[PH-2-7] 芸術的要素を用いた作業種目によるストレスケアプログラムの効果について
シングルシステムデザインを用いて
はじめに
現在,メンタルヘルス対策が急務である.手軽で用いやすいアートを用いた介入は,先行研究で精神疾患へのエビデンスがある.一方で,未病者への介入効果は不明である.そこで本研究は,芸術的要素を用いた作業種目によるストレスケアプログラムを開発し,その効果を明らかにする.
対象と方法
対象者は,研究開始時に精神疾患の既往を持たない者で,本研究の趣旨を理解し,参加の意思を明確に表明したA大学学生7名(男子学生4名,女子学生3名)とした.
方法として本研究は,前後比較試験のA-B-Aデザインを採用した.評価指標として,①主観的経験の評価としてVAS(ポジティブ要素:「気分」「快活性」「自尊心」「統制感」「ストレス対処」「集中」の6項目,ネガティブ要素:「ネガティブ思考」「衝動性」「ネガティブ持続」「諦念/消極性」の4項目,計10項目)を行った.次に心理尺度として,②新版STAI(状態不安・特性不安の評価) ,③SDS(抑うつの評価),④SRS-18(精神的なストレスの評価),⑤ARS(精神的回復力の評価)を実施した.具体的手順は,介入前5日間をベースライン期として,その期間中に①を3回,②~⑤を1回ずつ測定した.介入は,2回で1日目の午前に絵画を,午後に身体表現を,2日目の午前に集団絵画を,午後に即興劇を実施した.その後,介入後の5日間にフォローアップ期として,ベースラインと同じようにデータを収集した.データの分析方法は,VASはベースラインを基準として個人で差を比較し,介入後の値を2SD法で検討した.心理尺度は平均を算出しWelch’s t-test実施した(有意水準5%).本研究は,A大学研究倫理審査の承認を受け,手順に沿って研究内容と倫理的配慮を明記した研究説明書を明示して説明し,文書で同意を得た.
結果
VASの結果を,介入1回目・2回目で向上(低下)した人数,2SDを超えて(低下)した人数の形式で示す.「気分」5人・5人,2SD:2人.「快活性」6人・6人
,2SD:2人.「自尊心」5人・6人,2SD:5人.「統制感」6人・5人,2SD:5人.「ストレス対処」6人・4人,2SD:5人.「集中」7人・6人,2SD:1人.「ネガティブ思考」6人・5人,2SD:5人.「衝動性」3人・5人,2SD:3人.「ネガティブ持続」5人・5人,2SD:2人.「諦念/消極性」5人・4人,2SD:3人だった. 次に,心理尺度の介入前後での平均値(Welch’s t-test)は,STAI状態不安で39→32.7(p=.107 ES(d)=.873 95%CI:-1.56,14.14),STAI特性不安で46.6→43.3(p=.446 ES(d)=.394 95%CI:-5.81,12.38),SDSで40.1→35.7(p=.257 ES(d)=.595 95%CI:-3.68,12.54),SRS-18で13.1→8.4(p=.364 ES(d)=.462 95%CI:-6.18,15.61),ARSで71.3→76.7(p=.446 ES(d)=.394 95%CI:-5.81,12.38)だった.
考察
心理尺度では,いずれも有意差は見られなかったが,状態不安が効果量大,抑うつが効果量中,特性不安,ストレス反応,精神的レジリエンスが効果量小だった.また,VASでは,ポジティブ要素で多くの参加者が向上し,特に「自尊心」「統制感」「ストレス対処」では,7名中5名の参加者が2SDを超えるなど高い効果が見られた.ネガティブ要素では,多くの参加者で低下が見られ,特に「ネガティブ思考」で7名中5名の参加者が2SDを超えて低下した.一方で,「気分」「快活性」「集中」「ネガティブ持続」「諦念/消極性」では,元々の値が高く(低く)天井効果や床効果の影響もあったと考えられた.以上より,アートを用いた作業療法介入には不安やストレスを軽減させ,ストレスに対してしなやかな自己やレジリエンスを向上させる効果の可能性が示唆された.
