第58回日本作業療法学会

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ポスター

精神障害

[PH-3] ポスター:精神障害 3 

Sat. Nov 9, 2024 12:30 PM - 1:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PH-3-5] 気分障害・ストレス関連障害休職者に対する復職支援介入後の職場復帰率と就労継続率に影響を与える要因の探索

公家 龍之介1,2, 田中 佐千恵3, 中野 未来2,4, 小林 正義1,3 (1.信州大学大学院総合医理工学研究科医学系専攻保健学分野, 2.信州大学医学部附属病院, 3.信州大学医学部保健学科, 4.信州大学大学院総合医理工学研究科医学系専攻医学分野)

【はじめに】精神障害による病気休暇は世界中で大きな課題である(Shiels C).日本においても,気分障害休職者に対する復職支援は新たな課題であるが(Sakai Y),介入の有効性に関する報告は少ない.本研究の目的は,我々が実施した復職支援介入による復職達成率と復職継続率を調査すること,職場復帰の困難さや再休職に関連する要因を探索することであった.本研究は所属大学の倫理委員会の承認を得た臨床研究の一部として実施した.
【対象と方法】対象は気分障害またはストレス関連障害と診断された休職者のうち,プログラムに参加した者であった.介入内容は週5回の作業療法,心理教育,認知行動療法などを行う週2回の学習プログラム,週1回のメタ認知トレーニングとSSTから構成され,3〜4ヶ月を1クールとして実施した.介入終了後1年以内の職場復帰率と職場復帰後1年間の就労継続率を調査した.介入終了後1年以内に職場復帰した者を復帰群,職場復帰できなかった者を未就労群,職場復帰群のうち,1年間の勤続が継続できた者を継続群,復職後再び連続1ヶ月以上の休職があった者を再休職群とした.復帰群と未就労群,継続群と再休職群の介入開始時と終了時の精神症状(HAM-D,YMRS),認知機能(BACS),社会適応度(SASS),作業遂行能力(GATB),復職準備性(PRRS),気質(TEMPS-A)の得点と変化量をMann–Whitney U testを用いて比較し,効果量を算出した.また,有意差が認められた変数,年齢,性別を投入して,探索的にロジスティック解析を行った.統計解析にはEZR (ver. 1.52) を使用し有意水準は5%とした.
【結果】47名が参加し,6名が中断,41名(男性34名,平均年齢37.0歳,うつ病14名,双極性感情障害7名,適応障害20名)が介入を終了した.そのうち,35名(85.4%)が職場復帰を果たした.未就労群は復帰群と比較して,TEMPS-Aの不安気質が増加し(p = 0.02, r = 0.37),SASSの介入終了時の対人関係が低く(p = 0.04, r = 0.33),GATBの指先の器用さ,(p = 0.04, r = 0.32),手腕の器用さ(p = 0.05, r = 0.31)の変化が少なく,PRRSの介入終了時の職場との関係(p = 0.03, r = 0.34)と合計点(p = 0.03, r = 0.33)が低かったが,多重ロジスティック解析では復職達成に関連する要因は抽出されなかった.また,復帰群のうち,1年後に仕事を継続していた者は29名(82.9%)であった.再休職群は継続群と比較して,BACS総合得点の変化量が少なく(p = 0.02, r = 0.40),TEMPS-Aの介入開始時の発揚気質が高く(p = 0.02, r = 0.39),GATBの運動共応の変化量が少なかった(p = 0.03, r = 0.36).多重ロジスティック解析では,BACS総合得点の変化量が少ないことが再休職のリスクとして抽出されたが,モデルの当てはまりは低かった(AIC = 30.80).
【考察】本研究の結果は,先行研究(職場復帰率:63.6~77.2%,就労継続率:65.2~93.8%;秋山,北川,平澤,大木,林)と比較して職場復帰率,就労継続率ともに高かった.作業療法による細やかな個別支援と集団プログラムとの組み合わせが重要であったと考える.復職達成の困難さに関連する要因として,不安気質の増加,対人交流上の社会適応度の低さ,作業能力の変化が少ないこと,職場との関係性の悪さ,再休職に関連する要因については,認知機能や作業能力の変化が少ないこと,介入開始時の発揚気質の高さなどの可能性が示唆された.既存の介入方法に加え,認知機能や作業能力の向上を目的とした介入は職場復帰や就労継続に寄与する可能性がある.今後は症例数を増やし,詳細な検討が必要である.