[PH-4-3] 統合失調症患者の作業機能障害に着目した評価介入によってリカバリーが促進した一事例
【はじめに】精神障がい者支援では,リカバリーの概念が大切とされ,作業療法では作業機能障害に焦点を当てた介入は,リカバリー志向の作業療法における具体的方策の一つになる可能性を示している(葛岡ら,2022).今回就労を希望した事例に対し,作業機能障害に着目した評価と介入を行った結果,リカバリーに有益な変化をもたらしたため,以下に報告する.本報告にあたり,文書による説明により同意を得た.
【事例紹介】A氏,30代後半の男性.診断名は統合失調症,身体表現性障害,軽度精神遅滞(IQ59).高校卒業後は仕事を転々とし,2度の入院を経験した.X−16年から当院精神科デイケア(以下DC)を利用.X−10年就労移行支援利用後,障害者雇用で働くも不調となり3度目の入院.退院後は週3回DC通所を続けていた.X年筆頭者に担当変更後,就労へ向けた介入を開始した.【作業療法初期評価】面接で就労継続支援B型(以下就B)を希望.一方で不調に意識が向き,DC参加できない日があった.作業機能障害の種類と評価(以下CAOD)の結果は,45/112点(作業不均衡12/28点,作業剥奪7/21点,作業疎外11/21点,作業周縁化15/42点)であり,改善点を「仕事を想定した疲れのコントロール」と挙げた.作業機能障害の種類に関するスクリーニングツール(以下STOD)の結果は,46/84点(作業不均衡14/24点,作業剥奪5/18点,作業疎外14/24点,作業周縁化13/18点)であり,作業不均衡,作業疎外,作業周縁化の程度が強かった.
日本語版Recovery Assessment Scale(以下RAS)の結果,101/120点であった.
【介入方法】A氏の作業機能障害の状態に着目しながら希望する就Bで働くことを目指し介入を行う.セルフマネジメントを高める支援として,元気回復行動プラン(以下WRAP)を用いて介入を行う.【介入経過・結果(介入6ヶ月)】
第1期;DC参加の定着が図れた時期(〜3ヶ月)
日頃の関わりでは就労を想定したDC参加を意識できるようにした.徐々に意欲的となり,「体調が悪くてもDCに参加することが目標」と述べた.その為,出席確認表でのモチベーション維持に加え,WRAPの日常生活管理プランを活用した.その後,DC参加が安定し主治医から就労見学の許可が得られた.
第2期;見学・体験を行い,就B利用が決まった時期(3〜6ヶ月)
就B見学・体験の目標をカナダ作業遂行測定(以下COPM)で共有した.「“がんばり度を80%”に調整する」重要度9・遂行度4・満足度2であった.体験中は,頑張り度合いの可視化や課題がみえる度に柔軟に話し合い対処方法を検討した.WRAPではいい感じの自分等が増え,課題に対しては「前より抑えられるようになった」と話し,COPMは遂行度7・満足度4であった.その後,就B利用が決まり,「もう1回就労できるとは思ってなかった」と話した.
CAODは23点(作業不均衡10点,作業剥奪3点,作業疎外3点,作業周縁化7点).STODは28点(作業不均衡9点,作業剥奪4点,作業疎外7点,作業周縁化8点)となり,作業機能障害が改善した.RASは104点とリカバリープロセスが前向きに変化した.
【考察】リカバリー支援では,対象者のニーズを中心においた治療や支援の評価,発展が重要である(山口ら,2016).作業機能障害に着目した評価と介入を行うことは,作業機能障害を整理し,適切な対処をしながら支援することで,結果として対象者のニーズを満たし,リカバリーに有益な変化をもたらすことができると考えられる.また作業機能障害に着目しA氏の希望に沿った支援を展開したことにより,リカバリー構成要素(Leamyら,2011)の1つである「将来への希望」が満たされ,前向きにリカバリーが変化したと考えられる.
【事例紹介】A氏,30代後半の男性.診断名は統合失調症,身体表現性障害,軽度精神遅滞(IQ59).高校卒業後は仕事を転々とし,2度の入院を経験した.X−16年から当院精神科デイケア(以下DC)を利用.X−10年就労移行支援利用後,障害者雇用で働くも不調となり3度目の入院.退院後は週3回DC通所を続けていた.X年筆頭者に担当変更後,就労へ向けた介入を開始した.【作業療法初期評価】面接で就労継続支援B型(以下就B)を希望.一方で不調に意識が向き,DC参加できない日があった.作業機能障害の種類と評価(以下CAOD)の結果は,45/112点(作業不均衡12/28点,作業剥奪7/21点,作業疎外11/21点,作業周縁化15/42点)であり,改善点を「仕事を想定した疲れのコントロール」と挙げた.作業機能障害の種類に関するスクリーニングツール(以下STOD)の結果は,46/84点(作業不均衡14/24点,作業剥奪5/18点,作業疎外14/24点,作業周縁化13/18点)であり,作業不均衡,作業疎外,作業周縁化の程度が強かった.
日本語版Recovery Assessment Scale(以下RAS)の結果,101/120点であった.
【介入方法】A氏の作業機能障害の状態に着目しながら希望する就Bで働くことを目指し介入を行う.セルフマネジメントを高める支援として,元気回復行動プラン(以下WRAP)を用いて介入を行う.【介入経過・結果(介入6ヶ月)】
第1期;DC参加の定着が図れた時期(〜3ヶ月)
日頃の関わりでは就労を想定したDC参加を意識できるようにした.徐々に意欲的となり,「体調が悪くてもDCに参加することが目標」と述べた.その為,出席確認表でのモチベーション維持に加え,WRAPの日常生活管理プランを活用した.その後,DC参加が安定し主治医から就労見学の許可が得られた.
第2期;見学・体験を行い,就B利用が決まった時期(3〜6ヶ月)
就B見学・体験の目標をカナダ作業遂行測定(以下COPM)で共有した.「“がんばり度を80%”に調整する」重要度9・遂行度4・満足度2であった.体験中は,頑張り度合いの可視化や課題がみえる度に柔軟に話し合い対処方法を検討した.WRAPではいい感じの自分等が増え,課題に対しては「前より抑えられるようになった」と話し,COPMは遂行度7・満足度4であった.その後,就B利用が決まり,「もう1回就労できるとは思ってなかった」と話した.
CAODは23点(作業不均衡10点,作業剥奪3点,作業疎外3点,作業周縁化7点).STODは28点(作業不均衡9点,作業剥奪4点,作業疎外7点,作業周縁化8点)となり,作業機能障害が改善した.RASは104点とリカバリープロセスが前向きに変化した.
【考察】リカバリー支援では,対象者のニーズを中心においた治療や支援の評価,発展が重要である(山口ら,2016).作業機能障害に着目した評価と介入を行うことは,作業機能障害を整理し,適切な対処をしながら支援することで,結果として対象者のニーズを満たし,リカバリーに有益な変化をもたらすことができると考えられる.また作業機能障害に着目しA氏の希望に沿った支援を展開したことにより,リカバリー構成要素(Leamyら,2011)の1つである「将来への希望」が満たされ,前向きにリカバリーが変化したと考えられる.