[PH-7-4] 入院中の精神障害のあるクライエントの要望を実現可能な作業に結び付ける作業療法士のアプローチ
M-GTAを用いた質的研究
【序論】2017年に厚生労働省より「精神障害にも対応する地域包括ケアシステムの構築」の理念が明示され,精神障害を有する方等の困りごと,自己実現への想いといった,本人の意志が尊重される体制を構築していくことが求められている(厚生労働省 2021).そのため,作業療法士(以下,OT)にも当事者の関心事や自己実現への思いといった「要望」を尊重したアプローチが必要とされている.しかし,これまでの研究の動向を見てみると,クライエント(以下,CL)の要望を引き出し,それに応じたアプローチが実践されている事例報告はあるが(横山和樹 2018,南庄一郎 2019),そのアプローチの構造と一連のプロセスが体系的にまとめられている研究は見当たらない.
【目的】入院中の精神障害のあるCLの要望を実現可能な作業に結び付けるOTのアプローチの構造とプロセスを明らかにすること.
【意義】上記によってCLを作業参加に繋げ,地域移行を促進することで作業療法実践の発展に寄与することである.
【方法】研究参加者の条件は精神科病院の病棟を担当した経験があるOTで,A)入院中の精神障害のあるCLの要望に応じたアプローチを実践し,実現可能な作業に結び付けた者,B)オンラインか対面によるインタビューを受けることが可能な者とした.さらに,以下の①または②をA)の選択基準として,どちらかに該当する者とした.①周囲のOTが「CLの要望を実現可能な作業に結び付けたアプローチ」をしたことがあるとみなしている.②「CLの要望を実現可能な作業に結び付けた事例」を作業療法に関する学会で発表した経験,あるいは学術誌に投稿したことがある.研究参加者には研究内容を書面及び口頭で説明し,文書で同意を得てインタビューを実施した.インタビュー後,逐語禄を作成し,収集したデータをModified Grounded Theory Approach:M-GTAを用いて分析した.なお本研究は筆者が所属する大学院の研究倫理委員会の承認を得た(承認番号:22048).
【結果と考察】11名への半構造化面接の内容を分析した結果,概念が61,サブカテゴリ−が10,カテゴリー14となった.精神科病棟で働くOTはCLの要望がたとえ荒唐無稽な内容であっても,〔ありのままの思いの受容・理解〕をし〔要望の内容に応じた意見のすり合わせ〕をした後,〔要望を反映した目標共有・段階付け〕をして〔要望に合った活動を共に検討〕,実施した後,効果を振り返るといった,〔根気強いアプローチの継続〕をしていることが分かった.
また,対象者の語りから,CLの要望を実現可能な作業に結び付けるOTのプロセスの大枠は共通していたが,タイミングを見計らって,直接的・集中的に実施するアプローチと初期の段階からアプローチを徐々に実施していき,要望に近づけていくといったOTごとの微細な関わりの差が存在していることが考えられた.さらに,地域移行促進を念頭に置いた,CLの要望を実現可能な作業に結び付けるOTのアプローチの中では特に〔あらゆる手段や方法で思いの探索〕をする中で,<CLの思いを改めて聞く機会を意識的に作り>,その〔CLの要望を反映した目標共有〕をして,〔要望実現に向けたチームの協力〕をしながら〔根気強いアプローチの継続〕をすることが重要であることが明示された.このようなアプローチが精神障害のあるCL1人1人の思いをすくい上げて,作業を紡いでいき,その人らしい生活を送り,CLが作業的存在になることをOTが支援出来るものと考える.
【目的】入院中の精神障害のあるCLの要望を実現可能な作業に結び付けるOTのアプローチの構造とプロセスを明らかにすること.
【意義】上記によってCLを作業参加に繋げ,地域移行を促進することで作業療法実践の発展に寄与することである.
【方法】研究参加者の条件は精神科病院の病棟を担当した経験があるOTで,A)入院中の精神障害のあるCLの要望に応じたアプローチを実践し,実現可能な作業に結び付けた者,B)オンラインか対面によるインタビューを受けることが可能な者とした.さらに,以下の①または②をA)の選択基準として,どちらかに該当する者とした.①周囲のOTが「CLの要望を実現可能な作業に結び付けたアプローチ」をしたことがあるとみなしている.②「CLの要望を実現可能な作業に結び付けた事例」を作業療法に関する学会で発表した経験,あるいは学術誌に投稿したことがある.研究参加者には研究内容を書面及び口頭で説明し,文書で同意を得てインタビューを実施した.インタビュー後,逐語禄を作成し,収集したデータをModified Grounded Theory Approach:M-GTAを用いて分析した.なお本研究は筆者が所属する大学院の研究倫理委員会の承認を得た(承認番号:22048).
【結果と考察】11名への半構造化面接の内容を分析した結果,概念が61,サブカテゴリ−が10,カテゴリー14となった.精神科病棟で働くOTはCLの要望がたとえ荒唐無稽な内容であっても,〔ありのままの思いの受容・理解〕をし〔要望の内容に応じた意見のすり合わせ〕をした後,〔要望を反映した目標共有・段階付け〕をして〔要望に合った活動を共に検討〕,実施した後,効果を振り返るといった,〔根気強いアプローチの継続〕をしていることが分かった.
また,対象者の語りから,CLの要望を実現可能な作業に結び付けるOTのプロセスの大枠は共通していたが,タイミングを見計らって,直接的・集中的に実施するアプローチと初期の段階からアプローチを徐々に実施していき,要望に近づけていくといったOTごとの微細な関わりの差が存在していることが考えられた.さらに,地域移行促進を念頭に置いた,CLの要望を実現可能な作業に結び付けるOTのアプローチの中では特に〔あらゆる手段や方法で思いの探索〕をする中で,<CLの思いを改めて聞く機会を意識的に作り>,その〔CLの要望を反映した目標共有〕をして,〔要望実現に向けたチームの協力〕をしながら〔根気強いアプローチの継続〕をすることが重要であることが明示された.このようなアプローチが精神障害のあるCL1人1人の思いをすくい上げて,作業を紡いでいき,その人らしい生活を送り,CLが作業的存在になることをOTが支援出来るものと考える.