動療法を開始する報告が散見され,本邦における多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン(2020)では「治療開始早期からのリハビリテーション開始は筋力回復,日常生活動作の改善に有効であると報告があり,有害とする報告はなく,施行することが望ましい(推奨度1)」と記載されている.ただし,運動療法への最適な負荷は明らかにはなっていない.
今回,免疫介在性壊死性ミオパチーによる筋炎症状と筋力低下を呈した事例に対し,膠原病リウマチ内科専門医との連携し,二次的な筋力低下を最小限にし早期の社会復帰を目指す目的で,介入早期からの高負荷運動療法を実施.約2ヶ月の入院を経て,筋力低下を抑制し,一定の改善を認め,自宅退院に繋げることが出来た.本事例に行った介入の経過と動作指導について,負荷量の設定・検討の面から考察を交え報告する.尚,発表に際し書面にて同意を得た.
【事例紹介】60歳代・女性.教員職退職.陳旧性心筋梗塞の既往あり.
【現病歴】発症約一年前から歩行時の疲労あり,徒歩10分の距離を1時間かけて移動されていた.歩行速度の低下とともに下肢を中心に全身筋力低下進行し,前医入院.67日後,精査・治療目的に当院へ転院,血清・筋生検にて免疫介在性壊死性ミオパチーの診断に至った.前医入院時点でCK8169,近位筋の筋力低下が出現あり,当院転院時はCK1499であった.
【作業療法経過】開始時,頚部屈筋,体幹筋,四肢近位筋に筋力低下を認め,各筋力MMT2であった.握力R10.3㎏/L13.6㎏,指腹つまみR3.2kg/L3.4㎏,膝伸展筋力(R/L):1回目8.8kgf/7.7kgf・2回目7.2kgf/8.3kgf,FIM76/126点(運動43/認知33)であった.上肢挙上,起立困難で移動は車いすを使用,排泄全般に介助を要し,Needsは「トイレと整髪を自分で行いたい」であった.介入前より主治医を交え負荷量の設定を検討,先行研究を参照し,上肢に対し“60%/最大筋力”のレジスタンス運動,且つ修正Borg Scale7程度の負荷を設定,重錘負荷5kgから開始,肩関節挙上時の代償動作が生じないよう留意した.下肢筋力負荷は,上記同程度を設定基準とし,有酸素運動としてリカンベントエルゴメーター30Wで30秒から開始,修正Borg Scaleを参照しインターバルを設定し実施.中断の基準とし,自覚症状としては筋痛症状,修正Borg Scale7以上となった場合,又は他覚的指標として採血CK値の上昇を認めた場合とし,適宜負荷を再調整することとした.また,可能となった動作については日常生活に汎化できるよう指導した.
【結果】開始14日後より,多少のCK値の上昇を認めたが,次第に筋力改善,ADL拡大した.退院時評価にて,近位筋MMT4,握力R19.0㎏/L19.7㎏,指腹つまみR3.6㎏/L3.2㎏,膝伸展筋力(R/L):1回目13.7kgf/12.7kgf・2回目14.8kgf/13.8kgf,FIM119/126点(運動84/認知35)段差昇降や屋外の歩行移動可能,一通りのIADLも遂行可能となった.
【考察】運動療法負荷量の設定とし,Varju(2003)は発症2~3週の筋炎患者に対し,最大反復回数の70~75%で筋力トレーニングを実施し,良好な結果を得た事例を報告.また,Nagaseら (2015)は,筋痛症状の乏しい筋炎患者に対し,より早期から高負荷での筋力トレーニングが有効である可能性を報告.本事例に対し,医師と療法士の双方の視点から筋炎症状増悪に留意し,負荷の漸増を行ったことで,可及的なADL動作の改善に繋がったと考える.
今回,免疫介在性壊死性ミオパチーによる筋炎症状と筋力低下を呈した事例に対し,膠原病リウマチ内科専門医との連携し,二次的な筋力低下を最小限にし早期の社会復帰を目指す目的で,介入早期からの高負荷運動療法を実施.約2ヶ月の入院を経て,筋力低下を抑制し,一定の改善を認め,自宅退院に繋げることが出来た.本事例に行った介入の経過と動作指導について,負荷量の設定・検討の面から考察を交え報告する.尚,発表に際し書面にて同意を得た.
【事例紹介】60歳代・女性.教員職退職.陳旧性心筋梗塞の既往あり.
【現病歴】発症約一年前から歩行時の疲労あり,徒歩10分の距離を1時間かけて移動されていた.歩行速度の低下とともに下肢を中心に全身筋力低下進行し,前医入院.67日後,精査・治療目的に当院へ転院,血清・筋生検にて免疫介在性壊死性ミオパチーの診断に至った.前医入院時点でCK8169,近位筋の筋力低下が出現あり,当院転院時はCK1499であった.
【作業療法経過】開始時,頚部屈筋,体幹筋,四肢近位筋に筋力低下を認め,各筋力MMT2であった.握力R10.3㎏/L13.6㎏,指腹つまみR3.2kg/L3.4㎏,膝伸展筋力(R/L):1回目8.8kgf/7.7kgf・2回目7.2kgf/8.3kgf,FIM76/126点(運動43/認知33)であった.上肢挙上,起立困難で移動は車いすを使用,排泄全般に介助を要し,Needsは「トイレと整髪を自分で行いたい」であった.介入前より主治医を交え負荷量の設定を検討,先行研究を参照し,上肢に対し“60%/最大筋力”のレジスタンス運動,且つ修正Borg Scale7程度の負荷を設定,重錘負荷5kgから開始,肩関節挙上時の代償動作が生じないよう留意した.下肢筋力負荷は,上記同程度を設定基準とし,有酸素運動としてリカンベントエルゴメーター30Wで30秒から開始,修正Borg Scaleを参照しインターバルを設定し実施.中断の基準とし,自覚症状としては筋痛症状,修正Borg Scale7以上となった場合,又は他覚的指標として採血CK値の上昇を認めた場合とし,適宜負荷を再調整することとした.また,可能となった動作については日常生活に汎化できるよう指導した.
【結果】開始14日後より,多少のCK値の上昇を認めたが,次第に筋力改善,ADL拡大した.退院時評価にて,近位筋MMT4,握力R19.0㎏/L19.7㎏,指腹つまみR3.6㎏/L3.2㎏,膝伸展筋力(R/L):1回目13.7kgf/12.7kgf・2回目14.8kgf/13.8kgf,FIM119/126点(運動84/認知35)段差昇降や屋外の歩行移動可能,一通りのIADLも遂行可能となった.
【考察】運動療法負荷量の設定とし,Varju(2003)は発症2~3週の筋炎患者に対し,最大反復回数の70~75%で筋力トレーニングを実施し,良好な結果を得た事例を報告.また,Nagaseら (2015)は,筋痛症状の乏しい筋炎患者に対し,より早期から高負荷での筋力トレーニングが有効である可能性を報告.本事例に対し,医師と療法士の双方の視点から筋炎症状増悪に留意し,負荷の漸増を行ったことで,可及的なADL動作の改善に繋がったと考える.