第58回日本作業療法学会

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ポスター

内科疾患

[PG-2] ポスター:内科疾患 2 

Sat. Nov 9, 2024 4:30 PM - 5:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PG-2-3] 超高齢化社会における糖尿病療養指導の現状と求められる作業療法支援の在り方

成田 雄一1, 藤崎 公達2, 毛利 悦子3, 宮川 倖実1, 馬場 玲子4 (1.医療法人 光陽会 関東病院 リハビリテーション科, 2.医療法人 光陽会 関東病院 糖尿病内科, 3.医療法人 光陽会 関東病院 栄養科, 4.医療法人 光陽会 関東病院 看護部)

【緒言】近年,医療技術の進歩により平均寿命が延長し超高齢化社会となっている.それに伴い内部障害を有する対象者は増加しており,その中でも糖尿病治療に関連する医療費増大も問題となっている.高齢化や罹患者の増加もあり罹病年数も長期化することで,下肢慢性創傷,認知症やうつ病の悪化とも関連し重篤化することも稀ではない.このような糖尿病の多種多様な合併症への対応に多くの作業療法士(以下OT)が苦慮している.今回,当院で教育入院を行った対象者の特性と超高齢化社会を踏まえた作業療法支援ついて報告する.なお,本演題発表に際し対象者及び家族への説明・同意を得ている.また,当院倫理審査委員会の承認を得た.
【糖尿病を取り巻く現状】厚生労働省の国民健康・栄養調査のデータで「糖尿病が強く疑われる者」は約1,000万人と推計され,平成9年(1977)以降増加している.また,「糖尿病の可能性を否定できない者」も約1,000万人と推計されており,今後も糖尿病を有する対象者が増加していくことが予測される.しかしながら,糖尿病診療におけるOTの介入については欧米では体系化された作業療法プロトコール(REAL Diabetes)の報告があり,本邦では当院の療養支援チームで作成した作業療法プロトコール(BEST Program)で教育入院から外来継続までを支援している.
【対象と方法】対象は2020年3月から2023年4月の間に糖尿病教育入院を行った9名.方法は,年齢,病型,罹患期間, HbAlc,合併症有病率,家族支援の有無,PAID,QOL(EQ-5D-5L)の傾向を調査した.
【結果】対象者9名の臨床背景は,男性4名,女性5名,平均年齢76.8歳.病型は1型糖尿病1例,2型糖尿病8例.罹病期間10.6年,HbAlc(NGSP値)9.8%,BMI 21.6kg/m2.合併症の有病率は,神経障害77.8%,網膜症22.2%,腎症44.4%,認知機能低下や精神疾患の合併は88.9%.家族支援が有りは33.3%,PAIDは35.5点と感情負担度が高く,QOLは0.608と低い.以前の当院で行った先行調査結果よりも全ての数値が高く,特に家族支援の減少し,認知機能低下や精神疾患の合併割合が高くなっている.
【療養継続における心理的問題】対象者の高齢化によって合併症が進行していることも多く,認知機能低下や精神疾患の影響により食事,運動,服薬やインスリン注射など,新たな生活パターンを再構築に難渋することになる.行動変容には患者心理,医療従事者や家族支援がより重要となる.療養継続に求められるのは単に生活様式の変容ではなく,地域包括的視点を持った「対象者と共に生き方を変容すること」への視点が重要である.
【糖尿病療養指導におけるOTの役割】糖尿病診療チーム構成においてOTは配置されていないことが多い.糖尿病診療におけるOTの担うべき役割や専門性について多職種への発信が乏しい現状であるが,チームの一員としての役割を担っている.糖尿病療養指導における従来の指導は,知識教授が重視されており対象者は治療を遵守すると考えられていた.しかし,知識のみでは行動変容の十分条件にはならず情報と知識に基づく心理行動学的方法での作業療法支援が必要である.
【結語】超高齢化者は様々な病状や要因があり治療継続に難渋することが多いが,OTの全人的な支援スキルを活かし,治療目標が明確化される.対象者が人生の楽しみや生きがいに気付き,モチベーションを高め行動変容を促すことによって療養指導の効果を高めることが出来るため,今後も糖尿病療養指導におけるOT介入の標準化を築けるようにしていきたい.