第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

精神障害

[PH-7] ポスター:精神障害 7

2024年11月10日(日) 08:30 〜 09:30 ポスター会場 (大ホール)

[PH-7-3] うつ状態の分析から就労支援を経て活動性が向上した事例

羽賀 祐介 (株式会社フェザーイノベーション スカイ訪問看護ステーション)

【はじめに】
精神科訪問看護は,地域で暮らす健康と日常生活を支援する医療サービスである.利用者数や実施施設数は年々増加しており,地域包括ケアシステムにも欠かせない支援となっている.今回精神科訪問看護にてうつ状態の分析から社会参加支援と活動性向上を目的に介入した事例を報告する.
今回の発表に際し,対象者の同意を得ている.開示すべき利益相反関連事項はない.
【事例紹介】
A氏,60代男性,定時制高等学校を卒業.18歳頃よりうつ状態,覚醒剤使用にて2度の服役歴あり.2度の離婚を経て3女をもうけたが疎遠.現在は生活保護を受け生活している.うつを繰り返し,引きこもりがちの生活が続いている.本人の希望にて精神科訪問看護利用開始となった.
【方法】
看護師と連携を図り週1回看護師による体調,服薬管理と週1回作業療法士による活動性向上,外出支援目的にクライシスプランを活用し介入した.
症状がみられないときには「仕事がしたい」「友人に会いたい」と聞かれることがある.
クライシスプラン作成はうつ状態でないときに朝の起床から夜寝るまでの行動をA氏にあげてもらい,ポイントとなる項目を選んでもらった.そして,これより先に症状が進むと受診も困難になる項目の1つ手前にポイントを設け,その際に臨時訪問,臨時受診の促しをした.
【経過】
介入当初はうつ状態を繰り返しているため,希望する活動までには至らなく,前回の訪問時笑顔がみられていたA氏が次の訪問ではうつ状態になっている状況であった. うつ状態になると活動意欲が乏しく,外出が困難となり,自閉的な生活となっていた.活動性が低下される症状の軽減を目的にA氏とクライシスプランを作成し,うつ状態を分析した.前兆がみられると臨時の訪問,多職種と連携し受診や処方調整等に努めた.
【結果】
うつ症状を繰り返し,引きこもりがちだったA氏とクライシスプラン作成した.主治医,看護師など支援者との連携体制を組みうつ状態となる前兆を把握し,うつ状態に陥る早期発見に活かすことができた.うつ状態の前兆時に介入することでうつ状態の軽減,安定した状態の維持が可能となってきたため就労支援の利用を促し,利用開始となった.また,疎遠だった友人と会いたい思いが芽生え,自ら連絡を取り友人宅に遊びに行くことができた.
【考察】
今回仕事がしたい,友人に会いたいというニーズがあるがうつ状態を繰り返し,活動性が低下しているA氏に対し介入を行った.具体的なクライシスプランを作成し,A氏と一緒にうつのレベルの分析を行ったことで,うつ状態に陥る前に早期発見に活かすことができた.症状の前兆から支援することで活動力の向上につながったと考える.
症状の前兆を把握し,介入することで就労支援,社会参加へとアプローチできる可能性が示唆された.