[PG-3-1] 透析時運動指導等の有効性と今後の課題
当院での実践報告を通して
【緒言】
上月は高齢の慢性腎臓病(以下,CKD)患者ではサルコペニア・フレイルへの対策が不可欠であり,運動療法が腎臓リハビリテーション(以下,腎リハ)の主要な構成因子として考えられるようになったと述べている.腎リハガイドラインによると,透析患者への運動療法は「運動耐容能,歩行機能,QOL の改善効果が示唆されるため行うことを推奨する(grade1B)」とされている.とりわけ,2022年度の診療報酬改定では透析時運動指導等加算が新設され,透析患者に対する運動の必要性を裏付けるものとなっているが,制度導入初期でもあり透析時運動指導等(以下,運動指導)に関する実践報告や有効性についての報告は少ない.
【目的】
当院で実施した運動指導について実践報告し,その有効性について検討すると共に今後の課題を明らかにすることである.本研究は当院倫理委員会の承認を得ている.
【対象】
2023年3月~11月に当院で運動指導を実施した患者14名(男性9名,女性5名,平均年齢75.9±8.3歳)を対象とした.外来維持透析日に約20分間の運動指導を行い,介入期間は90日間とした.
【方法】
調査項目は,運動機能評価として大腿四頭筋筋力評価・非シャント側の握力評価・立ち上がりテスト・Timed Up&Go Test(以下,TUG)を実施し,フレイル度の評価としては基本チェックリスト(厚生労働省作成)を使用したアンケート調査を施行.さらに血液データとして,透析前のアルブミン・BUN・クレアチニン値を調査した.各調査項目を運動指導の介入開始時と介入期間終了時で比較検討した.統計処理はWilcoxonの符号付順位和検定を用い,有意水準は5%未満とした.
【結果】
介入期間終了時に有意な改善を認めた項目は,大腿四頭筋筋力(p<0.05),立ち上がりテスト(p<0.05),TUG(p<0.01)であった.握力,フレイル度,血液データについては有意差を認めなかった.
【考察】
今回,透析患者への運動指導において,運動機能評価では握力を除いて一定の効果を確認することができた.対象者の運動能力やADL状況を総合的に勘案した上で,ストレッチやレジスタンストレーニング等を複合的に組み合わせ,運動負荷に注意しながらプログラムを随時更新した.さらに,運動定着のため自宅等での自主訓練メニューを提案し,運動指導時にフィードバックを行った事で限られた時間の中で効果的な運動指導ができたと考える.
一方,フレイル度の評価や血液データについては有意差を認めなかった.黒住はサルコペニアやフレイル,protein-energy wastingの予防・改善には運動療法と栄養管理の併用が重要と述べており,上月は腎リハにおける効果の一つとして透析効率の改善を挙げている.今後,フレイルの悪循環を予防・改善するためにも,透析患者に対しては様々な職種からの持続的なサポートが求められる.さらに,運動指導期間中に得られた身体機能の改善を持続しADLに汎化させるため,非透析日における運動習慣や工夫されたADL・IADLの定着を図ることが重要である.本運動指導は90日間の関わりが可能であることから,運動指導介入期間を通して他職種連携を深め,終了後もシームレスで包括的な社会的サポートを継続していく必要性が高いと思われた.
上月は高齢の慢性腎臓病(以下,CKD)患者ではサルコペニア・フレイルへの対策が不可欠であり,運動療法が腎臓リハビリテーション(以下,腎リハ)の主要な構成因子として考えられるようになったと述べている.腎リハガイドラインによると,透析患者への運動療法は「運動耐容能,歩行機能,QOL の改善効果が示唆されるため行うことを推奨する(grade1B)」とされている.とりわけ,2022年度の診療報酬改定では透析時運動指導等加算が新設され,透析患者に対する運動の必要性を裏付けるものとなっているが,制度導入初期でもあり透析時運動指導等(以下,運動指導)に関する実践報告や有効性についての報告は少ない.
【目的】
当院で実施した運動指導について実践報告し,その有効性について検討すると共に今後の課題を明らかにすることである.本研究は当院倫理委員会の承認を得ている.
【対象】
2023年3月~11月に当院で運動指導を実施した患者14名(男性9名,女性5名,平均年齢75.9±8.3歳)を対象とした.外来維持透析日に約20分間の運動指導を行い,介入期間は90日間とした.
【方法】
調査項目は,運動機能評価として大腿四頭筋筋力評価・非シャント側の握力評価・立ち上がりテスト・Timed Up&Go Test(以下,TUG)を実施し,フレイル度の評価としては基本チェックリスト(厚生労働省作成)を使用したアンケート調査を施行.さらに血液データとして,透析前のアルブミン・BUN・クレアチニン値を調査した.各調査項目を運動指導の介入開始時と介入期間終了時で比較検討した.統計処理はWilcoxonの符号付順位和検定を用い,有意水準は5%未満とした.
【結果】
介入期間終了時に有意な改善を認めた項目は,大腿四頭筋筋力(p<0.05),立ち上がりテスト(p<0.05),TUG(p<0.01)であった.握力,フレイル度,血液データについては有意差を認めなかった.
【考察】
今回,透析患者への運動指導において,運動機能評価では握力を除いて一定の効果を確認することができた.対象者の運動能力やADL状況を総合的に勘案した上で,ストレッチやレジスタンストレーニング等を複合的に組み合わせ,運動負荷に注意しながらプログラムを随時更新した.さらに,運動定着のため自宅等での自主訓練メニューを提案し,運動指導時にフィードバックを行った事で限られた時間の中で効果的な運動指導ができたと考える.
一方,フレイル度の評価や血液データについては有意差を認めなかった.黒住はサルコペニアやフレイル,protein-energy wastingの予防・改善には運動療法と栄養管理の併用が重要と述べており,上月は腎リハにおける効果の一つとして透析効率の改善を挙げている.今後,フレイルの悪循環を予防・改善するためにも,透析患者に対しては様々な職種からの持続的なサポートが求められる.さらに,運動指導期間中に得られた身体機能の改善を持続しADLに汎化させるため,非透析日における運動習慣や工夫されたADL・IADLの定着を図ることが重要である.本運動指導は90日間の関わりが可能であることから,運動指導介入期間を通して他職種連携を深め,終了後もシームレスで包括的な社会的サポートを継続していく必要性が高いと思われた.