[PH-6-6] 精神療養病棟における長期入院患者の集団的特徴にポピュレーションアプローチが与える効果
【序論】
当院の精神療養病棟患者の多くは統合失調症の長期入院患者である.また多くの患者は作業機能障害の状態にあり,活動への興味の低さや生活に必要な作業に取り組めていない様子が見られていた.そしてそのような状況は病棟の特徴となっていた.地域での健康増進事業では,よくポピュレーションアプローチが用いられる.ポピュレーションアプローチとは対象集団のリスクを下げるため,問題の有無や高低にかかわらず行動変容を促す取り組みをいう.今回は病棟患者に共通してみられていた傾向にポピュレーションアプローチを実施し,生活に行動変容を促した試みを報告する.
【目的】
精神療養病棟の統合失調症長期入院患者に対するポピュレーションアプローチが療養生活に与える効果を明らかにすることである.
【方法】
①病棟の長期入院患者の傾向についての調査:対象は令和4年8月1日の時点で精神療養病棟に1年以上入院している統合失調症患者とした.対象者の作業機能障害の状態を「精神障害作業療法のための作業機能障害の種類に関するスクリーニングツール(STOD)」で評価し,作業不均衡,作業剥奪,作業疎外,作業周縁化の中央値を求めた.中央値の値が高い作業機能障害を病棟の傾向と捉え,患者全体への介入方法を検討した.②作業機能障害の傾向へのポピュレーションアプローチの効果測定:対象は精神療養病棟への入院から1年以上経過している統合失調症患者で令和4年8月30日から令和5年8月30日の期間在院していた者.研究期間中,向精神薬の変更があった患者は薬物療法による結果の偏りを考慮して除外した.病棟患者全体に向け作業機能障害の傾向に合わせたポピュレーションアプローチを導入.導入前後の生活状況を「精神障害者社会生活評価尺度(LASMI)」で評価した.LASMIは日常生活,対人交流,労働または課題の遂行,自己認識の4領域を使用.安定性・持続性の領域は今回の研究で変化が生じないため外している.LASMIの得点は領域ごとにWilcoxon符号順位検定で有意差検定を行った.(p<0.05)質的データとして観察で見られた具体的様子も整理する.なお,本研究は施設長の承認を受け,対象者には同意書による同意を得ている.
【結果】
①病棟の長期入院患者の傾向についての調査:対象は病棟患者総数37名のうち31名,平均年齢は66.7±8.1歳,平均在院期間は14.6±13.0年であった.STODの中央値は作業不均衡4,作業剥奪3,作業周辺化3,作業疎外5.よって,作業のバランスが崩れた作業不均衡,作業に意味を見いだせていない作業疎外の傾向が強い.②作業機能障害の傾向へのポピュレーションアプローチの効果測定:対象は8名,平均年齢は63±4.9歳,平均在院期間は12±9.0年であった.ポピュレーションアプローチの導入前後のLASMIは,日常生活が導入前1.6±0.8/導入後1.2±0.7(p= 0.036),対人交流が導入前1.5±0.6/導入後1.1±0.7(p= 0.036),労働または課題の遂行が導入前1.6±0.8/導入後1.2±0.7(p= 0.022)と有意差がみられた.具体的な変化は,臥床時間の減少,活動の広がり,他者交流の増加,目的を持って活動に取り組む様子や発言があったことである.
【考察】
患者の傾向に合わせたポピュレーションアプローチでの介入では,環境設定やレクリエーションを通した活動に対する興味や価値の向上を目指した取り組みを実施した.その結果,LASMIの有意差のある結果や病棟での活動的な様子を引き出すことができた.よって,精神療養病棟の傾向に合わせたポピュレーションアプローチは長期入院統合失調症患者の療養生活に有効であることが示唆された.
当院の精神療養病棟患者の多くは統合失調症の長期入院患者である.また多くの患者は作業機能障害の状態にあり,活動への興味の低さや生活に必要な作業に取り組めていない様子が見られていた.そしてそのような状況は病棟の特徴となっていた.地域での健康増進事業では,よくポピュレーションアプローチが用いられる.ポピュレーションアプローチとは対象集団のリスクを下げるため,問題の有無や高低にかかわらず行動変容を促す取り組みをいう.今回は病棟患者に共通してみられていた傾向にポピュレーションアプローチを実施し,生活に行動変容を促した試みを報告する.
【目的】
精神療養病棟の統合失調症長期入院患者に対するポピュレーションアプローチが療養生活に与える効果を明らかにすることである.
【方法】
①病棟の長期入院患者の傾向についての調査:対象は令和4年8月1日の時点で精神療養病棟に1年以上入院している統合失調症患者とした.対象者の作業機能障害の状態を「精神障害作業療法のための作業機能障害の種類に関するスクリーニングツール(STOD)」で評価し,作業不均衡,作業剥奪,作業疎外,作業周縁化の中央値を求めた.中央値の値が高い作業機能障害を病棟の傾向と捉え,患者全体への介入方法を検討した.②作業機能障害の傾向へのポピュレーションアプローチの効果測定:対象は精神療養病棟への入院から1年以上経過している統合失調症患者で令和4年8月30日から令和5年8月30日の期間在院していた者.研究期間中,向精神薬の変更があった患者は薬物療法による結果の偏りを考慮して除外した.病棟患者全体に向け作業機能障害の傾向に合わせたポピュレーションアプローチを導入.導入前後の生活状況を「精神障害者社会生活評価尺度(LASMI)」で評価した.LASMIは日常生活,対人交流,労働または課題の遂行,自己認識の4領域を使用.安定性・持続性の領域は今回の研究で変化が生じないため外している.LASMIの得点は領域ごとにWilcoxon符号順位検定で有意差検定を行った.(p<0.05)質的データとして観察で見られた具体的様子も整理する.なお,本研究は施設長の承認を受け,対象者には同意書による同意を得ている.
【結果】
①病棟の長期入院患者の傾向についての調査:対象は病棟患者総数37名のうち31名,平均年齢は66.7±8.1歳,平均在院期間は14.6±13.0年であった.STODの中央値は作業不均衡4,作業剥奪3,作業周辺化3,作業疎外5.よって,作業のバランスが崩れた作業不均衡,作業に意味を見いだせていない作業疎外の傾向が強い.②作業機能障害の傾向へのポピュレーションアプローチの効果測定:対象は8名,平均年齢は63±4.9歳,平均在院期間は12±9.0年であった.ポピュレーションアプローチの導入前後のLASMIは,日常生活が導入前1.6±0.8/導入後1.2±0.7(p= 0.036),対人交流が導入前1.5±0.6/導入後1.1±0.7(p= 0.036),労働または課題の遂行が導入前1.6±0.8/導入後1.2±0.7(p= 0.022)と有意差がみられた.具体的な変化は,臥床時間の減少,活動の広がり,他者交流の増加,目的を持って活動に取り組む様子や発言があったことである.
【考察】
患者の傾向に合わせたポピュレーションアプローチでの介入では,環境設定やレクリエーションを通した活動に対する興味や価値の向上を目指した取り組みを実施した.その結果,LASMIの有意差のある結果や病棟での活動的な様子を引き出すことができた.よって,精神療養病棟の傾向に合わせたポピュレーションアプローチは長期入院統合失調症患者の療養生活に有効であることが示唆された.