[PH-2-3] 森田療法を背景としたリワークの実践により自分らしい働き方に繋がった一事例
【はじめに】
当リワークでは,森田療法を背景とした心理教育を軸に,作業療法に基づくプログラムやスタッフとの個別面談,利用者同士の交流を通して,復職・再就職とその先の自分らしい生き方の実現を目指している.今回,2度のリワーク利用を通して自身の傾向と折り合いをつけ,自分らしい働き方に繋がった事例について報告する.
【目的】
本発表の目的は,森田療法を背景とした作業療法に基づくリワークプログラムの成果を検討することである.なお,発表に際して本人より同意を得ている.
【事例紹介】
A氏 40歳代前半女性 医療系専門職主任 診断名:反復性うつ病 趣味:旅行
X-5年,昇任を契機に不慣れな業務や残業の増加,人間関係のストレスで不調を呈し,X-4年5月よりBメンタルクリニック通院.症状の悪化に伴い2度の休職.現職復帰を目指し,リワーク利用.
X-4年6月より初回の休職,主治医の勧めにてX-3年1月よりリワーク利用(2ヶ月半)
X-1年10月より2回目の休職,本人希望にてX年4月よりリワーク再利用(5ヶ月)
【経過】
〈初回利用時〉評価:言動は年相応で落ち着いた印象.他利用者との交流はある一方で,意図的に心理的距離を置く様子あり.症状は落ち着き,生活習慣・体力面も回復したが,仕事の役割を担うことに自信が無いと語る.実践:面談にて「不安がありながらも働ける」ことを目標に設定.プログラム参加を通して「医療職としてのプライド」から成る思考の癖に気付いた.それらは無くせるものではなく,折り合いをつけていく必要性を共有し,対策の検討と復帰後に振り返られる形での整理を促した.復帰時には意欲・自信共に回復し,傾向と対策を記した虎の巻(小冊子)を持参した.復帰後,順調に経過している旨の手紙が届く.一方で,復職後フォローの会や面談への来所は無かった.
〈2回目利用時〉評価:前回より力が抜けた印象.他利用者へ自ら話しかける場面や自己開示が増えた.前回復職後について,「もう大丈夫」と虎の巻も見返さなくなり,いつの間にかまた「頑張りすぎ」ていたと振り返る.実践:面談にて,自己と他者,仕事と生活等の境界が曖昧になりやすく,必要以上に「頑張りすぎ」る傾向を共有.グループワークを中心に境界の持ち方や力の抜き方等を検討・実践するよう促すと共に,面談にて結果を再検討した.復職時には役割を担う意欲を持つ一方で,「いい意味で病人であることを忘れずにいたい」と話し,復職後の定期的な面談を設定した.
【結果】
復職後,月1回程度の面談のほか不定期で復職後フォローの会へも参加し,日々の振り返りやメンテナンスを行いながら生活習慣・体調を維持して経過.仕事への意欲はありつつも力みすぎることなく,必要に応じて上司への相談や部下への分担を行いながら,主任としての役割を全うしている.
【考察】
今回A氏は,2度のリワーク利用で自身の生きにくさに繋がっている傾向を発見した.これらを変えるのではなく「あるがまま」に,折り合いをつけながら生活すべく対策を検討し実践した結果,意欲が賦活され,自身に合った働き方の体現と仕事の役割を中心に習慣化された生活に結びついたと考える.森田療法では,自然な感情である「不安」はそのままに,その裏にある生の欲望を発揮すべく,建設的な行動を促す.その為には,外的な事実に手を着け,その瞬間を味わい尽くすことが重要とされる(山田,2018).この姿勢は作業療法との親和性も高く,その効果を高める一助となり得る.
当リワークでは,森田療法を背景とした心理教育を軸に,作業療法に基づくプログラムやスタッフとの個別面談,利用者同士の交流を通して,復職・再就職とその先の自分らしい生き方の実現を目指している.今回,2度のリワーク利用を通して自身の傾向と折り合いをつけ,自分らしい働き方に繋がった事例について報告する.
【目的】
本発表の目的は,森田療法を背景とした作業療法に基づくリワークプログラムの成果を検討することである.なお,発表に際して本人より同意を得ている.
【事例紹介】
A氏 40歳代前半女性 医療系専門職主任 診断名:反復性うつ病 趣味:旅行
X-5年,昇任を契機に不慣れな業務や残業の増加,人間関係のストレスで不調を呈し,X-4年5月よりBメンタルクリニック通院.症状の悪化に伴い2度の休職.現職復帰を目指し,リワーク利用.
X-4年6月より初回の休職,主治医の勧めにてX-3年1月よりリワーク利用(2ヶ月半)
X-1年10月より2回目の休職,本人希望にてX年4月よりリワーク再利用(5ヶ月)
【経過】
〈初回利用時〉評価:言動は年相応で落ち着いた印象.他利用者との交流はある一方で,意図的に心理的距離を置く様子あり.症状は落ち着き,生活習慣・体力面も回復したが,仕事の役割を担うことに自信が無いと語る.実践:面談にて「不安がありながらも働ける」ことを目標に設定.プログラム参加を通して「医療職としてのプライド」から成る思考の癖に気付いた.それらは無くせるものではなく,折り合いをつけていく必要性を共有し,対策の検討と復帰後に振り返られる形での整理を促した.復帰時には意欲・自信共に回復し,傾向と対策を記した虎の巻(小冊子)を持参した.復帰後,順調に経過している旨の手紙が届く.一方で,復職後フォローの会や面談への来所は無かった.
〈2回目利用時〉評価:前回より力が抜けた印象.他利用者へ自ら話しかける場面や自己開示が増えた.前回復職後について,「もう大丈夫」と虎の巻も見返さなくなり,いつの間にかまた「頑張りすぎ」ていたと振り返る.実践:面談にて,自己と他者,仕事と生活等の境界が曖昧になりやすく,必要以上に「頑張りすぎ」る傾向を共有.グループワークを中心に境界の持ち方や力の抜き方等を検討・実践するよう促すと共に,面談にて結果を再検討した.復職時には役割を担う意欲を持つ一方で,「いい意味で病人であることを忘れずにいたい」と話し,復職後の定期的な面談を設定した.
【結果】
復職後,月1回程度の面談のほか不定期で復職後フォローの会へも参加し,日々の振り返りやメンテナンスを行いながら生活習慣・体調を維持して経過.仕事への意欲はありつつも力みすぎることなく,必要に応じて上司への相談や部下への分担を行いながら,主任としての役割を全うしている.
【考察】
今回A氏は,2度のリワーク利用で自身の生きにくさに繋がっている傾向を発見した.これらを変えるのではなく「あるがまま」に,折り合いをつけながら生活すべく対策を検討し実践した結果,意欲が賦活され,自身に合った働き方の体現と仕事の役割を中心に習慣化された生活に結びついたと考える.森田療法では,自然な感情である「不安」はそのままに,その裏にある生の欲望を発揮すべく,建設的な行動を促す.その為には,外的な事実に手を着け,その瞬間を味わい尽くすことが重要とされる(山田,2018).この姿勢は作業療法との親和性も高く,その効果を高める一助となり得る.