第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-1] ポスター:発達障害 1

2024年11月9日(土) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (大ホール)

[PI-1-2] 作業療法士を中心とした,出張型子ども支援事業の実践報告

Roots4の事業を通して経験した制度外のサポートの必要性

小林 岳, 塩田 典保, 仲田 海人 (Roots4)

【はじめに】
国内における小中学生の不登校児童数は令和4年度時点で299,048人と報告があり,栃木県内においても7,614人の小中学生が不登校という現状である.また,栃木県内における小学生児童数は年々減少傾向を辿っているが,特別支援学級数は増加傾向にある.こういった実状から,子どもを取り巻く課題はより複雑化しており,ご家庭や保育園・幼稚園,小中学校など日常生活の中における支援の充足化が求められている.
園や学校にアウトリーチする事業として保育所等訪問支援事業があるが,栃木県県北地域の福祉事業所54ヶ所のうち,保育所等訪問支援事業を展開している事業所は2ヶ所に留まっている(令和6年2月現在).背景として成り手不足,専門職の所属の偏りが考えられ,子ども達の生活の場で支援できる人材の不足は深刻な課題と考えられる.私たちは栃木県県北地域を拠点とする作業療法士による任意団体(以下Roots4)を令和5年4月に設立,活動してきた.令和6年4月に一般社団法人格取得予定(演題登録時は任意団体)となっている.今回はこれまでの事業経過報告と今後の展望を報告する.なお,報告するにあたり,関係者への承諾を得ており,利益相反はない.
【事業内容】
Roots4の事業ターゲットは地域の「子どもと家族」,「子どもに関わる先生達」,「専門職」である.事業モデルを検討するにあたり,地域で活動できる人材育成を念頭に置いた仕組み作りを進めた.事業は主に「出張療育・出張相談」,「保護者・先生向け研修会」,「運動遊びを中心としたイベント企画」を軸としており,これらの事業を,地域の幼稚園や保育園,小学校と連携しながら実践している.また事業所と業務委託契約を結び,事業所にRoots4から作業療法士をはじめとする専門職を派遣している.人員の確保は会員制度を設けている(正会員,賛助会員,マンスリー会員).正会員のうち,専門職プランに加入している作業療法士や理学療法士,言語聴覚士,保育士,教員,医師など多職種がRoots4の事業に参画できる仕組みとしている.
【経過】
 令和5年度「出張療育・出張相談」計8回(幼稚園・保育園への出張療育5回,小学校への出張相談3回).「保護者・先生向け研修会」5回.「運動遊びを中心としたイベント企画」6回(イベントへの協力3回,自主企画イベント3回).業務委託事業に関しては4ヶ所の事業所と契約しており,事業所からのニーズとしては,子ども達への療育的関わり,職員相談,保育所等訪問支援事業への人員派遣など様々である.事業を通して子どもと関わる先生方から様々な意見をいただくことがある.「もっと来てほしい」,「書面でのやりとりとは違う」,「学校にも入ってきてほしい」など,現場からのニーズは明らかに高まっている.
【今後の展望】
 第1期(1-3年)では現在の制度外活動と並行し,個別指導特化型の児童発達支援事業および保育所等訪問支援事業の開設を念頭に置いている.第2期(3-5年)では活動認知度向上および地域で活動できる専門職の増加,第3期(5-10年)では行政との連携を視野に入れている.事業を通して,制度の狭間に埋もれてしまう,園や学校で困り感を抱える子どもや家族と出会ってきた.医療や福祉と繋がるための一歩が出ないご家族にとって,私たちの事業は参加しやすく,専門家に会える良い機会となっているのかもしれない.病院や事業所に「来てもらうサービス」から日常生活の場へ「行くサービス」へと変化が求められていることを改めて実感している.