[PG-3-3] 複合疾患を有する患者への目標設定にて排泄動作獲得を目指した事例
【はじめに】高齢患者は複数の疾患を患っている事が多く,疾患指向のケアから目標指向のケアへの移行が推奨されている(Tinetti, 2016).また,間質性肺炎に対する目標指向のケアの報告は少ない(米嶋ら,2022).今回,高齢の間質性肺炎患者を主体に複合疾患を有する患者に対し目標設定を行い介入したため報告する.
【事例紹介】90歳代,女性,Barter Index(BI)60点(トイレBI10点).自宅にてSpO₂が80%台となり当院へ搬送され,酸素療法3L/minにてSpO₂93%であった.間質性肺炎の診断で同日入院となった(0病日).既往歴は両変形性膝関節症,不眠症であった.入院時K-L6:360U/mL,SP-D:598ng/mLであった.1病日から理学療法,作業療法を開始し,102病日に自宅退院となった.なお,本報告は本人に口頭にて説明し同意を得た.
【経過】目標未設定期:酸素療法2L/minにて安静時SpO₂94~96%であった.保存的加療が奏功し16病日に酸素療法は終了.22病日にはSpO₂96%で排泄動作軽介助となった.排泄コントロール困難であり,看護師に時間誘導を依頼したが本人の拒否が多く,ポータブルトイレ使用回数(使用回数)は週1~2回に留まった.
目標設定期:32病日の時点で介入の目標が不明確でありAid For Decision-making in Occupation Choice2(ADOC2)を使用し,目標設定を行った.本人,家族供に退院後,排泄の自立を希望したため,短期目標は時間誘導で介助下での排泄の実施,長期目標を自宅での排泄動作自立とした.その際の排泄動作に対する満足度は2,実行度は3であった.本人から「家族に言われたので頑張ります」と発言していた.練習は排泄動作訓練を継続した.
目標未達成期:39~46病日の使用回数は1回/週,満足度1,実行度2.全身の疲労や膝関節周囲の疼痛にて使用回数は増加せず,「あまりトイレに行ってないから」との理由で,前週に比べ満足度・実行度は低下を認めた.作業療法では膝痛緩和目的に膝関節周囲筋のストレッチと筋力強化練習,膝サポーターを作成した.
目標改善期:47~54病日の使用回数2回/週,満足度2,実行度3.膝関節周囲の疼痛軽減に伴い立位動作の安定や使用回数が増加に対し正のフィードバックを行った.ただし,「眠れなくてだるい」との理由で排泄の時間誘導に時折拒否があった.そこで,排泄動作練習の頻度を増やし,フィードバックの適宜行った.また,家族と直接話したことで排泄に関する前向きな発言も聞かれるようになり,55~62病日は使用回数4回/週,満足度3,実行度3となった.
目標低下期:排泄に対して膝関節周囲の疼痛に伴う睡眠不足で「寝不足でだるい」と時間誘導に対して拒否が多くなり,69病日には使用回数1回/週,満足度2,実行度2まで低下を認めた.また,「家族にトイレが出来るようにと言われたんですけどね」と家族の希望を理解している発言も聞かれた.そのため,膝痛緩和のため再度,膝関節周囲筋のストレッチ,筋力強化練習を重点的に行った.
【結果】69病日のBarthel Index60点(トイレBI5点).69病日以降は排泄コントロール困難となり排泄動作の自立には至らなかった.
【考察】使用回数,満足度,実行度が改善した理由は,原疾患の治療の奏功,膝関節の疼痛緩和,家族からの励ましが要因であると考えられる.
一方で,使用回数,満足度,実行度が低下した理由は,目標の達成感改善には疾患の治療よりは本人の目標に対する自信が重要(Kluit, 2022)とされており,目標に対する自信の改善に繋がっていなかった可能性がある.複数の慢性疾患を有する患者の目標達成のためには,原疾患に対する介入だけでなく,本人の自信を向上させる介入も必要であったと考える.
【事例紹介】90歳代,女性,Barter Index(BI)60点(トイレBI10点).自宅にてSpO₂が80%台となり当院へ搬送され,酸素療法3L/minにてSpO₂93%であった.間質性肺炎の診断で同日入院となった(0病日).既往歴は両変形性膝関節症,不眠症であった.入院時K-L6:360U/mL,SP-D:598ng/mLであった.1病日から理学療法,作業療法を開始し,102病日に自宅退院となった.なお,本報告は本人に口頭にて説明し同意を得た.
【経過】目標未設定期:酸素療法2L/minにて安静時SpO₂94~96%であった.保存的加療が奏功し16病日に酸素療法は終了.22病日にはSpO₂96%で排泄動作軽介助となった.排泄コントロール困難であり,看護師に時間誘導を依頼したが本人の拒否が多く,ポータブルトイレ使用回数(使用回数)は週1~2回に留まった.
目標設定期:32病日の時点で介入の目標が不明確でありAid For Decision-making in Occupation Choice2(ADOC2)を使用し,目標設定を行った.本人,家族供に退院後,排泄の自立を希望したため,短期目標は時間誘導で介助下での排泄の実施,長期目標を自宅での排泄動作自立とした.その際の排泄動作に対する満足度は2,実行度は3であった.本人から「家族に言われたので頑張ります」と発言していた.練習は排泄動作訓練を継続した.
目標未達成期:39~46病日の使用回数は1回/週,満足度1,実行度2.全身の疲労や膝関節周囲の疼痛にて使用回数は増加せず,「あまりトイレに行ってないから」との理由で,前週に比べ満足度・実行度は低下を認めた.作業療法では膝痛緩和目的に膝関節周囲筋のストレッチと筋力強化練習,膝サポーターを作成した.
目標改善期:47~54病日の使用回数2回/週,満足度2,実行度3.膝関節周囲の疼痛軽減に伴い立位動作の安定や使用回数が増加に対し正のフィードバックを行った.ただし,「眠れなくてだるい」との理由で排泄の時間誘導に時折拒否があった.そこで,排泄動作練習の頻度を増やし,フィードバックの適宜行った.また,家族と直接話したことで排泄に関する前向きな発言も聞かれるようになり,55~62病日は使用回数4回/週,満足度3,実行度3となった.
目標低下期:排泄に対して膝関節周囲の疼痛に伴う睡眠不足で「寝不足でだるい」と時間誘導に対して拒否が多くなり,69病日には使用回数1回/週,満足度2,実行度2まで低下を認めた.また,「家族にトイレが出来るようにと言われたんですけどね」と家族の希望を理解している発言も聞かれた.そのため,膝痛緩和のため再度,膝関節周囲筋のストレッチ,筋力強化練習を重点的に行った.
【結果】69病日のBarthel Index60点(トイレBI5点).69病日以降は排泄コントロール困難となり排泄動作の自立には至らなかった.
【考察】使用回数,満足度,実行度が改善した理由は,原疾患の治療の奏功,膝関節の疼痛緩和,家族からの励ましが要因であると考えられる.
一方で,使用回数,満足度,実行度が低下した理由は,目標の達成感改善には疾患の治療よりは本人の目標に対する自信が重要(Kluit, 2022)とされており,目標に対する自信の改善に繋がっていなかった可能性がある.複数の慢性疾患を有する患者の目標達成のためには,原疾患に対する介入だけでなく,本人の自信を向上させる介入も必要であったと考える.