[PH-5-3] VCAT-Jと箱づくり法を通して就労に至ったうつ病の事例
【はじめに】
VCAT-J(Vocational Cognitive Ability Training by Jcores)は,認知機能改善療法(以下,CRT)と援助付き雇用モデルによる就労支援を組み合わせた支援プログラムである.当院精神科デイケアのプレリワークプログラム(以下,プレリワーク)ではVCAT-Jを導入している.今回, 就労支援の一環としてVCAT-Jを行うとともに,作業遂行特性と具体的援助方法を確認するために箱づくり法を行い,A型就労継続支援の利用へ至った事例について報告する.なお,発表に際して対象者より書面にて同意を得た.
【事例紹介】
30代女性,うつ病,軽度知的障害.高校卒業後,スーパーの店員としてアルバイト生活を送っていた.上司から非難されることもあったが,悩みを家族に話すことはなく何とか仕事を続けていた.しかしX-1年に不眠や倦怠感が出現し退職となった.X年には希死念慮が出現したため近医より紹介にて当院を初診し,同日医療保護入院となった.諸症状は改善し3か月後に退院となり,主治医の勧めでプレリワークの利用を開始した.
【OT評価と方針】
本人は就労を目指していたが,プレリワーク参加中の課題として援助希求が難しい,理解や処理に時間がかかる様子が見受けられたため,VCAT-Jへリクルートした.認知機能評価としてBrief Assessment of Cognition in Schizophrenia(BACS)をVCAT-J実施前に測定したところ,総合得点(Z-score)-2.16と重度の認知機能障害域であった.結果をVCAT-J実施前に伝え,「色々言われるとわからなくなるのを分析する」「言いたいことを言えるようになる」という目標設定を行った.
【経過と結果】
週5日のプレリワーク通所を継続しつつ,プログラム後に週3回,12週間VCAT-Jを実施した.VCAT-J開始時は,スタッフに対して「終わったぽいです」など独り言のような表現が目立った.また,課題中は試行錯誤が少なく,失敗に対する不安が窺えた.一方で,他者からの意見を素直に受け入れ,実直に取り組んでいた.中間振り返りでは積極的に質問,確認することや失敗してもよいということを本人に伝えた.後期には試行錯誤が増え,スタッフに一声かけてから質問や相談をしたり,言われた事をメモに取るようになった.
VCAT-J終了後にBACSと箱づくり法による作業面接を1回実施した.BACSでは総合得点(Z-score)-1.22と認知機能の改善がみられた.最終振り返りでは,箱づくり法の結果からは具体的な見本やフィードバックを必要とするなどの特徴を説明した.また,VCAT-Jを通してすぐに質問や相談ができるようになったことを評価し,これらを就労に向けて継続することが大切であると伝えた.その後はスタッフに話しかけることが増え,6ヶ月後には就労継続支援A型へ移行した.現在も継続中である.
【考察】
CRTの重要点はコンピュータ・トレーニングで得られた作業パターンに対する気づきや課題をいかに日常生活や職業生活に応用するかである(久住,2023).VCAT-Jを通して,定期的な振り返りや課題を反復することが気づきを促したと考えられる.また,箱づくり法を用いることで作業場面での特徴にも気づくことができ,実直な取り組みも相まって生活への汎化や就労へ繋がったと考えられる.
VCAT-J(Vocational Cognitive Ability Training by Jcores)は,認知機能改善療法(以下,CRT)と援助付き雇用モデルによる就労支援を組み合わせた支援プログラムである.当院精神科デイケアのプレリワークプログラム(以下,プレリワーク)ではVCAT-Jを導入している.今回, 就労支援の一環としてVCAT-Jを行うとともに,作業遂行特性と具体的援助方法を確認するために箱づくり法を行い,A型就労継続支援の利用へ至った事例について報告する.なお,発表に際して対象者より書面にて同意を得た.
【事例紹介】
30代女性,うつ病,軽度知的障害.高校卒業後,スーパーの店員としてアルバイト生活を送っていた.上司から非難されることもあったが,悩みを家族に話すことはなく何とか仕事を続けていた.しかしX-1年に不眠や倦怠感が出現し退職となった.X年には希死念慮が出現したため近医より紹介にて当院を初診し,同日医療保護入院となった.諸症状は改善し3か月後に退院となり,主治医の勧めでプレリワークの利用を開始した.
【OT評価と方針】
本人は就労を目指していたが,プレリワーク参加中の課題として援助希求が難しい,理解や処理に時間がかかる様子が見受けられたため,VCAT-Jへリクルートした.認知機能評価としてBrief Assessment of Cognition in Schizophrenia(BACS)をVCAT-J実施前に測定したところ,総合得点(Z-score)-2.16と重度の認知機能障害域であった.結果をVCAT-J実施前に伝え,「色々言われるとわからなくなるのを分析する」「言いたいことを言えるようになる」という目標設定を行った.
【経過と結果】
週5日のプレリワーク通所を継続しつつ,プログラム後に週3回,12週間VCAT-Jを実施した.VCAT-J開始時は,スタッフに対して「終わったぽいです」など独り言のような表現が目立った.また,課題中は試行錯誤が少なく,失敗に対する不安が窺えた.一方で,他者からの意見を素直に受け入れ,実直に取り組んでいた.中間振り返りでは積極的に質問,確認することや失敗してもよいということを本人に伝えた.後期には試行錯誤が増え,スタッフに一声かけてから質問や相談をしたり,言われた事をメモに取るようになった.
VCAT-J終了後にBACSと箱づくり法による作業面接を1回実施した.BACSでは総合得点(Z-score)-1.22と認知機能の改善がみられた.最終振り返りでは,箱づくり法の結果からは具体的な見本やフィードバックを必要とするなどの特徴を説明した.また,VCAT-Jを通してすぐに質問や相談ができるようになったことを評価し,これらを就労に向けて継続することが大切であると伝えた.その後はスタッフに話しかけることが増え,6ヶ月後には就労継続支援A型へ移行した.現在も継続中である.
【考察】
CRTの重要点はコンピュータ・トレーニングで得られた作業パターンに対する気づきや課題をいかに日常生活や職業生活に応用するかである(久住,2023).VCAT-Jを通して,定期的な振り返りや課題を反復することが気づきを促したと考えられる.また,箱づくり法を用いることで作業場面での特徴にも気づくことができ,実直な取り組みも相まって生活への汎化や就労へ繋がったと考えられる.