[PH-1-2] 当院アルコール家族研修会参加者のニーズ調査
"【はじめに】
アルコール依存症(以下AL症)は,家族ぐるみの病であり,本人の回復とともに家族の回復も重要といわれている.当院は,アルコール依存症拠点機関であり,AL症者の治療とともに家族研修会を実施している.月1回4ヶ月を1クールとし,内容は前半講義(疾患,回復,心理,検査,栄養,薬剤)後半は家族ミーティングを行っている.家族にも回復のステージがあるが,本研究では当院の家族研修会に参加される家族の傾向やニーズを理解することを目的の調査をした.また,ニーズをもとに今後の家族支援を考察した.
【対象と方法】
対象は,当院家族研修会参加家族に書面と口頭での説明に対して同意を得られたものとし,本研究は,当院の倫理審査の承認を得て実施した.実施期間は令和4年12月~令和6年1月で,独自に作成したアンケート用紙を用いて行った.家族のニーズや傾向については5件法と複数回答,家族の夢と希望について自由回答法で聴取した.
【結果】
研究参加者は25名で,年齢は20代~70代,AL症者との関係は子・配偶者・兄弟・親で半数は同居であった.AL症者の治療期間は,2ヶ月以内が36%・6~12ヶ月が20%・1年以上が8%・未受診が4%・未回答28%であった.
アンケート内容について,『AL症者にふりまわされている』は,思う・やや思うが80%.『家族自身が自分自身のことを大切にできている』は,思う・やや思うが52%・どちらともいえないが32%.『家族が思いや希望を適切に伝えられている』は,思わない・あまり思わないが45%・どちらともいえないが24%.『コミュニケーションスキルを向上したい』は,思う・やや思うは88%,『家族自身の生活を豊かにしたい』は,100%が思う・やや思うと返答した.
『家族の夢と希望』については,(家族自身の)健康・平常心・笑顔,(AL症者の)生活リズム・回復・治癒,(家族での)笑顔・健康・外出・長生き・心の平和とあった.『家族研修会に求めるもの』は,疾患の勉強・AL症者との関わり方・何でも話せる場所・病院とのつながり,『AL症者の心配事』は,こころの健康・身体の健康・関わり方・経済的なこと,『家族の困りごと』は関わり方・声のかけ方・こころの不調が上位にあがった.
【考察】
当院研修会参加者はAL症者が医療に繋がっているものの,初診から1年未満が多く,80%の方が現状でもAL患者にふりまわされていると返答した.AL症者の治療と合わせて家族の疾患理解やコミュニケーションスキルの課題が考えられ,それらは家族自身も感じていることが分かった.コミュニケーションスキルを高めることは問題や対立を解決する能力を高めお互いの理解を深めることにつながる(H・Gローゼン2021)といわれており,それらのスキル向上の取り組みは必要と考える.
一方,参加家族の100%が自身の生活を豊かにしたいと回答しているものの,家族自身の困りごとにこころの不調が上位にあがったことと,家族の夢と希望の自由回答にも心身の健康も上位にあがったが家族の具体的な活動参加の回答がなかった.これらより,家族の健康・豊かさのために作業療法(人・環境・作業)の観点で考え,人・環境のみならず家族の作業に対してのアセスメント・アプローチの可能性についても今後の課題と考えた.
【家族支援の展望】
①家族研修会にコミュニケーションスキルと家族の豊かさについての内容の組み込み
②個別家族支援プログラム(CRAFT)を2023年7月スタート
③AL症者家族の作業に焦点を当てた調査研究とアプローチの検討"
アルコール依存症(以下AL症)は,家族ぐるみの病であり,本人の回復とともに家族の回復も重要といわれている.当院は,アルコール依存症拠点機関であり,AL症者の治療とともに家族研修会を実施している.月1回4ヶ月を1クールとし,内容は前半講義(疾患,回復,心理,検査,栄養,薬剤)後半は家族ミーティングを行っている.家族にも回復のステージがあるが,本研究では当院の家族研修会に参加される家族の傾向やニーズを理解することを目的の調査をした.また,ニーズをもとに今後の家族支援を考察した.
【対象と方法】
対象は,当院家族研修会参加家族に書面と口頭での説明に対して同意を得られたものとし,本研究は,当院の倫理審査の承認を得て実施した.実施期間は令和4年12月~令和6年1月で,独自に作成したアンケート用紙を用いて行った.家族のニーズや傾向については5件法と複数回答,家族の夢と希望について自由回答法で聴取した.
【結果】
研究参加者は25名で,年齢は20代~70代,AL症者との関係は子・配偶者・兄弟・親で半数は同居であった.AL症者の治療期間は,2ヶ月以内が36%・6~12ヶ月が20%・1年以上が8%・未受診が4%・未回答28%であった.
アンケート内容について,『AL症者にふりまわされている』は,思う・やや思うが80%.『家族自身が自分自身のことを大切にできている』は,思う・やや思うが52%・どちらともいえないが32%.『家族が思いや希望を適切に伝えられている』は,思わない・あまり思わないが45%・どちらともいえないが24%.『コミュニケーションスキルを向上したい』は,思う・やや思うは88%,『家族自身の生活を豊かにしたい』は,100%が思う・やや思うと返答した.
『家族の夢と希望』については,(家族自身の)健康・平常心・笑顔,(AL症者の)生活リズム・回復・治癒,(家族での)笑顔・健康・外出・長生き・心の平和とあった.『家族研修会に求めるもの』は,疾患の勉強・AL症者との関わり方・何でも話せる場所・病院とのつながり,『AL症者の心配事』は,こころの健康・身体の健康・関わり方・経済的なこと,『家族の困りごと』は関わり方・声のかけ方・こころの不調が上位にあがった.
【考察】
当院研修会参加者はAL症者が医療に繋がっているものの,初診から1年未満が多く,80%の方が現状でもAL患者にふりまわされていると返答した.AL症者の治療と合わせて家族の疾患理解やコミュニケーションスキルの課題が考えられ,それらは家族自身も感じていることが分かった.コミュニケーションスキルを高めることは問題や対立を解決する能力を高めお互いの理解を深めることにつながる(H・Gローゼン2021)といわれており,それらのスキル向上の取り組みは必要と考える.
一方,参加家族の100%が自身の生活を豊かにしたいと回答しているものの,家族自身の困りごとにこころの不調が上位にあがったことと,家族の夢と希望の自由回答にも心身の健康も上位にあがったが家族の具体的な活動参加の回答がなかった.これらより,家族の健康・豊かさのために作業療法(人・環境・作業)の観点で考え,人・環境のみならず家族の作業に対してのアセスメント・アプローチの可能性についても今後の課題と考えた.
【家族支援の展望】
①家族研修会にコミュニケーションスキルと家族の豊かさについての内容の組み込み
②個別家族支援プログラム(CRAFT)を2023年7月スタート
③AL症者家族の作業に焦点を当てた調査研究とアプローチの検討"