第58回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

精神障害

[PH-2] ポスター:精神障害 2 

Sat. Nov 9, 2024 11:30 AM - 12:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PH-2-6] リワークデイケアに診る適応反応症,自閉スペクトラム症の支援

ケーススタディーによる考察

近藤 智1, 野際 陽子2,3 (1.目白大学 保健医療学部, 2.筑波大学大学院 ヒューマン・ケア科学, 3.首都医校 作業療法学科)

【序論】リワークデイケアの対象は気分障害や不安障害が中心であったが,最近は,適応反応症や発達神経症にとって代わった.そのためこれまでと異なるプログラム運営や対応が求められてきた.
従来からの「抑うつ症群」の診断名より,「適応反応症」や「ASD(自閉スペクトラム症)」の診断名も散見されることからも,作業場面やコミュニケーション場面では,他者とかみ合わない特徴的な思考や会話内容が見られるものの,本人の自覚が薄く,メンバー同士でかみ合わないばかりでなく,トラブルに発展することもあった.職場においては二次障害として抑うつ症状を引き起こすことは容易に想像がつく.そのため作業療法の臨床場面では,疾患の特性に加え,性格特性,職場の状況を理解することが求められる.
そこで,本研究の目的は,3例の自験例を提示し,メンタル不調で休職中の適応反応症や神経発達症を伴う二次的抑うつに対し,効果的な治療的対応について考察した.
【方法】対象者;A県心療内科クリニックリワークデイケア,1日10数名前後が参加,診断名はうつ病の他,適応障害,発達障害が対象である.方法;2022年から2023年にうつ病休職者の支援の中で,演者がリワークデイケア内で支援した者である.なおプライバシー保護のため,大学倫理委員会の承認ののち,症例が特定できないよう個人情報に配慮したうえで,書面により発表の同意を得た.
【結果】症例1;20歳代男性,適応反応症,ASDの診断,SE職,職場で仕事上のミスが多く,上司に叱責される日々が続いた.発達障害の評価尺度であるAQ-J,PARS,ASRSは全て陽性.リワークデイケア開始時に今回の休職原因分析を実施,最初本人は目を背けていたが,それでは再度休職になることを説明し,渋々の取り組みが見られた.原因分析導入で,「電話対応が苦手」,「突発的な案件やトラブルではパニックに陥り,思考停止」が明らかになった.
症例2;40歳代男性,適応反応症,営業職,大学院卒業後,大手企業に入社,会議では上司や役員の意見で決まり,新たな事業は受け入れない組織に対し,精神的に不安定,抑うつ,出社意欲低下が出現し,休職となった.もともとこだわりが強く,頑固な性格,気分の浮き沈みや会議中に怒鳴ることもあった.リワーク支援では,これまでのコミュニケーションの取り方を再考し,心理的柔軟性を高める方法を身につけるよう支援した.
症例3;40歳代女性,,抑うつ症群,ASDの診断,保育士,仕事上の激務に加え,管理職となり毎月の残業時間が多く,夜遅くまでくたくたになりながら勤務していた.3か月経過すると勤務不能になり,休職となった.特定の業務能力は高いが,管理職や部下の育成も初めて.SOSを出すこともできず,日ごろから相談相手もいなかった.
【考察】3例の中2例は適応反応症プラス神経発達症の疑いのある勤労者であった.従来からの障害者雇用とは異なり,職場で問題行動が事例化し,周囲が対応に苦慮し,本人自身も上司や同僚の叱責により,二次的に抑うつ症状を呈することが推察された.そこで,3症例を通して個々に求められる支援として治療者は,発達障害の疾病特性の理解と個人スキルを考慮し,職場の理解が求められ,対象者は,①日ごろから上司とのコミュニケーションの取り方を身につけ,②細部へのこだわりや凝り性への気づき,➂「メモを取ること」,④「感情のコントロールと対処法」の訓練等が必要不可欠であった. 
なお,当日は詳細な症例提示とともに考察を加える.