[PH-3-3] 医療観察法通院処遇における作業療法士の役割
【目的】
当院では2011年より医療観察法通院処遇対象者(以下,対象者)の受け入れを開始し,試行錯誤しながら関わりを継続してきた.作業療法士(以下,OT)は通院処遇開始当初から関わりはあったが,2019年よりOT1名が通院処遇担当となり,定期的に関わり始めた.当院における通院処遇が10年以上経過し,これまでに様々な治療的介入を行ってきたため,当院の通院処遇における作業療法士の役割について振り返り,まとめ,今後の展望を検討することが本報告の目的である.なお,報告に際して倫理的配慮を行った.
【方法】
当院における通院処遇治療の特徴として,医師の診察の前後に,多職種面接(Ns,PSW,CP,OT)を15-30分程度実施している点が挙げられる.多職種面接では,モニタリングシートやクライシスプランを活用した体調管理や生活状況の振り返りを中心として実施し,必要があれば別に時間や場所を設けて各職種が介入している.その中でOTは多職種面接への参加はもちろん,対象者が安定した地域生活を送るために解決する必要のある困りごとの相談や将来の希望を叶えるための準備をサポートし,その手段として個別プログラムへの導入や自宅への訪問を行っている.
【結果】
当院ではこれまでに31名の対象者を受け入れ,男性22名,女性9名,平均年齢(通院処遇開始時)43.2±12.3歳であった.主診断名の割合はF1が3名(9.7%),F2が26名(83.9%),F4が2名(6.5%)とF2の割合が8割を超えていた.現在受け入れている対象者は13名おり,その内,主診断名がF2の対象者は11名,クロザピンを処方されている対象者が8名であった.また再入院処遇を経験している対象者が2名であった.以上から当院の対象者の特徴として,難治・困難ケースを受け入れている傾向にあった.
通院処遇におけるOTの主な役割として,①健康作り(ヘルスプロモーション),②セルフコントロールスキルの向上,③就労支援が挙げられる.①健康作りは,健康的な体作りのための身体機能評価(体成分分析装置による測定や体力測定等)や食事指導,健康的な生活を送るための知識の提供を行っている.②セルフコントロールスキルの向上は,インターネットの上手な活用のサポート等の個別プログラムの利用や自宅訪問によって将来の希望への準備や困りごとの解決を直接的に図っている.③就労支援は,次のステップに向けた相談支援を行っている.
【考察と今後の展望】
医療観察法の主な目的に再他害行為防止が挙げられるため,通院医療機関として病状やそれに影響される心身機能や生活の安定を目指すことは重要である.それに加えて,対象者のセルフコントロールスキルや仕事,人生の目標等の保護因子(SAPROF,2014)を強化することによって対象者のQOLが向上し,自分らしい生活ができるようになり,結果として再他害行為の防止に繋げる事ができる.特に対象者の就労について,アルバイト・パートなどの非正規雇用が過半を占めていること,数日程度のごく短期間の就労も含んでいることなどを考えると,今後,就労の改善に向けた取り組みを行っていく必要がある(竹田康二,2020)との報告がある.対象者が就労を希望した場合,就労に関連した評価による自己理解の促進や職場への同行支援など,対象者の病状や心身機能と作業との関係を評価できる作業療法士だからこそ,病院内で面接による相談支援だけでなく,より積極的に介入していくことが求められる.
当院では2011年より医療観察法通院処遇対象者(以下,対象者)の受け入れを開始し,試行錯誤しながら関わりを継続してきた.作業療法士(以下,OT)は通院処遇開始当初から関わりはあったが,2019年よりOT1名が通院処遇担当となり,定期的に関わり始めた.当院における通院処遇が10年以上経過し,これまでに様々な治療的介入を行ってきたため,当院の通院処遇における作業療法士の役割について振り返り,まとめ,今後の展望を検討することが本報告の目的である.なお,報告に際して倫理的配慮を行った.
【方法】
当院における通院処遇治療の特徴として,医師の診察の前後に,多職種面接(Ns,PSW,CP,OT)を15-30分程度実施している点が挙げられる.多職種面接では,モニタリングシートやクライシスプランを活用した体調管理や生活状況の振り返りを中心として実施し,必要があれば別に時間や場所を設けて各職種が介入している.その中でOTは多職種面接への参加はもちろん,対象者が安定した地域生活を送るために解決する必要のある困りごとの相談や将来の希望を叶えるための準備をサポートし,その手段として個別プログラムへの導入や自宅への訪問を行っている.
【結果】
当院ではこれまでに31名の対象者を受け入れ,男性22名,女性9名,平均年齢(通院処遇開始時)43.2±12.3歳であった.主診断名の割合はF1が3名(9.7%),F2が26名(83.9%),F4が2名(6.5%)とF2の割合が8割を超えていた.現在受け入れている対象者は13名おり,その内,主診断名がF2の対象者は11名,クロザピンを処方されている対象者が8名であった.また再入院処遇を経験している対象者が2名であった.以上から当院の対象者の特徴として,難治・困難ケースを受け入れている傾向にあった.
通院処遇におけるOTの主な役割として,①健康作り(ヘルスプロモーション),②セルフコントロールスキルの向上,③就労支援が挙げられる.①健康作りは,健康的な体作りのための身体機能評価(体成分分析装置による測定や体力測定等)や食事指導,健康的な生活を送るための知識の提供を行っている.②セルフコントロールスキルの向上は,インターネットの上手な活用のサポート等の個別プログラムの利用や自宅訪問によって将来の希望への準備や困りごとの解決を直接的に図っている.③就労支援は,次のステップに向けた相談支援を行っている.
【考察と今後の展望】
医療観察法の主な目的に再他害行為防止が挙げられるため,通院医療機関として病状やそれに影響される心身機能や生活の安定を目指すことは重要である.それに加えて,対象者のセルフコントロールスキルや仕事,人生の目標等の保護因子(SAPROF,2014)を強化することによって対象者のQOLが向上し,自分らしい生活ができるようになり,結果として再他害行為の防止に繋げる事ができる.特に対象者の就労について,アルバイト・パートなどの非正規雇用が過半を占めていること,数日程度のごく短期間の就労も含んでいることなどを考えると,今後,就労の改善に向けた取り組みを行っていく必要がある(竹田康二,2020)との報告がある.対象者が就労を希望した場合,就労に関連した評価による自己理解の促進や職場への同行支援など,対象者の病状や心身機能と作業との関係を評価できる作業療法士だからこそ,病院内で面接による相談支援だけでなく,より積極的に介入していくことが求められる.