[PH-7-6] 若年摂食障害患者の入院精神科作業療法プログラム
【序論】摂食障害は, 食行動異常と認知・情動の障害を主徴とし, 新型コロナウイルス感染症の影響で児童思春期の患者数が増加している. 治療は, 低栄養状態の改善と心理社会的アプローチが必要であり, 支援方法の統一や多職種連携が重要である(中井, 2016) (西園, 2017).
【目的】児童思春期の摂食障害に対する精神科作業療法プログラムは未だ確立されていない. 第57回日本作業療法学会では, コロナ禍における児童書春期の摂食障害に対する精神科作業療法の実態を報告した. 本研究では, 入院中の詳細なプログラム内容や選択理由, 治療の目的や課題背景について具体的内容を明らかにすることを目的とした.
【方法】
(対象) 2020年7月から2024年2月にK大学医学部附属病院 精神科神経科に入院した児童思春期摂食障害患者14名(全員女性)で, 平均年齢15.1±2.0歳, 入院時BMI平均13.0, 退院時BMI平均17.1, 平均入院期間79.8日であった. 神経性やせ症13名, 回避・制限性食物摂取症1名, 2名が入院前に, 2名が退院後に自閉スペクトラム症の診断を受けている. 同意取得5名(神経性やせ症4名・回避・制限性食物摂取症1名)を調査対象とした.
(調査手順) 行動療法の拡大に伴い, 作業療法(以下, OT)治療期間を個別O T・集団O T・身体OT導入期間の3期に分け, それぞれの時期におけるOTの介入回数と介入方法について, 対象症例の診療録を後方視的に参照し検討した. 研究は本学の審査を経て実施され, 同意書にて承諾を得ている(R2819). 開示すべき利益相反(COI)はない.
【結果】
(前期): 身体的治療が中心となる時期であった. 個別OTではクローズド形式でOTRと1対1の対応で実施された. 平均入院13.8日目から開始され, 平均BMI 12.2であった. 平均利用期間が7.0日で平均OT利用回数は1.0回であった. 全員が初回面接と体験のみであり, 体験時には創作活動を中心に軽作業が選択されていた.
(中期): 集団生活に慣れ早期退院への願望や過剰適応かつ受動的な行動が多く見られる時期であった. 集団OTではパラレルから開始され集団に属する形式で実施された. 平均入院20.8日目から開始され, 平均BMI12.2であった. 平均利用期間が34.0日で平均OT利用回数は15.8回であった. 前半は, 個別OTで取り入れた創作活動などの軽作業を継続し後半では, 難度を上げた創作活動や言語セッションプログラムが選択されていた.
(後期): 退院への不安が強くコントロール欲求が高まり強迫的で過活動の時期であった. 集団OTに加え身体OTが実施された. 平均入院54.8日目より開始され, 平均BMI14.4であった. 平均利用期間は25.6日で平均OT利用回数は6.8回であった. 自己表現と対人交流を要するグループワークが選択されていた.
【考察】入院期間中の治療は行動療法が導入され段階的に行われる. 前期では身体症状の回復と安心・安全を確保が重視され, 不安や緊張の軽減と集団生活への順応を促すため, 創作活動などの軽作業が中心であった. 中期では主体性を引き出し意思表示を高めるため, 自己表現を促す言語セッションが活用されていた. 後期では現実社会への適応と家族との再統合に向けて, 問題解決能力や社会スキルの習得を目指し, 実際の場面を想定した他者交流を伴うグループワークが用いられていた. これらのスキルの習得は, 現実社会での問題解決能力に影響し, 特に外泊中・退院後の家族内での葛藤場面の対処に必要とされる. 児童思春期の患者は人格形成過程にあり, 家族以外の成人が関わる意義は大きく, 入院中に実施されるOTによる実行動に即した支援は, その後の社会適応の向上につながることが期待される.
【目的】児童思春期の摂食障害に対する精神科作業療法プログラムは未だ確立されていない. 第57回日本作業療法学会では, コロナ禍における児童書春期の摂食障害に対する精神科作業療法の実態を報告した. 本研究では, 入院中の詳細なプログラム内容や選択理由, 治療の目的や課題背景について具体的内容を明らかにすることを目的とした.
【方法】
(対象) 2020年7月から2024年2月にK大学医学部附属病院 精神科神経科に入院した児童思春期摂食障害患者14名(全員女性)で, 平均年齢15.1±2.0歳, 入院時BMI平均13.0, 退院時BMI平均17.1, 平均入院期間79.8日であった. 神経性やせ症13名, 回避・制限性食物摂取症1名, 2名が入院前に, 2名が退院後に自閉スペクトラム症の診断を受けている. 同意取得5名(神経性やせ症4名・回避・制限性食物摂取症1名)を調査対象とした.
(調査手順) 行動療法の拡大に伴い, 作業療法(以下, OT)治療期間を個別O T・集団O T・身体OT導入期間の3期に分け, それぞれの時期におけるOTの介入回数と介入方法について, 対象症例の診療録を後方視的に参照し検討した. 研究は本学の審査を経て実施され, 同意書にて承諾を得ている(R2819). 開示すべき利益相反(COI)はない.
【結果】
(前期): 身体的治療が中心となる時期であった. 個別OTではクローズド形式でOTRと1対1の対応で実施された. 平均入院13.8日目から開始され, 平均BMI 12.2であった. 平均利用期間が7.0日で平均OT利用回数は1.0回であった. 全員が初回面接と体験のみであり, 体験時には創作活動を中心に軽作業が選択されていた.
(中期): 集団生活に慣れ早期退院への願望や過剰適応かつ受動的な行動が多く見られる時期であった. 集団OTではパラレルから開始され集団に属する形式で実施された. 平均入院20.8日目から開始され, 平均BMI12.2であった. 平均利用期間が34.0日で平均OT利用回数は15.8回であった. 前半は, 個別OTで取り入れた創作活動などの軽作業を継続し後半では, 難度を上げた創作活動や言語セッションプログラムが選択されていた.
(後期): 退院への不安が強くコントロール欲求が高まり強迫的で過活動の時期であった. 集団OTに加え身体OTが実施された. 平均入院54.8日目より開始され, 平均BMI14.4であった. 平均利用期間は25.6日で平均OT利用回数は6.8回であった. 自己表現と対人交流を要するグループワークが選択されていた.
【考察】入院期間中の治療は行動療法が導入され段階的に行われる. 前期では身体症状の回復と安心・安全を確保が重視され, 不安や緊張の軽減と集団生活への順応を促すため, 創作活動などの軽作業が中心であった. 中期では主体性を引き出し意思表示を高めるため, 自己表現を促す言語セッションが活用されていた. 後期では現実社会への適応と家族との再統合に向けて, 問題解決能力や社会スキルの習得を目指し, 実際の場面を想定した他者交流を伴うグループワークが用いられていた. これらのスキルの習得は, 現実社会での問題解決能力に影響し, 特に外泊中・退院後の家族内での葛藤場面の対処に必要とされる. 児童思春期の患者は人格形成過程にあり, 家族以外の成人が関わる意義は大きく, 入院中に実施されるOTによる実行動に即した支援は, その後の社会適応の向上につながることが期待される.