現在,メンタルヘルス対策が急務である.手軽で用いやすいアートを用いた介入は,先行研究で精神疾患へのエビデンスがある.一方で,未病者への介入効果は不明である.そこで本研究は,芸術的要素を用いた作業種目によるストレスケアプログラムを開発し,その効果を明らかにする.
対象と方法
対象者は,研究開始時に精神疾患の既往を持たない者で,本研究の趣旨を理解し,参加の意思を明確に表明したA大学学生7名(男子学生4名,女子学生3名)とした.
方法として本研究は,前後比較試験のA-B-Aデザインを採用した.評価指標として,①主観的経験の評価としてVAS(ポジティブ要素:「気分」「快活性」「自尊心」「統制感」「ストレス対処」「集中」の6項目,ネガティブ要素:「ネガティブ思考」「衝動性」「ネガティブ持続」「諦念/消極性」の4項目,計10項目)を行った.次に心理尺度として,②新版STAI(状態不安・特性不安の評価) ,③SDS(抑うつの評価),④SRS-18(精神的なストレスの評価),⑤ARS(精神的回復力の評価)を実施した.具体的手順は,介入前5日間をベースライン期として,その期間中に①を3回,②~⑤を1回ずつ測定した.介入は,2回で1日目の午前に絵画を,午後に身体表現を,2日目の午前に集団絵画を,午後に即興劇を実施した.その後,介入後の5日間にフォローアップ期として,ベースラインと同じようにデータを収集した.データの分析方法は,VASはベースラインを基準として個人で差を比較し,介入後の値を2SD法で検討した.心理尺度は平均を算出しWelch’s t-test実施した(有意水準5%).本研究は,A大学研究倫理審査の承認を受け,手順に沿って研究内容と倫理的配慮を明記した研究説明書を明示して説明し,文書で同意を得た.
結果
VASの結果を,介入1回目・2回目で向上(低下)した人数,2SDを超えて(低下)した人数の形式で示す.「気分」5人・5人,2SD:2人.「快活性」6人・6人
,2SD:2人.「自尊心」5人・6人,2SD:5人.「統制感」6人・5人,2SD:5人.「ストレス対処」6人・4人,2SD:5人.「集中」7人・6人,2SD:1人.「ネガティブ思考」6人・5人,2SD:5人.「衝動性」3人・5人,2SD:3人.「ネガティブ持続」5人・5人,2SD:2人.「諦念/消極性」5人・4人,2SD:3人だった. 次に,心理尺度の介入前後での平均値(Welch’s t-test)は,STAI状態不安で39→32.7(p=.107 ES(d)=.873 95%CI:-1.56,14.14),STAI特性不安で46.6→43.3(p=.446 ES(d)=.394 95%CI:-5.81,12.38),SDSで40.1→35.7(p=.257 ES(d)=.595 95%CI:-3.68,12.54),SRS-18で13.1→8.4(p=.364 ES(d)=.462 95%CI:-6.18,15.61),ARSで71.3→76.7(p=.446 ES(d)=.394 95%CI:-5.81,12.38)だった.
考察
心理尺度では,いずれも有意差は見られなかったが,状態不安が効果量大,抑うつが効果量中,特性不安,ストレス反応,精神的レジリエンスが効果量小だった.また,VASでは,ポジティブ要素で多くの参加者が向上し,特に「自尊心」「統制感」「ストレス対処」では,7名中5名の参加者が2SDを超えるなど高い効果が見られた.ネガティブ要素では,多くの参加者で低下が見られ,特に「ネガティブ思考」で7名中5名の参加者が2SDを超えて低下した.一方で,「気分」「快活性」「集中」「ネガティブ持続」「諦念/消極性」では,元々の値が高く(低く)天井効果や床効果の影響もあったと考えられた.以上より,アートを用いた作業療法介入には不安やストレスを軽減させ,ストレスに対してしなやかな自己やレジリエンスを向上させる効果の可能性が示唆された.