[PH-9-6] 発達障害特性をもつ適応障害患者に対する就労支援
【はじめに】成人期の発達特性をもつ患者は,疎外感や自尊心の傷つきを募らせ社会に戻ることを極端に恐れやすい.今回,適応障害によるうつ状態と診断された成人女性に対して個人作業療法(以下OT)を実施した.背景にある発達特性の影響について自己認識を深めながら,体調管理や環境調整を行った結果,障害者枠での就労に至った.本報告に際し,症例から同意を得ておりプライバシー保護にも配慮している.
【症例紹介】氏名:A氏,20歳代中半,診断名:適応障害によるうつ状態.成育歴:幼少期は散らかりや忘れものが目立っていた.中学生の時にいじめがあり自傷行為が始まった.現病歴:短大卒業後に就職したが,対人関係のトラブルにより精神科を初診.X−1年に,当院に転院し,適応障害によるうつ状態と診断され,X年に外来個人OTが開始となった.
【導入時評価】A氏は,「人の多い所に行けない,怖いけど働けるようになりたい」と語った.発達障害の要支援度評価尺度(MSPA)による評価を行い,ASD特性のコミュニケーションや集団適応の問題やADHD特性の不注意や衝動性が対人関係に影響していた.焦点化として,1)配慮に欠けた言動により対人関係の維持が困難,2)感情優位による場当たり的な行動をとりやすい,3)自傷や過量服薬を行う,が挙げられた.ストレングスは,話し好きで,気持ちを言語化ができるであった.
【OTの支援計画】就労を目標とし,1−2回/月,A氏の生活上の出来事を振り返り,助言を行う外来個人OTを実施した.
【経過】自己認識を深めた時期(~4か月): MSPAのチャートを用い,A氏の特性が生活上の困りごととのつながりや対策を一緒に考えた.A氏は「過量服薬や自傷を抑えたい,集団行動ができるようになりたい」と希望し,当面の行動目標として, 1)一回飲み込んで発言を考える,2)感謝の気持ちを伝える.3)イライラしたら気持ちを紙に書きなぐったりして気分転換をする,4)限界を感じたら相手と距離を置く,などを挙げ生活の中に取り入れていた.実生活では「感情が不安定になるとどうしたらいいのか.制御できない」と相談しつつも,タイムアウト法を実践したり,相手を配慮した言動を試行錯誤していた.
揺れ動きながらも障害者就労を果たした時期(~1年3か月):家族や友人との関わりの練習を積みつつ,社会参加へと行動範囲を広げていくが,不安は強く回避的になっていた.ストレス対処については,好きな手芸に取り組んだり,彼氏に気持ちを吐き出すことで自傷を減らす努力をしていた.ストレス対処の継続と対人スキルの練習をしつつ,一歩踏みだすために,安心できる環境を話し合った.知り合いのいる職場で就労できないか提案し,その結果,11ヵ月後に障害者枠で週3回1日3時間の条件から就職が決まった.知り合いの存在によって安心と適応努力が引き出され「会社では自分ばかり話さないように聞く努力をしている.感謝の気持ちを伝えている.気分転換は,母に話を聞いてもらっている」と報告していた. 1年9か月後には,不調の波はあるが,体調管理をしながら就労を継続できておりOTは終了となった.
【終了時評価】開始前と比べて不安,抑うつ,注意の問題に変化はないが身体愁訴は軽減し,社会適応の向上がみられた.
【考察】発達特性を持つ者は,社会的な失敗が多いため自信を失いやすい.A氏の生活上の困り感に耳を傾け,振り返りと今後の就労に向けた対策を考える話し合いが有益であった.特に安心できる環境の調整は社会適応に効果的であった.今後,更なる自信が持てるようになるには,成功体験を積み重ねつつ,精神的な安定に向けた家族の継続的なサポートが重要である.
【症例紹介】氏名:A氏,20歳代中半,診断名:適応障害によるうつ状態.成育歴:幼少期は散らかりや忘れものが目立っていた.中学生の時にいじめがあり自傷行為が始まった.現病歴:短大卒業後に就職したが,対人関係のトラブルにより精神科を初診.X−1年に,当院に転院し,適応障害によるうつ状態と診断され,X年に外来個人OTが開始となった.
【導入時評価】A氏は,「人の多い所に行けない,怖いけど働けるようになりたい」と語った.発達障害の要支援度評価尺度(MSPA)による評価を行い,ASD特性のコミュニケーションや集団適応の問題やADHD特性の不注意や衝動性が対人関係に影響していた.焦点化として,1)配慮に欠けた言動により対人関係の維持が困難,2)感情優位による場当たり的な行動をとりやすい,3)自傷や過量服薬を行う,が挙げられた.ストレングスは,話し好きで,気持ちを言語化ができるであった.
【OTの支援計画】就労を目標とし,1−2回/月,A氏の生活上の出来事を振り返り,助言を行う外来個人OTを実施した.
【経過】自己認識を深めた時期(~4か月): MSPAのチャートを用い,A氏の特性が生活上の困りごととのつながりや対策を一緒に考えた.A氏は「過量服薬や自傷を抑えたい,集団行動ができるようになりたい」と希望し,当面の行動目標として, 1)一回飲み込んで発言を考える,2)感謝の気持ちを伝える.3)イライラしたら気持ちを紙に書きなぐったりして気分転換をする,4)限界を感じたら相手と距離を置く,などを挙げ生活の中に取り入れていた.実生活では「感情が不安定になるとどうしたらいいのか.制御できない」と相談しつつも,タイムアウト法を実践したり,相手を配慮した言動を試行錯誤していた.
揺れ動きながらも障害者就労を果たした時期(~1年3か月):家族や友人との関わりの練習を積みつつ,社会参加へと行動範囲を広げていくが,不安は強く回避的になっていた.ストレス対処については,好きな手芸に取り組んだり,彼氏に気持ちを吐き出すことで自傷を減らす努力をしていた.ストレス対処の継続と対人スキルの練習をしつつ,一歩踏みだすために,安心できる環境を話し合った.知り合いのいる職場で就労できないか提案し,その結果,11ヵ月後に障害者枠で週3回1日3時間の条件から就職が決まった.知り合いの存在によって安心と適応努力が引き出され「会社では自分ばかり話さないように聞く努力をしている.感謝の気持ちを伝えている.気分転換は,母に話を聞いてもらっている」と報告していた. 1年9か月後には,不調の波はあるが,体調管理をしながら就労を継続できておりOTは終了となった.
【終了時評価】開始前と比べて不安,抑うつ,注意の問題に変化はないが身体愁訴は軽減し,社会適応の向上がみられた.
【考察】発達特性を持つ者は,社会的な失敗が多いため自信を失いやすい.A氏の生活上の困り感に耳を傾け,振り返りと今後の就労に向けた対策を考える話し合いが有益であった.特に安心できる環境の調整は社会適応に効果的であった.今後,更なる自信が持てるようになるには,成功体験を積み重ねつつ,精神的な安定に向けた家族の継続的なサポートが重要である.