[PH-9-2] 小集団の不眠症の認知行動療法の効果の検証
【はじめに】
不眠症者の多くは,不適切な睡眠習慣や環境,睡眠に対する誤った信念や理解により,かえって自らの不眠を悪化させていることが知られている.不眠治療では,眠れないことに拘る患者の視点を,低下した生活の質に向けるよう指導し,不眠により損なわれた日中の生活の質を回復させることが治療のゴールとなる.これらの不眠症治療のひとつとして,不眠症の認知行動療法(CBT-I)がある.CBT-Iはすでに不眠症の改善において多くのエビデンスが示されているが,小集団で行った場合の効果については十分に検討されていない.今回我々は,当院で外来患者を中心に不眠症患者を対象に実施している小集団のCBT-Iが不眠症状,睡眠に対する認知の歪み,日中の機能にもたらす影響について検討したので報告する.
【対象と方法】
対象は,不眠症で外来通院をしている患者のうち,医師からCBT-Iが処方され,ISI-Jが10点以上の患者とした.1セッションあたりの参加者数は2~4名であった.方法は「自分でできる「不眠」克服ワークブック(渡辺)」を参考に作成したテキストを使用し,4週間でCBT-Iの方法を学び,次の4週間は自身で継続する全8週間のプロトコールで実施した.また,全セッションにおいて患者間の症状や自身の不眠への取り組みを発言する機会を設けた.評価にはISI-J,DBAS-J,QOL-Iを用い,CBT-I介入前,介入後,介入4週後の3ポイントにおける各評価の総スコアをフリードマン検定を用い多重比較を行った.なお,対象には研究内容を伝え,書面にて同意を得た.
【結果】
解析対象は男性14名,女性10名の計24名で,平均年齢は63.5歳(34~78歳)であった.ISI-Jの中央値は介入前が18点,介入後が11点,介入4週後が10点で,介入後に有意な改善を認め(p<0.001),改善は介入4週後まで維持されていた.DBAS-Jの中央値は,介入前が94点,介入後が72点,介入4週後が67.5点で,介入前後に有意な改善を認め(p<0.001),改善は介入4週後まで維持されていた.QOL-Iの中央値は,介入前が53.5点,介入後が43点,介入4週後が39点で,介入前後に有意な改善を認め(p<0.001),改善は介入4週後まで維持されていた.
【考察】
本研究の結果から,小集団CBT-Iは,不眠症状の改善と睡眠に対する認知の歪みの修正,日中の機能改善に有用であることが示唆された.本研究のCBT-Iの形態は,小集団グループ形式の方法をとった.Mackら(2011)のプライマリケアでの実践に関するモデルによると,集団CBT-Iは中強度に位置づけられており,集団CBT-Iに関するメタ分析は,治療前に比較して治療直後および3~12カ月の経過観察時において,主観的な入眠潜時,中途覚醒時間,睡眠効率が中等度~大きい効果量をもって改善した(Koffelら,2015)ことが示されている.集団CBT-Iでは,セラピストが患者に与える治療要素の他に,同一の悩みを持つ患者間で生まれるポジティブな相互関係も,不眠による心理的負荷の緩和や新たな行動変容に良い影響をもたらすことが多く経験される.今回,各セッションで行った患者同士の交流や行動の振り返りが,治療への動機づけを強化し,主観的睡眠感や認知の歪み,生活の質の改善など本研究で認められた効果の一部に寄与した可能性がある.小集団でCBT-Iを行う際には,このような集団の力を生かすことも重要なポイントになると思われた.
不眠症者の多くは,不適切な睡眠習慣や環境,睡眠に対する誤った信念や理解により,かえって自らの不眠を悪化させていることが知られている.不眠治療では,眠れないことに拘る患者の視点を,低下した生活の質に向けるよう指導し,不眠により損なわれた日中の生活の質を回復させることが治療のゴールとなる.これらの不眠症治療のひとつとして,不眠症の認知行動療法(CBT-I)がある.CBT-Iはすでに不眠症の改善において多くのエビデンスが示されているが,小集団で行った場合の効果については十分に検討されていない.今回我々は,当院で外来患者を中心に不眠症患者を対象に実施している小集団のCBT-Iが不眠症状,睡眠に対する認知の歪み,日中の機能にもたらす影響について検討したので報告する.
【対象と方法】
対象は,不眠症で外来通院をしている患者のうち,医師からCBT-Iが処方され,ISI-Jが10点以上の患者とした.1セッションあたりの参加者数は2~4名であった.方法は「自分でできる「不眠」克服ワークブック(渡辺)」を参考に作成したテキストを使用し,4週間でCBT-Iの方法を学び,次の4週間は自身で継続する全8週間のプロトコールで実施した.また,全セッションにおいて患者間の症状や自身の不眠への取り組みを発言する機会を設けた.評価にはISI-J,DBAS-J,QOL-Iを用い,CBT-I介入前,介入後,介入4週後の3ポイントにおける各評価の総スコアをフリードマン検定を用い多重比較を行った.なお,対象には研究内容を伝え,書面にて同意を得た.
【結果】
解析対象は男性14名,女性10名の計24名で,平均年齢は63.5歳(34~78歳)であった.ISI-Jの中央値は介入前が18点,介入後が11点,介入4週後が10点で,介入後に有意な改善を認め(p<0.001),改善は介入4週後まで維持されていた.DBAS-Jの中央値は,介入前が94点,介入後が72点,介入4週後が67.5点で,介入前後に有意な改善を認め(p<0.001),改善は介入4週後まで維持されていた.QOL-Iの中央値は,介入前が53.5点,介入後が43点,介入4週後が39点で,介入前後に有意な改善を認め(p<0.001),改善は介入4週後まで維持されていた.
【考察】
本研究の結果から,小集団CBT-Iは,不眠症状の改善と睡眠に対する認知の歪みの修正,日中の機能改善に有用であることが示唆された.本研究のCBT-Iの形態は,小集団グループ形式の方法をとった.Mackら(2011)のプライマリケアでの実践に関するモデルによると,集団CBT-Iは中強度に位置づけられており,集団CBT-Iに関するメタ分析は,治療前に比較して治療直後および3~12カ月の経過観察時において,主観的な入眠潜時,中途覚醒時間,睡眠効率が中等度~大きい効果量をもって改善した(Koffelら,2015)ことが示されている.集団CBT-Iでは,セラピストが患者に与える治療要素の他に,同一の悩みを持つ患者間で生まれるポジティブな相互関係も,不眠による心理的負荷の緩和や新たな行動変容に良い影響をもたらすことが多く経験される.今回,各セッションで行った患者同士の交流や行動の振り返りが,治療への動機づけを強化し,主観的睡眠感や認知の歪み,生活の質の改善など本研究で認められた効果の一部に寄与した可能性がある.小集団でCBT-Iを行う際には,このような集団の力を生かすことも重要なポイントになると思われた.