第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

精神障害

[PH-8] ポスター:精神障害 8

2024年11月10日(日) 09:30 〜 10:30 ポスター会場 (大ホール)

[PH-8-7] 統合失調症の認知機能に対する認知矯正療法:ランダム化比較試験後のフォローアップ研究

山主 あゆ美1,2, 島田 岳2, 小林 正義1 (1.信州大学大学院総合医理工学研究科, 2.医療法人清泰会メンタルサポートそよかぜ病院)

【はじめに】統合失調症患者の認知機能障害は重要な治療対象である.我々は統合失調症患者を対象としたランダム化比較試験において,通常治療(TAU)にRehaComを用いた認知矯正療法(CR)を追加した群では,TAUのみを実施した群と比較し,認知機能,内発的動機づけ,精神症状,機能レベルが有意に改善した.この先行研究に続いて,本研究では追跡調査を実施し,認知機能および他アウトカムの持続効果を評価した.
【方法】適格基準を満たした統合失調症患者はベースライン評価後に,TAUにCRを加えた群(TAU+CE群)(15名,46.57[SD=9.80]歳,男性64.29%)と,TAUのみの群(TAU群)(15名,48.46[SD=10.33]歳,男性61.54%)にランダムに割付けられ,12週間の介入期間を経て,追跡調査を実施した.RehaComは1回60分のセッションを週2回×12週間,作業療法士とマンツーマンで実施した.また,RehaComの成績や認知機能の改善を日常生活と結びつけるためのブリッジング介入を週1回実施した.主要評価項目は統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS),副次評価項目は統合失調症認知評価尺度(SCoRS),Quality of Life Scale(QLS)の目的意識・意欲・好奇心・3項目の合計,内発的動機付け尺度(IMI),陽性・陰性症状評価尺度(PANSS),陰性症状評価尺度(SANS),modified GAF-Functioning(mGAF-F)を用いた.データ解析には共分散分析を用い,スコア変化を評価した.有意水準は両側p<0.05とした.本研究は所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】ランダム化された30名のうちTAU+CR群9名(50.44[SD=10.19]歳,男性44%),TAU群10名(48.20[SD=10.70]歳,男性60%)の19名が追跡調査を完了した.ベースライン時には両群間のアウトカムに有意差はなかった.24週間後の追跡時にはTAU+CR群はTAU群と比較し,BACSのワーキングメモリ(F=8.53,p<0.001,ηp2=0.27),言語流暢性(F=8.50,p <0.001,ηp2=0.27),総合得点(F=3.51,p=0.038,ηp2=0.13),QLS合計(F=12.86,p<0.001,ηp2=0.35),IMIの興味・楽しみ(F=3.54,p=0.037,ηp2=0.13),PANSSの陰性症状(F=3.26,p=0.047,ηp2=0.12),PANSSの合計(F=3.32,p=0.045,ηp2=0.12),SANSの思考の貧困(F=6.08,p=0.004,ηp2=0.20),意欲・発動性の欠如(F=4.10,p=0.023,ηp2=0.15),快感消失(F=5.76,p=0.006,ηp2=0.19),注意の障害(F=8.671,p<0.001,ηp2=0.27)合計(F=7.10,p=0.002,ηp2=0.23),SCoRSの介護者評価(F=3.77,p=0.030,ηp2=0.14),SCoRSの評価者合計(F=4.29,p=0.019,ηp2=0.15),mGAF(F=9.38,p<0.001,ηp2=0.28)において有意な改善を示した.さらに36週間後の追跡時にはBACSの言語流暢性(F=6.81,p<0.001,ηp2=0.25),注意(F=2.91,p=0.041,ηp2=0.12),総合得点(F=4.08,p=0.010,ηp2=0.16),QLS合計(F=11.16,p<0.001,ηp2=0.34),PANSの陽性症状(F=3.53,p=0.020,ηp2=0.14),陰性症状(F=4.07,p=0.010,ηp2=0.16),総合病理(F=5.36,p=0.002,ηp2
=0.20),合計(F=5.882,p=0.001,ηp2=0.21),SANSの思考の貧困(F=9.71,p<0.001,ηp2=0.31),意欲・発動性の欠如(F=4.81,p=0.004,ηp2=0.18),快感消失(F=6.47,p<0.001,ηp2=0.23),注意の障害(F=9.72,p<0.001,ηp2=0.31),合計(F=8.934,p<0.001,ηp2=0.29),SCoRSの介護者評価(F=3.06,p=0.034,ηp2=0.12),評価者合計(F=4.18,p=0.009,ηp2=0.16),mGAF(F=8.84,p<0.001,ηp2=0.29)において有意な改善を示した.
【考察】本研究の結果は,TAU+CR群における認知機能,内発的動機づけ,陰性症状の改善効果が追跡期間にわたって維持されたことを示している.これらの結果は,TAU+CRによる各アウトカムの持続的な改善が機能的転帰の改善への移行を促進する可能性を示唆する.