[PH-9-4] 中等度・重度認知症者の作業療法中の態度・行動の関連要因についての検討
【背景・目的】
これまでのところ軽度認知症者と比較し,中等度・重度認知症者に対する非薬物的介入の有効性は確立されていない.その理由の一つは,既存の研究デザインでは介入に対する対象者の態度・行動(Engagement)が十分に評価されないまま,前後の評価指標のみを分析しているためである.特に中等度・重度認知症では臨床的にも対象者間でEngagementが一定せず異なることもよく経験される.つまり効果的な介入を実施するためにはEngagementとその関連要因も評価してその効果に言及する必要がある.本研究ではEngagementの関連要因について明らかにすることとした.
【方法】
対象者および期間:当院精神科に2022年5月1日~2023年10月31日までに入院し認知症と診断,作業療法が処方されClinical Dementia Rating(CDR)が2,3の男女を対象者として,横断的に調査した.用いた評価:基本属性は年齢,性別,インターライ方式での視覚・聴覚障害の程度を調査した.EngagementはAssessment Scale for Engagement in Activities(ASEA),認知機能をMini Mental State Examination(MMSE),Activities of Daily Living(ADL)をPhysical Self Maintenance Scale(PSMS),併存疾患をCharlson Comorbidity Index(CCI),疼痛をPain Assessment in Advanced Dementia Scale(PAINAD),抑うつをCornell Scale for Depression in Dementia(CSDD),AgitationをCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)で評価した.
統計解析:基本属性と各評価項目の記述統計を算出した.ASEAに影響を与える要因を検討するために重回帰分析をした.ASEAを目的変数とし,説明変数は評価項目間で強い相関(ρ≧0.80)が認められた変数の一方を削除しVariance Inflation Factor(VIF)が10未満であることを確認後,単回帰分析を実施しp<0.20の変数を抽出し,ステップワイズ法を用いて分析をした.統計解析ソフトはSPSS29verを用い有意水準5%で分析した.
倫理的配慮:本報告は対象者とその家族へ説明をし,同意を得た.筆頭の所属機関の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象者は48例,平均年齢(±標準偏差)は81.04(±6.9)歳,男性が26例,女性が22例,重症度はCDR2が9例,CDR3が39例であった.MMSEは7.8(±8.27)点で,ASEAは12.09(±4.43)点であった.重回帰分析では視力・聴覚障害の程度,MMSE,PSMS,PAINAD,CSDD,CMAIを抽出された説明変数として分析した結果,PAINAD(β=-.428,95%信頼区間(CI)[-1.775,-.602],p<.001),PSMS(β=.388,CI[1.022,3.438],p<.001),視力障害の程度(β=-.247,CI[-2.706,-.249],p=.020)がASEAに有意な影響を与える要因として抽出された.(自由度調整済みR2=.540).
【まとめと考察】
中等度・重度認知症者のEngagementに影響する要因は,疼痛,ADLの自立度,視力障害の程度であった.作業療法に対するEngagementの水準を高めるには,痛みの軽減,ADLの維持,視力障害の補完が重要となるかもしれない.今後はこれらの変数間の因果関係を調査を行う必要がある.
これまでのところ軽度認知症者と比較し,中等度・重度認知症者に対する非薬物的介入の有効性は確立されていない.その理由の一つは,既存の研究デザインでは介入に対する対象者の態度・行動(Engagement)が十分に評価されないまま,前後の評価指標のみを分析しているためである.特に中等度・重度認知症では臨床的にも対象者間でEngagementが一定せず異なることもよく経験される.つまり効果的な介入を実施するためにはEngagementとその関連要因も評価してその効果に言及する必要がある.本研究ではEngagementの関連要因について明らかにすることとした.
【方法】
対象者および期間:当院精神科に2022年5月1日~2023年10月31日までに入院し認知症と診断,作業療法が処方されClinical Dementia Rating(CDR)が2,3の男女を対象者として,横断的に調査した.用いた評価:基本属性は年齢,性別,インターライ方式での視覚・聴覚障害の程度を調査した.EngagementはAssessment Scale for Engagement in Activities(ASEA),認知機能をMini Mental State Examination(MMSE),Activities of Daily Living(ADL)をPhysical Self Maintenance Scale(PSMS),併存疾患をCharlson Comorbidity Index(CCI),疼痛をPain Assessment in Advanced Dementia Scale(PAINAD),抑うつをCornell Scale for Depression in Dementia(CSDD),AgitationをCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)で評価した.
統計解析:基本属性と各評価項目の記述統計を算出した.ASEAに影響を与える要因を検討するために重回帰分析をした.ASEAを目的変数とし,説明変数は評価項目間で強い相関(ρ≧0.80)が認められた変数の一方を削除しVariance Inflation Factor(VIF)が10未満であることを確認後,単回帰分析を実施しp<0.20の変数を抽出し,ステップワイズ法を用いて分析をした.統計解析ソフトはSPSS29verを用い有意水準5%で分析した.
倫理的配慮:本報告は対象者とその家族へ説明をし,同意を得た.筆頭の所属機関の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象者は48例,平均年齢(±標準偏差)は81.04(±6.9)歳,男性が26例,女性が22例,重症度はCDR2が9例,CDR3が39例であった.MMSEは7.8(±8.27)点で,ASEAは12.09(±4.43)点であった.重回帰分析では視力・聴覚障害の程度,MMSE,PSMS,PAINAD,CSDD,CMAIを抽出された説明変数として分析した結果,PAINAD(β=-.428,95%信頼区間(CI)[-1.775,-.602],p<.001),PSMS(β=.388,CI[1.022,3.438],p<.001),視力障害の程度(β=-.247,CI[-2.706,-.249],p=.020)がASEAに有意な影響を与える要因として抽出された.(自由度調整済みR2=.540).
【まとめと考察】
中等度・重度認知症者のEngagementに影響する要因は,疼痛,ADLの自立度,視力障害の程度であった.作業療法に対するEngagementの水準を高めるには,痛みの軽減,ADLの維持,視力障害の補完が重要となるかもしれない.今後はこれらの変数間の因果関係を調査を行う必要がある.