[PI-1-6] 作業療法の実践によって即時的な治療効果が見られた肢端紅痛症の一例
過剰な冷却行為に対する課題分析
【序論】
肢端紅痛症は四肢末端の紅潮,皮膚温の上昇,灼熱痛を三徴とする臨床症候群である.症状は一般的に患肢を冷水に浸すことで緩和されるが,長期的な苦痛のコントロールは困難で,冷却行為に拍車が掛かり,常に冷やしていないと不安な状態となる.治療に関してリハビリテーションの分野では,バイオフィードバックや交感神経節ブロックを用いた報告は散見される.しかし,心理的要因への介入を行なった報告は少ない.
【目的】
灼熱痛の回避として,氷水による過剰な冷却を行う症例に対し,介入の結果冷却時間短縮および心理面の変化が得られたため報告する.なお,報告に際し症例から口頭及び書面上での同意を得た.
【症例紹介】
肢端紅痛症,ADHDを有する25歳女性.10歳頃に上記診断を受け,冷却による強迫行為が増悪するたび精神科への入退院を繰り返した.今回,肢端紅痛症の症状コントロール目的で当院漢方内科に入院.
【OT評価】
希望:氷水の使用を辞めたい.冷却行為:介入前5日間で1日あたり平均6.27時間(平日5.92時間・土日6.79時間).使用制限なし.離脱を何度も試みたが,氷水を辞められない.下肢の状態:下腿以遠の皮膚は暗赤色.腫脹・感覚障害・凍傷や膿疱形成の所見あり.行動特性:衝動性の制御困難・短期的報酬志向著明.リスクを理解しながら,症状が出ると直ぐに氷水で冷却する.
【介入内容】
“氷水での過剰な冷却”を標的行動とし,課題分析を行なった.原因は下肢の灼熱感と衝動性,行動を強化した要因は得られる安心感・苦痛緩和であると考えた.従って,灼熱感の緩和目的に室温調整,代償手段(ハッカ油入り霧吹き・サーキュレーター)の提示,過剰な冷却の弱化目的に,冷却時間のグラフ化とフィードバック(以下FB)を行なった.FBでは自身の考えを深めるような質問をし,内省が進むよう働きかけた.
【結果】
2週間の作業療法により1日あたりの平均冷却時間は,1週目で4.95時間(平日4.54時間・土日6.36時間),2週目で5.53時間(平日5.81時間・土日4.97時間)であった.
【経過】
初日は冷却効果を感じず代償手段の使用に拒否的であった.しかし,FBで冷却時間が多いことに気づき,徐々に代償手段の使用時間が増加した.介入3日目にグラフや生活状況を振り返り,自己分析をする様子があった.2週目は1週目に比べ冷却時間が増加した.原因が分からず困惑していたが,同時に原因を追求し解決策を考えていた.また,皮膚温を計測すると自覚的な温度と客観的な温度間に乖離があり,皮膚温によって適切な代償手段を使用するようになった.2週目に退院の運びとなり「リハビリを通して,自分の問題や利点に気づけるようになった」と語った.
【考察】
課題分析から標的行動に特化したアプローチを行い,即時的な治療効果が得られた.要因としてFBが冷却行動の異常性・行動特性への気づき,能動的な対処の会得が挙げられる.本症例は冷却からの離脱を失敗した経験があり,当初は介入に消極的であったが,FBにより適応的行動が強化され結果のような効果をもたらしたと考える.この報告は肢端紅痛症患者の心理的要因に着目した介入の有効性を示唆している.
肢端紅痛症は四肢末端の紅潮,皮膚温の上昇,灼熱痛を三徴とする臨床症候群である.症状は一般的に患肢を冷水に浸すことで緩和されるが,長期的な苦痛のコントロールは困難で,冷却行為に拍車が掛かり,常に冷やしていないと不安な状態となる.治療に関してリハビリテーションの分野では,バイオフィードバックや交感神経節ブロックを用いた報告は散見される.しかし,心理的要因への介入を行なった報告は少ない.
【目的】
灼熱痛の回避として,氷水による過剰な冷却を行う症例に対し,介入の結果冷却時間短縮および心理面の変化が得られたため報告する.なお,報告に際し症例から口頭及び書面上での同意を得た.
【症例紹介】
肢端紅痛症,ADHDを有する25歳女性.10歳頃に上記診断を受け,冷却による強迫行為が増悪するたび精神科への入退院を繰り返した.今回,肢端紅痛症の症状コントロール目的で当院漢方内科に入院.
【OT評価】
希望:氷水の使用を辞めたい.冷却行為:介入前5日間で1日あたり平均6.27時間(平日5.92時間・土日6.79時間).使用制限なし.離脱を何度も試みたが,氷水を辞められない.下肢の状態:下腿以遠の皮膚は暗赤色.腫脹・感覚障害・凍傷や膿疱形成の所見あり.行動特性:衝動性の制御困難・短期的報酬志向著明.リスクを理解しながら,症状が出ると直ぐに氷水で冷却する.
【介入内容】
“氷水での過剰な冷却”を標的行動とし,課題分析を行なった.原因は下肢の灼熱感と衝動性,行動を強化した要因は得られる安心感・苦痛緩和であると考えた.従って,灼熱感の緩和目的に室温調整,代償手段(ハッカ油入り霧吹き・サーキュレーター)の提示,過剰な冷却の弱化目的に,冷却時間のグラフ化とフィードバック(以下FB)を行なった.FBでは自身の考えを深めるような質問をし,内省が進むよう働きかけた.
【結果】
2週間の作業療法により1日あたりの平均冷却時間は,1週目で4.95時間(平日4.54時間・土日6.36時間),2週目で5.53時間(平日5.81時間・土日4.97時間)であった.
【経過】
初日は冷却効果を感じず代償手段の使用に拒否的であった.しかし,FBで冷却時間が多いことに気づき,徐々に代償手段の使用時間が増加した.介入3日目にグラフや生活状況を振り返り,自己分析をする様子があった.2週目は1週目に比べ冷却時間が増加した.原因が分からず困惑していたが,同時に原因を追求し解決策を考えていた.また,皮膚温を計測すると自覚的な温度と客観的な温度間に乖離があり,皮膚温によって適切な代償手段を使用するようになった.2週目に退院の運びとなり「リハビリを通して,自分の問題や利点に気づけるようになった」と語った.
【考察】
課題分析から標的行動に特化したアプローチを行い,即時的な治療効果が得られた.要因としてFBが冷却行動の異常性・行動特性への気づき,能動的な対処の会得が挙げられる.本症例は冷却からの離脱を失敗した経験があり,当初は介入に消極的であったが,FBにより適応的行動が強化され結果のような効果をもたらしたと考える.この報告は肢端紅痛症患者の心理的要因に着目した介入の有効性を示唆している.